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うさぎのぷうちゃんわーるど
栽培中に気づいたワタの不思議
ワタの花外蜜腺
趣味の綿花栽培 番外編1
花以外の場所から滴る水滴の正体
フカフカのコットンボールに憧れて始めた趣味のワタ栽培ですが、観察しているうちに葉裏の主脈から出る水滴やワタの副萼あたりに出る水滴の正体が気になってきました。調べてみると、不思議に感じていたこの水滴は花外蜜であることが判明しました。
フヨウやオクラ等ワタと同じアオイ科の植物では同様に花外蜜が出ることが知られています。
栽培には直接関係のないことですが、花外蜜腺について観察してみました。
まずはアメリカ綿、次いでアジア綿についての結果となっています。
現在世界で栽培されているワタのほとんどが人の手で交配されて作り出された栽培種なので正確な品種は不明ですが、
ここで取り上げているワタは
アメリカ綿(アップランド綿・洋綿)
Gossypium hirsutum(ヒルスツム)
アジア綿(和綿)
Gossypium arboreum(アルボレウム)
に分類される種類だと思われます
種子から育てるコットンボール番外編です。
花外蜜腺とは
イタドリ・アカメガシワ・サクラ・ホウセンカ・ヘチマなどでは、葉柄や葉身のつけねにイボ状の突起やクレーター状の丸いくぼみがある。これらの突起やくぼみは、特に若葉や若枝では、蜜を分泌し、花外蜜腺[extrafloral nectary]と呼ばれる。
フヨウやオクラ(アオイ科)では、萼片のつけね向軸面から蜜が出る。花の外側に分泌されるので、広い意味では花外蜜腺に含めることができる。
花外蜜腺には蜜を集めるアリが見られることが多い。また、アリの種によっては、他の巣のアリに奪われないように蜜腺に常駐することもある。葉の基部にアリがいることは、食害昆虫の移動や摂食を妨げると考えられている。
4-6-4. 天敵を常駐させる生物的防御 より引用
蜜腺には、花に存在する花内蜜腺と、花以外の部分にある花外蜜腺とよばれるものがあります。
花外蜜腺とは花以外の部分から蜜を分泌する器官で、アリなどをこの蜜で誘引することで、摂食昆虫による食害や移動を防ぐ役割をし、植物が守りたい部分やその近くに存在することが多いと考えられています。
ワタには4種類の異なる蜜腺が発達しています。1つは花で、残る3つは花外です。
※ここでいうワタはアメリカ綿についてです。
▶ 参照:ワタの花外蜜腺
花内蜜
ワタの花内蜜にはミツバチにとって重要なフェニルアラニンやGABA、プロリンなどの多種多様なアミノ酸とヘキソースが豊富に含まれます。
GABAはミツバチの移動と生存時間を増加させ、プロリンは飛び立つ時に迅速なエネルギー源となるそうですから、授粉のご褒美として最適な内容となっているようです。
花内蜜腺は花粉を媒介される植物に普遍的に見られ、花托や萼、花冠、雄しべ、雌しべのいずれにも存在するそうです。
ワタは、基本的には自家受粉するので、ミツバチ等よる他家受粉の頻度はそれほど多くはありません。ワタの花粉は比較的重く、粘着性も高くてトゲもあるので虫媒花にも風媒花にもなりにくいとされているためか、ワタの花からはっきりと蜜が出ているのを見かけたことがないので、どれほどの蜜が出ているのかは不明です。今後の課題としておきます。
花外蜜
花外蜜は、受粉に役立つミツバチを引き寄せるために分泌された花の蜜とは目的が違うため、成分が異なるそうです。
ワタの花外蜜にはショ糖含有量が高く、アミノ酸の分布が広いという特徴があるそうで、これは働きアリの代謝を維持するためのフルクトースとグルコースが豊富な炭水化物源に対するアリの摂食の好みを反映しているということです。
そこで、花外蜜はアリのような捕食性昆虫を誘引して、厄介な昆虫からの食害を間接的に防ぐ役割を担い、植物とある種の昆虫が相利共生していると考えられているようです。
私がベランダで栽培している環境はアリは殆どいないためか、アジア綿では萼の基部あたりがワタノメイガによる被害が多かったです。
花外蜜腺の本当の役割は保留としておきます。
ワタの花外蜜腺のあるところ
・萼の基部(萼と副萼の間)3箇所
・副萼の基部 3箇所
・葉の裏の主脈
舐めてみたところ、量は少なめですが、どの花外蜜も甘かったです。
ベランダで育てているワタではアリを見かけることはなかったのですが、屋外栽培しているワタに複数のアリがやって来ていました。
忙しそうに動き回っていたアリは花の下の花外蜜腺で動きを止めて、蜜を舐めているようでした。
花外蜜腺とアリの関係は定説通り、アリ?なのかもしれません。(笑)
アリは所構わず歩き回っていたので花外蜜目当てではないかもしれませんが花の中に花粉が散らばった形跡が残っていました。
が、その割には柱頭に花粉がついていなかったのでアリは受粉には貢献していないようです。
アリはアブラムシのお尻から出す甘露をもらい、アブラムシを天敵のテントウムシ等から守るという相利共生(そうりきょうせい)はよく知られています。が、どちらかといえば、アリは相利共生というより、アブラムシがいると効率が良いという程度で、手当り次第、目の前にある獲物を探しまわっているだけという印象があります。
甘露の成分は糖やアミノ酸だそうで、花外蜜と似ています。
ワタは花外蜜の提供により、アリとアブラムシの共存共栄を邪魔してアブラムシの被害を免れる作戦をとっているとも考えられますが、実際の生態系はもっと複雑で異なる環境下で多様な昆虫と植物の攻防が繰り広げられているはずなので単純には断言できません。
萼の基部(萼と副萼の間)の花外蜜腺からは常時蜜が出ているというわけではありません。
また、ワタ栽培をする時に花外蜜をわざわざ確認する必要がない上に、見にくい場所にあるので蜜の存在を見逃しがちです。
蕾の時に見ることは少ないですが、確認すると花外蜜が出ていることがあります。
やや見やすくなることもあってか、花が開き始めた頃や開花翌日以降に花外蜜が出ているのを見かける機会が増えます。
3枚ある副萼と副萼の間の萼の基部に花外蜜腺は3つありますが、そのうちの1、2箇所から蜜が出ていることが多いです。
また、花期だからといって必ず萼の基部の花外蜜腺から蜜が出るというわけではないようで蜜の出ない花も多く見られます。
萼の基部の3つの花外蜜腺からは、実になってからも同様で、蜜が出ていたり、出ていなかったりします。
果実の成熟期間中に蜜は出るのですが、そのタイミングは不明。
蜜が出る時は、重みで傾いた下側の花外蜜腺から出ているのを見かけることが多かったです。
萼の基部に蜜が出る時は副萼基部の花外蜜腺からも同じように蜜が出ていることが多いです。
▶ 副萼付近の花外蜜腺
こちらはアメリカ綿にしては珍しく下向きの実。副萼を開くと花外蜜が光っていました。
我が家のワタの副萼付近にドロバチやコアシナガバチが頻繁に訪れていました。花の中にはあまり興味がないようで、萼と副萼片の間をしきりにチェックしています。蜜が出ている感じがなかったので獲物でもいるのだろうか?と不思議に思っていました。
花外蜜腺の存在を知ることで、この謎が解けました。蜜が常時出ていないのもポイントです。
オオフタオビドロバチやコアシナガバチなどの昆虫を引き寄せ、ワタノメイガの幼虫等の害虫を捕食してもらう戦略なのでしょうね。
その割にはワタノメイガの幼虫の被害は多々ありましたが…
コットンボールの裂開後でも花外蜜を見ることがありました。
舐めてみると甘かったので、これは単なる水分ではなく、余剰して不要となったショ糖などの栄養分を排出しているように思われます。
副萼基部にも花外蜜腺は3つありますが、萼基部の蜜と同様に蜜は常時出ているわけではありませんし、3つとも蜜が均等に出ているわけでもありません。
早いものは蕾の頃の副萼基部から蜜が出ることもあります。
全ての花の副萼基部から蜜が出ているのではないのですが、タイミングとしては開花時と開花後に蜜が出ていることが多いです。
アメリカ綿は開花時と開花後に蜜の出る頻度がアジア綿と比べて少ないといった印象があります。
また、実になってからこの花外蜜腺から蜜が出ることもありますが、花期の時と同様に全ての実というわけでもなく、そのタイミングも不明。
こちらの蜜が流れ出ている花外蜜腺はやや汚れています。過去にも蜜が出ていた形跡だと思われます。
他の花外蜜腺も蜜が出た後は黒ずむ傾向があります。アリやハチなどに蜜を吸ってもらわないまま放置されると、酸化したり、カビたりして黒ずむのかもしれません。
秋になってコットンボールがある程度弾け終わる頃、新しい葉と花芽が伸びてきます。その新しい蕾の副萼基部に花外蜜が出ているのを見かけました。
この時点では蜜の出ていた蕾は1つだけで他の蕾には蜜は出ていませんでした。
翌日には蜜の量が増えていました。
その蕾の副萼を開いて中を見ましたが、花外蜜は出ていないようです。同時期のアジア綿の蕾の萼の基部から蜜が出ているのを見かけました。
萼と副萼の間の花外蜜腺と副萼の基部の花外蜜腺は果実の近くにあるためか、似たようなタイミングで出ていることが多いです。
これは萼の基部と副萼の基部から同時に出ている花外蜜のようす。
水分と栄養価の高い果実は実の腐敗を防ぐために、余剰した栄養分を花外蜜として放出しているとも考えられます。
例えば、悪天候続きで花を咲かせるつもりで蓄えていた栄養が使わずじまいで余ってしまったとか…。または花を咲かせようと新芽や花芽を出そうとするタイミングで急激に温度が下がって、成長を続けられなくなってしまった時とか…
実際、果実の完熟期前に見られる花外蜜の役割は、今更アリを招いてどうするの?という、植物の成長期を終える頃のタイミングです。
そう考えると、花外蜜の役割は単に有益昆虫の誘引目的だけではないのでは?と思われるのです。
ワタの葉の裏の主脈にある花外蜜腺も、どういうタイミングで蜜が出ているのかは定かではありません。
最初に花外蜜を出し始めたのは小さな蕾が確認できるように成長した頃からでした。
葉の裏の主脈の蜜はそれほど頻繁に出ているわけではなく、それほど大きくない若葉でも元気な大きな葉でも気がつくと、少し水滴が出ていることがあるといった感じです。
水滴のように見える蜜を舐めてみると少量ですが甘いです。
花外蜜腺が暗褐色に汚れて蜜の出た形跡を見ることはよくあります。
コットンボールの収穫も終わって、シーズンオフとなったワタですが、余力があるようで9月下旬から再び花を咲かせるようになりました。
そこで栽培を続行していると、意外にも花外蜜が頻繁に出ているのを見かけることとなりました。
10月下旬になっても花を咲かせ、花外蜜も出しています。
11月、すっかり涼しくなってアリやハチ、害虫であるメイガ等の活動も見られなくなり、紅葉も始まっているのに花は咲き続け、花外蜜は出続けています。
ワタは日本では1年草扱いですが、本来は木となる植物だからかもしれません。が、花外蜜は植物とある種の昆虫との相利共生の以外にも代謝等の役割もあるように思えます。
その後、実が弾けたのは翌年の3月上旬になってからでした。
しかし、実の成熟期に日差しと温度が少なかったせいで、あまり良質なコットンボールとはなりませんでした。残念です。
アジア綿にも花外蜜腺はアメリカ綿同様に
・萼の基部(萼と副萼の間)3箇所
・葉の裏の主脈
にあります。どちらも甘いです。
しかし、アメリカ綿とは異なって、副萼基部の花外蜜腺らしきものは見当たりません。
葉裏の主脈の花外蜜腺はアメリカ綿とほぼ同じで、出たり出なかったりで、法則性は不明。
蕾がついた頃に主脈以外にも花外蜜が出ているものもありました。
秋になってコットンボールの収穫が一段落ついて新芽が出て古い葉が終わろうとする頃も新旧どちらの葉にも蜜が出ているのをよく見かけたので、気温の低下による代謝の変化も何か関係があるのかもしれません。
アジア綿は萼の基部の花外蜜腺からは開花1日目と開花2日目に蜜が出ていることが多いです。
アジア綿は下向きに花を咲かせる傾向があるので、花外蜜があふれても副萼基部に流れ出る構造にはなっていません。
開花2日めのアジア綿。
アメリカ綿に比べて花外蜜の出る花は多いですが、花外蜜の出ない花も見られます。
秋になって新しくつけた蕾の副萼の中を見ると花外蜜が出ていました。
蕾の中はあまり確認をしてきませんでしたが、これまでにも蜜が出ていていたのかもしれません。
果実になったアジア綿の萼の基部の花外蜜腺
少し大きくなった未熟果からはまだ花外蜜が出た形跡はありません。
未熟果の萼の基部から出る花外蜜のタイミングも不明。
こちらは花外蜜腺がやや汚れているので、花外蜜が出ていた形跡だと思われます。
こちらは2箇所の花外蜜腺から蜜が出ています。
完熟間近の未熟果の萼の基部からも時折、花外蜜は出ています。
▼こちらの弾けたコットンボールの萼の基部には花外蜜が出ています。
この頃になってワタノメイガの幼虫が萼の基部あたりに出現して副萼を蝕み始めました。見つけづらい場所で発見が遅れてしまいました。
昨年も同じ場所の被害が多数あり、花外蜜が益虫を誘引するということが無かったので残念です。
白いわたが外れるほど果実が完熟状態になっても萼の基部から花外蜜が出ています。
コットンボールが弾けた後に萼基部を確認すると花外蜜が出ているものが次々に現れました。
こちらは同時期に収穫したコットンボール。3つとも花外蜜が萼基部に出ているのを確認しました。どれもメイガの被害の無いものです。
ワタの花外蜜には周知されていない他の役割があるように感じます。
発芽から1ヶ月たったアジア綿の苗の本葉の裏の主脈から花外蜜が出ていました。
確認すると今回育てている3本の苗のすべての本葉から同様に花外蜜が出ていました。
量はほんのわずかですが舐めてみると甘いです。こんなにも早い段階で花外蜜が出るのには驚きました。
同時期に育てているアメリカ綿にはまだ花外蜜は見られません。
アメリカ綿が最初に花外蜜を出したのを確認したのは小さな蕾をつけるようになった頃からです。
その後、蕾をつけるようになっても頻繁に花外蜜を出し続けています。
このページは「なんだろな」の中の
「ワタの花外蜜腺」