チャレンジコーナー
趣味の果樹栽培 ポポー
収穫が楽しみな果樹栽培
収穫が楽しみな果樹栽培
ポポーという とてもかわいい名前を持つ果樹は北米原産のバンレイシ科のモクレンに似た姿の落葉小高木。
名前に負けず劣らず、かわいらしい形をした魅力的な果実をつけます。
外見はアケビやマンゴーに似ていてアケビガキとも呼ばれています。
アケビと似た割れ口のラインのようなものがありますが、割れることはありません。
果実の中はねっとりとした鮮やかな黄色い果肉で柿のような種子が一列に重なって並んでいます。
気になる味はカスタードクリームのようにクリーミーで、マンゴーとかバナナみたいだと表現されることが多く、いろいろな果物をミックスしたような馴染みのあるおいしさで、どこか懐かしさが感じられます。
品種により、色や風味は異なります。
柑橘類にも似た独特な芳香があり、好みはあると思いますが、個人的には大好きな果実です。
不飽和脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミンA、ビタミンCが多く含まれ、リンゴ、モモ、ブドウなどの果物と比較して栄養価が高いそうです。
その他、カリウム、リン、硫黄、鉄、マグネシウムなどの無機イオンの含量も高く、アミノ酸のバランスも優れ、ダイエット食品としての利用価値も高いと考えられるのだとか。
参照文献:小学館 園芸植物大事典
明治頃にさまざまなルートから日本に渡り、ブームになった果物だったそうです。その後、交雑が進んで、実の日持ちや保存の難しさから一時栽培が減りました。
が、近年になり、そのポテンシャルが見直されて再び栽培する方が増え始め、第二次ポポーブーム到来の気配があります。
人気再燃の理由はマンゴーのようにおいしくて、トロピカルフルーツの風情がありながら、耐寒性があり、その上アセトゲニンという殺虫成分があるために病害虫にも強く、水やり以外はほとんど手がかからないという育てやすさによるものだと思われます。
日本では樹高4〜10m、原産地では15mにもなるそうです。
モクレンのような大ぶりで明るくてきれいな葉をつけます。
バンレイシ科 ポポー属
学名:Asimina triloba
英名:Pawpaw
ポポーは春にミツバアケビの雌花に似た褐色を帯びた赤紫色の花をつけます。
ポポーの学名は Asimina triloba。
アシミナ トリロバの "トリロバ"は、6枚の花弁がの3枚ずつ二重に構成されているからのようです。
春、葉の出る前に花を咲かせます。
成熟した木になると、最初の花が実になりだした頃、新緑と花が同時に見られます。
花は前年枝の基部付近の葉のつけ根につきます。
初夏の新緑や秋の黄葉も綺麗です。
ポポーの花と色や雰囲気の似ているミツバアケビの雌花
若いアケビの実はポポーの実と雰囲気が似ています。アケビガキの別名もうなずけます。
おいしく食べるための何より大切なポイントは何といっても、食べ頃に食べられるかどうかのタイミング。
ポポーは熟すと自然落下します。
これは食べ頃で良いのですが、落ちた衝撃で実が傷ついてしまうので、やや未熟のものを収穫して、常温で数日、追熟させます。
ポポーは魅惑の甘い香りが出始めた時が食べ頃サインです。この時に食べるのが風味豊かでベストです。
ラフランスと同じように、特有の強い芳香が漂い始めます。
食べ頃を逃すと、風味にクセが出たり、苦くなったりしておいしくありませんのでご注意を。
食べ頃になった果肉は冷凍保存すると長期にわたって楽しめます。
熟してから冷蔵庫で冷やして食べるとよりおいしい感じがします。
特に種子と皮を取り除いたポポーの実の上に甘い生クリームたっぷりのせて作ったアイスやアイスクリームと混ぜてみると、あら、びっくり!高級感のあるトロピカルデザートとなって、とってもおいしくいただけます。風味にクセが出てきたものもこの方法ならバッチリです。
皮と種子の周りは苦いので、しっかりと取り除きます。
ポポーの実を厚さ2cm位の輪切りにしてから、皮をナイフで薄くむいて種子は食べながら出すと簡単です。
皮をむく時は茹でたジャガイモの皮をむく要領でをむきます。
ナイフで少し切り、ナイフと親指で皮をはさんで、ポポーの表面をはわせるように動かして、なるべく大きく皮を引きはがします。
皮と種子の周りは苦いので、食べないようにしましょう。
プロリフィクスの果肉はやや黄色みがかったクリーム色。豊産性で早生の品種です。
実はやや細長めで種子が多めです。
程よい甘さとマイルドな香り、食感はトロッとしてカスタードクリームのようで美味しいです。
さらに追熟すると、ややオレンジ色を帯び、香りも甘さも強くなりますが、個人的にはこのくらいの方が食べやすくて好みです。
今期の初収穫は9月5日でした。
1個80g~200gくらいのそこそこ大きな実がたくさんなります。
その後次々と収穫が続き、結果的に収穫量はものすごくなりました。
また美味しい上に1個が食べるのにちょうど良い量なのも嬉しいです。おすすめ品種です。
こちらは800gと200gの2房が1枝にセットになって実りました。
1房の幅23cmぐらいでバナナの房みたいでどっしりとしています。
猛暑続きの翌年の初収穫は8月26日でした。
この果実は180gで長さ15cm弱。
15個の種子が入っていました。
ポトマックは実が大きくて風味が良い上に甘く、種が少ないので、食べごたえがある品種。果肉は淡い黄色みがかったクリーム色。
食べごたえのあるクリーミィな果肉はカスタードのようでポポーの中でも群を抜いて美味しいです。
ポトマックは完熟するにつれて果肉がクリーム色からやや濃いめの色に変化します。
個人的にはこの白っぽい色の時が一番の食べ頃だと感じています。
9月12日初収穫。ちょうど金木犀が開花し始めた頃です。
今回収穫した1房はポポーとしては規格外に大きかったです。
5個の実がついた1房の重さは合計4.09kgもありました。
1番大きな実は1120g!(果柄つき)
ずっしりとした重さと特大サイズの大きさが伝わらないのが残念です。
実の長さは20cm弱あります。
丸くて大きな断面はカップのバニラアイスみたい。
種子の跡が小さく見えるほど果肉がたっぷりです。種子も通常のポポーと比べて平たくて大きいです。
他は900g、845g、635g、590gもありました。
1番小さな実でさえ、ポポーの実としては巨大です。
食べきれないので、種を除いて冷凍保存することにしました。
カスタードクリームのように滑らかでトロットロです。
大きな実を収穫すると、木に残っていた未熟果は栄養が回ってくるのか急激に大きくなり始めます。
その後も順調に収穫できました。
こちらは3個で1170g。
以前収穫したものと比べると小さめですが、通常のポポーの実と比べると大きいです。(比較の実は120g)
アップルマンゴーみたいなずんぐりとした形をしています。
こちらは1房に4個の実がついて1400gありました。
1番大きな実は500gありました。
次に大きなのは390gで残りは2個で510gでした。
果柄は果肉と同じ色なので果柄の断面がややオレンジ色に見えることから、中身は完熟していそうです。
9月下旬に自然落果したポトマックの果実はちょうど食べごろでした。
種子もかなり大きめです。
新シーズンには驚異的に11個の実がついたものも出現!
5月下旬に7個になりました。
ワバッシュは比較的大きな丸っこい実がなり、果肉はオレンジ色。
なめらかな食感で味は濃厚、香りも甘みもやや強めです。
9月1日、今期1番、朝に自然落果した実で、約200g。ワバッシュの実としては小さめです。
同日の午後、3個の実がついた房のうち1個が自然落果したので房ごと収穫。こちらは3個で925gと大きめでした。
自然落果した実は1個で350gあり、少し黄色くなって良い香りが漂っています。
追熟をしていたら、フルーティーな香りの食べ頃サインが出てきたのでカットしてみると、果肉がたっぷりで2列に入った種子が小さめに見えるほど。味も香りも濃厚で食べ応えがあります。
オレンジ色をしたたっぷりの果肉がトロリとして食感はまさに風味違いのアップルマンゴー!
味はかなり濃厚なので牛乳と合わせると、まろやかになって、より美味しく感じられます。
マンゴー種は形も大きさも果肉の色も味も我が家にある日本の交雑種と似た雰囲気の実でした。
9月5日、熟した実は落ちたてで、とても綺麗な状態でした。
この実は7.5cmと大きくはないですが、種子は2つだけしかなく果肉はたっぷり、種子の大きさは2.2cm。
その後、樹木が大きくなって大きな実がなるようになってきました。
8月26日に自然落果した実は13cmを超え、重さは約320gです。
木にはまだ大きな実が育っていて、今後が楽しみです。
食感はまさにカスタードクリームでトロリン・ツルリン。
独特の香りと甘さがやや強めで濃厚なので乳製品と混ぜた方がマイルドになって良いかもしれません。
…ということで牛乳に浸して食べたところ、抜群においしかったです。
また、早摘みした小ぶりのポポーの果肉はクリーム色。
完熟前の柿と似た食感ですが、十分甘いです。風味はあっさりめでクセがなく、こちらの方が好みという人もいそうな美味しさでした。
交雑種と思われるポポーの実を知人から、いろいろといただきました。参考までに記載します。
園芸植物大事典(小学館)によれば、明治中ごろに日本に導入されたポポーは大果で果肉が黄色、芳香性が強い早生の系統と果肉が白色で芳香性がやや弱い晩生または極晩成の系統が知られているのだそうです。
こちらの実は細長いタイプで、一枝にたくさんの実がついています。
放っておくと、猿に採られてしまうので、毎年、葉に隠れて目立たない青いうちに収穫して追熟して食べているのだそうです。
両手にポポーの実を抱えて持ち去る小猿さんは、とてもかわいらしくてメルヘンチックなんだとか。
このポポーの実はおいしいのですが種子が多く果肉部の少ないのが少々残念でした。
こちらも品種はわからないそうで、ポポーの実の交雑種と思われます。
実が白く小粒ながらバナナ風味で、また違った美味しさです。
こちらも品種は不明。
外見は我が家のポポーの実と似ていますが、やや柑橘系の爽やかな香りがします。実は淡い黄色でバナナとマンゴーとパパイア?を混ぜたような複雑なトロピカル風味でねっとりとしています。
種子の周りに妙なクセのある匂いがありますが、乳製品と混ぜると気にならなくなります。それどころか、シンプルなバニラアイスと混ぜると高級アイスのような贅沢な風味に変身しました。
こちらは道路沿いで見かけた不明の品種で成長観察していたポポー。
完熟バナナみたいな食感で、クセがなく香りが絶妙。
我が家のポポーはマンゴー風味。
交雑種のポポーの実を食べ比べた方々に感想を尋ねてみると、好みのタイプがはっきりと分かれる結果となりました。
ポポーといってもいろいろな交雑種の味があって柿の実と同じように、どのタイプが良いとは一概に言えない結果となりました。
初回は園芸店で購入した2年目2種の苗を2m離して地植えしました。
ポポーは基本的に日当りを好みますが、幼木は強い日射しに弱いため、半透明のポリカーボネイトの波板を陽の射す側に設置し対応。ポポーは枝がやわらかく折れやすいので、風よけとしても役立っています。
根付くまでの植え穴は直根に合わせて深くし、そこにきれいな鉢植え用土を入れてから定番の水ぎめで根を切らないように植えました。
水ぎめ:植木を植え付ける時に、おおよその土が入ったらたっぷりと水を入れ、土の中の空気を抜いて根の周りの空洞を無くす方法。植え穴の底までしっかりと水を入れる。
その翌年に実が付き始めましたが、収穫時期が近づき、良い香りが立ち始めた頃、アライグマに実のついた枝を折られてしまいました。順調に育ってもう一歩のところだったのでがっかりです。北米原産アライグマはポポーの味を知っていたのかも?
そこで野ネズミにも対応できるように目が1cm以下の金網で3mの高さまで覆う害獣対策を講じました。
これ以降、被害は無くなり無事収穫にこぎつけています。
実が重くなってきた時は支えのひもを吊るして補助しています。
翌年は121個の花をつけるまでになり、実がなってからは収穫後の種子を蒔いて苗を増やしています。
自家内のみの利用ですが本数を増やして庭に数本植えています。挿し木栽培も実験中!
ポポーは根を切り詰めると、とても育ちが遅くなると考えています。
なので、基本的にポポーを地植えで栽培する方針にしたところ、元気に育っています。
我が家では育てきれない程たくさんあった実生の苗木は理解のある親切な方々の協力をいただき、現在広々とした土地で順調に育ち、実がつくようになりました。元の交雑種と同じようなオレンジ色の果肉で、味も似ていたそうです。
また、別品種プロリフィクスに加え、現在はケンタッキー州立大学おすすめの最高と言われるポトマックと最上位クラスのワバッシュが仲間入りしました。
どちらも順調ですが、ポトマックの方が元気が良いです。
2021年、どの品種も収穫できるまでになりました。
※商標登録品種は育成者の許諾なく業として利用(増殖、譲渡、輸出入など)する行為は、損害賠償、刑事罰の対象となる場合があります。
無許可で増やしたものを売買・譲渡してはいけません。
国内産のポポーは交雑種のものが多く、食した実の種子から育てても同じ実になるとは限りません。
一概にポポーといっても、品種数はりんごや桃のようにたくさんあるので、果味も少しずつ違うようです。
大きさも150〜400gとまちまちで、同じ木で多く成らせると小さい実になり、大きい実の品種は実の数が少なくなってしまいます。
我が家のポポーの実は150g位で、味はマンゴーのような印象を受けましたが、中にはおいしく感じられないものもありました。
そこで2本のうち1本はおいしい実のなる木からの接木(つぎき)をすることにしています。こうすることで受粉率が向上し、おいしい実がなる可能性が高まります。
登録されているブランド品種は勝手に増やした株を無許可で販売・譲渡するのは違法です。権利者でない一般人が安易に増やすことはできませんのでご注意ください。
また、成木の接木をすると台木よりも短い年数で早く収穫できる可能性があります。
接木ついでに2枝は同じバンレイシ科のチェリモヤを接木しました。
耐寒性のあるポポーの台木に世界三大美果のチェリモヤを接いだ結果がどうなるか楽しみです。チェリモヤに興味のある方はコチラへどうぞ!
ポポーには種子が多めに入っているので、おいしく食べた後は当然まいてみたくなるものです。
我が家ではペットボトルを利用してポポーの種子を発芽させたものも栽培していますので、その方法をご紹介します。
食べ終わった後の種子は即、果肉を落としてきれいに洗い、乾かさないように湿らせたキッチンペーパーで包み、程よい大きさのジップロック等に入れてしっかりと密閉します。空気はわずかに入る程度にします。
その種子を冷蔵庫の中段あたりの奥の方に入れて一冬程度寒さにさらすのがポイント。凍らせないように。
ポポーの種子は寒さを経験しないと発芽しません。また、発芽温度が高いので夏になってから発芽することが多いです。発芽まで乾燥させないように注意します。
この方法の利点はコンパクトで安上がりに大量に発芽させることができることです。
最近ではジベレリン処理をして休眠打破・休眠無しの発芽を成功させ、より短期間に発芽させています。
保温と保湿・水切れさせないこと
根にダメージを与えないこと
ポポーを種子から発芽させて栽培すると、最初の3年程は成長が遅くてじれったく感じますが、4年目以降になると成長が速くなって、急激に大きくなります。
発芽のようすは種子の殻が土の中に入っていたり、芽だけが姿を出したりと様々です。
ちょうど地上部で種子から芽と根が出ているものがありましたので紹介します。
ポポーはアメリカ式の接ぎ木なら成功率が高いようです。
この写真は接ぎ木した時のビニール袋を外した直後のものです。
萌芽を見ればわかりますよね?
その後、順調に育っています。
ポポーを剪定したので、枝の断面をじっくりと観察してみました。
接ぎ木をする時に参考となります。
一般的にポポーの挿し木は難しいと言われていますが、我が家では1本だけ挿し穂から芽と根を出させることに成功しました。
ポイントは気温27℃・湿度75%以上の温室で管理することで、この方法はアメリカの研究所による挿し木栽培法の文献より得た情報です。
その後、順調に育ち樹高も伸びて、大きな葉をつけています。
近頃ではたくさんの花をつけるようになってきました。
そして、大きな実をたくさんつけるまでになりました。
こちらは2個で500g。
元の品種と同じでオレンジ色をした美味しい果肉を味わうことができました。
しかしながら、世間一般では挿し木よりも根差しをする方が無難なようなのでそちらをオススメします。
根差しをする時は成木の地中にある鉛筆位の太さの脇根をひげ根をつけたまま傷をつけないように取って、その根を小鉢で育てます。
我が家では挿し木栽培と同様に根差しした小鉢を気温27℃・湿度70%以上の温室で管理したところ順調に育っています。
我が家のポポーも秋になってきれいな黄葉となり、落葉し始めました。
葉の大きさは木によって歴然とした差があります。
写真は標準的な葉をつけたポポーの木と大きな葉をつけたポポーの木の葉を適当に拾って大きさを比較してみたものです。
左の小さい方の葉は18cm位で、右の大きい葉は35cm位でした。倍近くの差です。
どちらも植えてから4年目を迎え、ほぼ同じような環境下で育てているポポーの木です。
適正な植え穴と植え方を施した方は元気良く育ち、より大きな葉をつける結果となりました。葉は根の育ちのバロメーターといえそうです。
こちらは10年目の6月上旬の葉で41cmもあります。
日影環境にある下の葉が大きくなる傾向があるようです。
きれいな黄葉が終わり、葉を落とすとポポーの木は着やせするタイプで少々ボリュームに欠け、特に幼木の場合は少々淋しい感じがします。
しかしながら、葉が落ちた枝の所に残る葉痕が姿を現すので維管束痕や冬芽を観察をするチャンスです。
冬の休眠期を終えると美しい芽吹きのシーズンとなります。
葉の裏側には防寒と虫除けを兼ねているのか産毛があります。
ポポーの花芽はふっくら・けもけもしていてタヌキとか山伏のボンボン飾りみたいな雰囲気です。
花芽は新枝だけに形成されます。
桜の花の咲き誇る頃、開花してきました。最初は花弁が黄緑色でレタスみたいな感じです。花は下向きからやや下向きに開きます。
桜の花が散り始めた頃、花弁の下の方から色付き始めました。
外側の花弁は1枚2cm位です。
自然環境では虫媒花だからなのか、獲物を狙ってクモが花弁のまわりにうろつく姿をよく見かけます。
花の中心部分のツブツブに見えているものが雌しべの柱頭です。
個体差があり数個〜7個位と数が異なります。これが受粉すると将来の実になるんですね。
ポポーの花は雌性先熟 (しせいせんじゅく) といって最初に雌しべが熟し、後に雄しべから花粉が出るという雌雄異熟花です。
花弁がチョコレート色になった頃に雌しべが成熟します。
自家受粉を避け、より良い種を残すための戦略なのでしょう。
なので、花数が少ない場合は雌しべ成熟期と雄しべ成熟期を合わせる必要があり、人工授粉します。
ツクシのようなびっしりと詰まった雄しべのタイルが開き始めました。
雄しべから花粉が出始めたポポーの花はいきなり賑やかな様相に変化しました。ちょっと触れるとパラパラと剥がれ落ちてきます。この状態で雄しべをとり、人工授粉します。
雌しべの柱頭に筆で雄しべの花粉をつけて人工授粉。
ポポーの花はその香りの性質からかミツバチは誘因されず、ハエ系の虫が授粉するそうなので何となく残念な感じです。
そうは言っても、ポポーの花が咲き出すとニクバエらしき虫が訪れ、次々と上手に授粉をしてくれていたので感謝です。
とても繊細で丁寧な仕事ぶりです。さすがにプロフェッショナル!
人工授粉をした後のポポーの花にもニクバエさんが来訪中。受粉がより確実なものになりそうです。
受粉後、ポポーの花弁が萎れてきた頃の様子です。
まだ、若い蕾がいくつも控えているものの先発隊の受粉が終わる頃には葉も芽吹き始めました。
明治頃にブームになったといわれるだけあって、たくさんのポポーの花がリズミカルに咲いている立派な木を何カ所で見かけましたので写真を撮らせていただきました。
よく見ると、雌しべの見える部分が少々長めで湾曲していて形が我が家のポポーとは違って見えます。成熟した雄しべの色も濃い目です。
残念ながら品種は不明ですが花の時から微妙な違いがあるようですね。
ポポーの味がマンゴー風だったり、バナナ風だったりといろいろあるのも外見は似ていても違う品種だから当然なのかもしれません。
このポポーの実の成長過程はこちらで紹介しています。
4月下旬頃から5月上旬にかけて、あちらこちらでポポーの花が咲いているのを見かけました。
どの木も例年より花数が多いような気がしました。
こちらはかなり大きなポポーの木。たくさんの花を咲かせています。
たくさんの花が次々と開花して、既に受粉を終えたものも見られます。
これほどの花盛りを目にしたので、たくさんの実がなる光景を楽しみにしていたのですが、その後の低温、乾燥、長雨によって、どの木も実が数えるほどしかないという残念な年となってしまいました。
ポポーの花弁が外れて赤ちゃんの実の全貌が見えるようになりました。
ヒヨドリについばまれ、歯が抜けてしまったようなものもあります。
害鳥対策も必要そうです。
一つずつの実が広がり始めました。
気温も安定して暖かい日・暑い日が続くようになると、葉も急激に大きく茂り始め、ポポーの実は膨らんで可愛らしい形になってきました。
6月上旬の様子です。
6月中旬、葉が茂って鳥に狙われにくくなったようです。ポポーの実はますますで可愛らしい形に膨らんできました。
1個だけの実は重くなったのか下向きになりました。
7月初旬、どの実も順調に育って、より大きくなって充実しています。
今後は鳥除けのために袋がけをする事になりました。
8月下旬、1個だけの実が自然落下しました。
長さ10cmで重さは280gです。
まだ8月なので少々、早すぎる気もしましたが、あまりに良い香りがするので食べてみました。
ちょうど食べ頃で完熟です。
トロリとして、風味がマンゴー風で甘くて後味も良く、とっても美味しかったです。
9月初旬には3つの実が自然落下しました。3つで450g。とてもいい香りがあたりに漂っています。
他種のポポーの花のコラムに登場した品種が不明の雌しべの長いタイプのポポーの実のその後の成長過程。
6月上旬に細長いタイプの実をつけていました。花の多かった割には実の数が少ないです。
花は我が家と同時期に咲いていましたが、時同じくして我が家のポポーの実と比べると成長が遅いのか、別品種のようで果肉部に対して種子が大きめの細身の実がなりそうです。
葉が元気良く生い茂っていて鳥からガードしてくれているみたいです。
6月中旬、順調に育っています。
7月初旬、順調に育っていますが、摘果状態の方が大きいです。
同じ時期の我が家のポポーと比べると明らかに形が違ってきました。
猛暑の続く7月中旬、順調に大きく育って、今まで目立たなかった実も存在感が出てきました。
8月の終わり頃、形に目立った変化が見られないまま実は順調に大きくなっています。葉と実に傷やシミなどが見えます。
10月下旬、黄葉し始めましたが実はまだたくさんついています。偶然、自然落下して道路の中央に転がり、車にひかれる寸前の傷ついた実が落ちていましたので、中を観察させていただくことにしました。
大きさは約9cm、60g位。我が家のポポーは平均150g位だったので、比較すると小ぶりです。
あちらこちら傷がついていますが、ポポー独特の完熟したときの甘くて素敵な香りが漂っています。
切ってみると、きれいなクリーム色。熟した柿のようにトロトロで、掴むとつぶれてしまいそう。
傷ついた部分と皮を厚めに剥いて食べてみたところ、ちょうど食べごろだったらしく、あまり、クセもなく完熟バナナみたいな食感で香りが絶妙で美味しかったです。種子は全部で4つ入っていました。
ポポーをおいしく食べるには品種もさることながら、食べ頃が大切だと実感しました。
ポポーの種子です。
種子が多く詰まった所では平べったく、少なめの所では厚みがある傾向があります。
種皮を外してみました。
中にある胚乳は将来子葉となるため折り畳まれているような独特な形状をしています。
カキの種子と同じように貯蔵組織である胚乳の中に胚があるようです。
ポポーなどのバンレイシ科の植物は子葉を種子の中に残したまま外れて成長することが多いので子葉の展開した姿を見ることは稀です。
※薄い2枚の子葉は胚の一部らしいです。
ポポーの種子の発芽後の様子
ポポーの種皮を取り除いて種子の中を見てみました。
胚乳の脇についている、鱗のついた唇のような形をしている木質部分はマイクロピラープラグ。とても堅く発芽孔の蓋の役割をしていて発芽時に最初に割れて開きます。
胚乳はうねりのある独特な形状をしていて、反芻胚乳と呼ばれます。
また、左右の両側面に白い毛皮のようなものがついていまが、これは濡れると褐色になります。
この毛皮部分は種皮が2つに割れる場所に位置し、種皮が割れた時に、雑菌や乾燥等から胚乳を保護しているものだと推測しています。
さらに、その中央に胚乳をぐるりと取り囲んでいる導管と思われる筋のようなものがあります。
胚乳 (子葉) は発芽時に水分を吸収して膨張し、種皮が2つに割れます。その際、この導管が緩衝材の役割をして種皮のヒビ止めをすることで胚のダメージをなくしているらしい。
いろいろな角度から見た種子内部の様子。イモムシみたいです。
側面の白い毛皮はラーテルのよう。
この唇のような形をした発芽孔の蓋の部分マイクロピラープラグは種皮についたまま抜け殻に残る事が多いようです。
こちらは休眠打破にチャレンジする敗者復活戦の種子の中身です。
※正確に言うならば、一昨年に知人から譲り受けたポポーの種子でしたが、発芽しなかったので種皮を剥いたところ意外にも良い状態。発芽できなかった要因は保存時に種子を乾燥させてしまい、不具合が生じていたのでは?と推測しています。
反芻胚乳とマイクロピラープラグがきれいに見えるので掲載します。
マイクロピラープラグがしっかりと口を閉じてます。
この表面の輪郭が不規則で不均一な胚乳はruminate endosperm(反芻胚乳)と呼ばれ、バンレイシ科の植物やナツメグの種子などに見られる特徴なのだそうです。うねったような形が何度も噛みしめられたような形のため、反芻という名前がついたようです。…ピンとこない言葉ですが、よく噛んだガムの形に見えなくもないです。
参考文献:
Seed and fruit histology - Plant Anatomy
Sugar apple (Annona squamosa L., Annonaceae) seed germination: morphological and anatomical changes
種皮はさほど厚くないのですが腐食や乾燥しやすい環境から胚を護るためか胚乳から外れにくいです。
種皮の内側は甲殻類みたいですね。
マイクロピラープラグ(micropylar plug)という種子の中にある堅い木質でできている発芽孔の蓋・栓の役割をするパーツが種子を休眠から目覚めさせる鍵。
温度と湿度と酸素等、発芽に適した条件が揃った時に開きます。
これはバンレイシ科の植物の種子に多く見られ、発芽後も種皮に残るようです。
種皮からマイクロピラープラグを外したところ。
マイクロピラープラグが胚乳に付着している様子は
発芽を終えて残った種子の抜け殻を割ってみました。
種子の抜け殻を開いてみると、渋皮の部分を残してすっかり空になっていました。ちゃんと栄養を渡して、役目を終えたようです。
開くとわらじのような雰囲気です。
じっくり見ると、人の足型のように個性があって面白いです。
発芽直後、傍らにあった種子の殻にちぎれた子葉の葉柄と思われるものが残っているものがあります。
中の様子を確認してみます。
種皮は意外と簡単に剥がれ、中には折り畳まれていた2枚の薄い子葉が重なっていました。
雰囲気はアサリのようです。(笑)
子葉は簡単に外れました。
2枚の重なった子葉を剥がして1枚ずつにしてみました。
子葉が外されて残った種子の殻には胚乳らしきものが詰まっています。
こちらはがっちりとくっついて外れにくいです。
子葉とは別に反芻胚乳が残っていたようです。
こちらは少し展開し始めたポポーの子葉です。大抵は種子の中に残ってしまうので、見るのは稀です。
7月上旬、落ちてしまったポポーの未熟果があったので、半分に切って観察してみました。
果肉も種子の並び方も、既にポポーらしい実になっています。
切られて酸化したせいか褐色に変色してしまいましたが、種子の成長過程を垣間見ることができました。
未熟な種子の断面は個体差が大きいですが、見てみると、一部ゲル状のものも見られます。
興味深いことに反芻胚乳が形成されている過程でした。
果肉から種子を取り出してみると、種皮は弾力があってソフトタッチで乳白色。やや半透明で中の反芻胚乳が模様のようになって見えます。
種皮を剥がしてみると、胚乳部分がゲル状になっているようでした。
今年、休眠期が不足して発芽できなかった種子をジベレリン処理により休眠打破をさせて、発芽させることができました。時期は10月の終わり頃です。
その後ジベレリン処理後に種子から非常に元気よく本葉を出そうとしている瞬間のようすです。
12月上旬とは思えないほどの力強さが感じられます。
直根の根もまっすぐにペットボトルの底まで到達しています。
以降、根を傷つけないようにして底を追加して2段鉢にしたところ順調に育っています。
他の種子も次々と発芽しています。
上記写真では少々解りにくいと思われるので、違う種子の発芽の様子を用いての補足説明です。
ジベレリンを含ませた紙で種皮を剥いた種子の中身を包んで発芽させています。芽が出ようとしているのは胚乳(子葉)部分だと思われます。
その後、胚乳 (子葉) というか、種子だった部分が土から出てきて持ち上がってきました。そこでジベレリンを含ませた紙を外してみました。
その後、種子だった部分をぶら下げたまま茎がのびて上へと持ち上がってきました。
種子だった部分のヒダの折り畳まれていた間隔が広がって全体的に長くなったように見えます。
子葉の根元が本体から外れているのがわかります。
この種子だった部分を外して、様子を見てみることにしました。
渋皮つきの表面はもろく崩れて断片になってしまいました。
局所的にポポーの胚乳と思われる部分が残されていました。その表面と中身はこんな様子です。
そして、その中には子葉らしきものが入っていました。
重なっている葉を剥がしてみると、こんな感じです。
まれに薄いレタスのような弱々しい子葉を見ることがありますが、この黄色い部分が黄緑色になっていたものだったようです。
スッキリと身軽になった本葉。
ジベレリン処理した休眠無しの種子をロックウールと卵パックを利用して発芽させることができました。
発芽率が高く、効率も良いです。
ロックウールを使うことで発根後の植えつけ時に根を痛める心配が激減しました。
また、卵パックは適度な大きさで、保温・保湿効果が絶妙です。
この時発芽したポポーのようす。
※種子発芽とは発根から始まる一連の過程のことを指し、幼根の先端が顔を出した時から始まるので発根が先でも発芽なんだそうです。
※休眠から醒めた種子は最初に吸水・膨張して貯蔵物質を急速に分解してエネルギーや低分子に変換し始めます。
子葉から養分を供給された胚軸は、全体が伸びるとともに両端の分裂組織が細胞分裂を始め、幼芽と幼根が成長して、ふつうは先に幼根、ついで幼芽が種皮から突き出し、種子発芽します。
このようになった胚は芽生え (実生) と呼ばれます。
参照・引用:2-3. 種子休眠と種子発芽
発芽後は早々に深さのある容器に植えつけました。どれも順調に元気に育っています。
ポポーの発芽実験をしていて、発根の様子を見かけたので紹介します。
発芽時の力強い発根。ポポーの根の大切さを実感しました。
ポポーの胚乳・幼芽?部分から根と肺軸と思しき部分を外したところ。
胚軸が伸びて基部から発根しているようです。
根の先端部分。
卵パックを使って温度と湿度を管理をしながら発芽をさせてみました。
7月下旬、一斉に発芽を始めました。フラミンゴが首をもたげようとしているみたいです。
発芽したポポーを植え付けをしようとしたところ、地上部の見た目よりも根が著しく成長しています。
卵パック内で行き場を失った直根がとぐろを巻きながらも逞しく伸びています。
この後、根を傷つけないように注意して植えつけをしました。
8月中旬の様子です。ペットボトル容器に植えつけ後、今年もたくさんの苗が順調に育っています。
大きな種子を持ち上げながら力強く成長する様子は小気味いいです。
越冬することなく、これまでで最短の時短発芽を紹介します。
採取した種子は8月10日に収穫したワバッシュの完熟果。
果実を食べ終わった後の種子は2日間、乾燥しないように保存した後に種皮を剥いて、ジベレリン処理して播種しました。
驚くべきことに、同年11月1日に、元気よく発芽していました。
根もしっかり伸びています。
使用している容器は卵パックです。
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