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其まま地口
猫飼好五十三疋
(みゃうかいこう ごじゅうさんびき)
猫好き必見!! かわいい浮世絵の世界
猫飼好五拾三疋は、東海道五十三次のパロディー。猫たちをモチーフに登場する宿場を親父ギャグ風にダジャレで描いた大判三枚からなる楽しい癒し系の戯画です。嘉永元年(1848年)
地口とは同一または似たような響きの語句を使って別の意味を表現する言葉遊びの事です。語呂合わせやダジャレのように一つの語句に複数の意味を持たせたりする親父ギャグみたいなものです。在原業平の歌に代表されるような巧みに言葉を掛け合わせて作られた和歌を見ても分かるように、日本人は昔から言葉遊びを楽しむマニアックな傾向があったようです。そんな伝統が脈々と受け継がれ現在のダジャレ文化があるんですね。
出典:WIKIMEDIA COMMONS
File:Cats suggested as the fifty-three stations of the Tokaido.jpg
1 日本橋(にほんばし)→ 二本だし
二本の鰹節をひっぱり出している。
鰹節の出汁と、藁で縛ってある鰹節の中から二本を引っ張り出している姿で「だし」をひっかけたのも心憎い。
2 品川(しながわ)→ 白かを
白顔とはすまし顔のこと。スカーフが白猫のおしゃれさんを演出。
3 川㟢(かわさき)→ かばやき
岡持の中の蒲焼きの匂いを嗅ぎつけ気になってしょうがない。何といっても蒲焼きの匂いは格別だもの。
4 神奈川(かながわ)→ かぐかハ
嗅ぐ皮。竹皮の匂いを訝しげに嗅ぐ。中身はいったい何かな?
5 程ヶ谷(ほどがや)→ のどかい
喉かい。かいかいと喉を掻く。あ〜!かゆい、かゆい、喉がかゆい。
6 戸塚(とつか)→ はつか
じ〜っ とハツカネズミにロックオンする白猫。気配に気づき、はっとするネズミ。二匹は初顔合わせか?
7 藤澤(ふじさわ)→ ぶちさば
ぶち猫が鯖をくわえている。
急いでいる様子から、さては泥棒してきたか?
8 平塚(ひらつか)→ そだつか
育つか? 子猫を優しく見守る母猫。
9 大磯(おおいそ)→ おもいぞ
重いぞ。 自分の体よりも大きな蛸を欲張ってひきずってみたものの、思いの外獲物が重くて手こずっている。
10 小田原(おだわら)→ むだどら
獲物のネズミに逃げられて、追っても無駄足のどら猫。ちょっと悔しそう。
11 箱根(はこね)→ へこね
へこ(凹)寝。 眉間にしわをよせ、ネズミに目の前のエサを食べられても気にならないほどへこんでフテ寝。
ポーズは手足を折り畳んで箱型になる香箱座り。寝落ちして箱寝か?
えさ入れは当時一般的だったアワビの貝殻だけど、猫はアワビを食べると耳が落ちると言われるほど禁忌食。
12 三嶌(みしま)→ 三毛ま
三毛魔。 尻尾が二股になった猫又という妖怪・魔物になった三毛猫が手ぬぐいを被って妖しく踊る。
13 沼津(ぬまづ)→ なまづ
ナマズをガン見するブチ。
固唾でも呑でいるのか。対峙する二匹の間にはちょっとした緊迫感が漂う。
14 原(はら)→ どら
ボスと見受けられる、強面でがたいのいいどら猫。「どらどら!」と叫んですごみをきかせているかのよう。
15 吉原(よしわら)→ ぶちはら
ぶち模様のある腹をぶちぶち不満気に毛繕いしている。
16 蒲原(かんばら)→ てんぷら
天ぷら。 てんこ盛りの天ぷらを前にがまんしてぐっと生唾を呑み込む。
食べるべきか、食べらざるべきか、
これが問題だ。
17 由井(ゆい)→ たい
鯛。 大きな鯛をくわえて、たいしたもんだろと、どや顔で見せびらかす。
18 奥津(おきつ)→ おきず
起きず。 眠くて眠くてどうにもこうにも起きられそうにない。
19 江尻(えじり)→ かじり
かじり。 鰹節を両手でしっかりと
押さえて、したり顔で丸かじり。
20 府中(ふちゅう)→ むちゅう
むちう。 嬉々としてムチムチの魚に夢中になって食らいついている。
21 鞠子(まりこ)→ はりこ
はりこ。 かわいらしい張り子の猫。鞠も張り子も中身は空洞。
22 岡部(おかべ)→ あかげ
あかげ。あかんと思ったのか、何かに飽きてしまったのか、何やら物憂げにうずくまる赤毛の猫。
23 藤枝(ふじえだ)→ ぶちへた
ぶちへた。 鼠捕りが下手なぶち猫がリベンジを狙うがまたまた失敗。鼠にまで、やーいへたくそ!とバカにされ堪忍袋の緒がぶち切れそうな悔し顔。
24 嶋田(しまだ)→ なまだ
なまだ。 焼き魚の方が好物なのか?生魚を目の前にして気がのらない。
25 金谷(かなや)→ たまや
たまや。 名前を呼ばれて、福々しい表情で答える「たま」。おっとりとしていて玉のように丸々と太っている。よほどかわいがられているのだろう。
26 日坂(にっさか)→ くったか
くったか。 喰ったか?と、に〜っと微笑む年老いた猫だが、自分自身も年くったかぁという感慨も感じさせる。
27 掛川(かけがわ)→ ばけがを
ばけがを。 化け顔。振り返った時の豹変ぶりは威嚇するかのような化け猫の恐ろしい形相。
28 袋井(ふくろい)→ ふくろい
ふくろい。 袋入。袋の中身を夢中で食べていたら、頭が袋の中にすっぽり入ってしまって目の前がふ〜、黒い。
29 見付(みつけ)→ ねつき
ねつき。 寝付きがよいから座布団の上で、すぐにすやすや。つられそう。
30 濱松(はままつ)→ はなあつ
はなあつ。 鼻が熱っ!猫舌だけど、鼻も弱いのよ。焼きたての貝を目の前に、苦戦を強いられている。
31 舞坂(まいさか)→ だいたか
だいたか。抱いたか。幸せいっぱいの顔で子猫を腹の上で抱きしめる。
32 荒井(あらい)→ あらい
あらい。洗い。猫は自分の唾液を前足につけて顔をこすって洗う。耳後ろの洗いの時は荒い天候、雨かもね?
33 白須賀(しらすか)→ じゃらすか
じゃらすか。 子猫たちをじゃらしている三毛猫のお母さん。余裕と貫禄!
34 二川(ふたがわ)→ あてがふ
あてがふ。 子猫たちに乳をあてがう母猫。遠くから遅れて駆けつける子猫がドジそうでかわいい。まってぇ〜。
35 吉田(よしだ)→ おきた
おきた。 起きたぞ!と言わんばかりに大あくび。伸びする姿も気合い入りまくり!この後何か重要な予定でも?
36 御油(ごゆ)→ こい
こい。 手前のぶち猫がすごむ黒猫に向かって「来い」と手招きしている。二匹の間には一触即発、恋か喧嘩か、ただならぬ予感。
37 赤坂(あかさか)→ あたまか
あたまか。 まためざしの頭か。落胆しながらもお腹がすいているので仕方なく、がっついて食べる。ちぇっ。
38 藤川(ふじかわ)→ ぶちかご
ぶちかご。ぶち猫が籠の中に。
居心地が良いのか、ご満悦の様子。
39 岡嵜(おかざき)→ おがさけ
おがさけ。尾が裂け。二つに裂けた尾を眺め、あ〜あ、ついに来るべき時が来て、化け猫になっちまったか…。という哀愁が漂っている。
当時、老いた猫は尾が二股に裂け、猫股という妖怪となると常識的に考えられていた。
40 池鯉鮒(ちりゅう)→ きりゃう
きりゃう。器量。 きりっとポーズを決めた器量良しさん。
41 鳴海(なるみ)→ かるミ
かるミ。軽身。 身のこなしが軽く、優雅に籠から抜け出す。
42 宮(みや)→ おや
おや。おやおや子猫にじゃれつかれて嬉しそうな親猫。おや、何だろう?と好奇心いっぱいのチビちゃん。
43 桑名(くわな)→ くふな
くふな。喰うな。ごはんを前にお預けをくらって、じ〜っと待っている。
餌入れはアワビの貝殻。
44 四日市 (よっかいち)→ よったぶち
よったぶち。寄ったぶち。 ぶち猫がだらしなく寄り集まっている。みんな恰幅がいいので裕福な家の猫だろう。
45 石薬師(いしやくし)
→ いちやァつき
いちやァつき。いちゃつき。 仲良くいちゃつく二匹の猫。微笑ましい。
46 庄野(しょうの)→ かふの
かふの。 しっかりと、首輪と鈴までつけられてしまったけど、飼うの?と不安げに訴える野良ちゃん。飼われる事への惑いが伝わってくる。
47 亀山(かめやま)→ ばけあま
ばけあま。化け尼。 手ぬぐいを被り尼に化けようとしている。真剣!
48 関(せき)→ かき
かき。 牡蠣を一生懸命食べている。さすがに滋養豊富な牡蠣を食べているだけあって精悍さを感じさせる猫。
猫のエサとして貝類は好ましくないようです。
49 坂の下(さかのした)→ あかのした
あかのした。赤毛でアカという呼んでいる猫が舌をペロペロ。
よく見ると舌も赤かった!?
50 土山(つちやま)→ ぶちじゃま
ぶちじゃま。ぶち邪魔。二匹の恋路に割り込む野暮猫のぶち。無粋だね。
それじゃあブチ切れられちゃうよ。
51 水口(みなぐち)→ ミなぶち
みなぶち。 体中全部がぶち尽くめの皆ぶち。全身が見えるようにキリリとモデルさんポーズ。見事頭から尻尾、こめかみに至るまでぶちがある。
52 石部(いしべ)→ ミじめ
みじめ。 気位は高そうだが、異常に痩せこけてみじめな様子の猫。
53 草津(くさつ)→ こたつ
こたつ。 まさしく猫はこたつで丸くなる。寒いと丸くなる猫はこたつの中では暖かいので丸くならないとか。
54 大津(おおつ)→ じゃうず
じゃうず。上手。 ネズミ捕りが上手なだけあって食料事情は良いらしく、まるまると太っている。ネズミを上手に放り上あげ、上手にキャッチ。
55 京(きょう)→ ぎゃう
ぎゃう。ギャウ!と威嚇する虎猫。
獲物は渡さないぞ。と眼光鋭く睨みをきかせている。鼠の悲鳴もギャウ!
猫飼好五十三疋の作者 歌川国芳
作者は「奇想の絵師」などと呼ばれた幕末に活躍した浮世絵師 歌川国芳。
現代の妖怪ブームのルーツともいえる作品も数多く残し、多彩なジャンルを魅力的に描いた浮世絵師です。
猫好き必見 !! という割には
「かわいくないじゃない。」と感じたアナタ!そう感じるのも当然です。
妙な巧さとリアリティーのせいで妖怪じみた猫にも見えます。が、じっくりと見ていると、何やら面白みがわいてきて何となく”かわいく”見えてきたりしませんか?
これぞ国芳マジック。スルメのように噛めば噛む程味わいが出て来る芸術性の高さが国芳の作品の特徴です。
出典:WIKIMEDIA COMMONS
File:Self-portrait of the shunga album.jpg
国芳は常に何匹も猫を飼っていて懐に猫を抱いて作画していたと伝えられる程超猫好きだったそうです。
上記の自画像を見ればその様子が伺われますね。ちょっと危ない人のようにも見受けられますが、そこは芸術家ですからご理解のほどを。(笑)
猫飼好五拾三疋はそんな国芳ならではの冴え渡る猫の描写センスが光る名作です。
江戸時代の猫好き浮世絵絵師が感じたかわいい猫の世界をどうぞごゆるりとご堪能くださいね。
解釈について
尚、解釈は個人的見解も入っており、学術的でない事をご了承ください。
また、国芳の描く生き生きとした猫の姿をご覧になったみなさんもいろいろな想像を膨らませて楽しんでみてはいかがでしょうか?絵を見てあれやこれやと謎解きをする事こそ、国芳の望むところだったように思います。
国芳は時代を先取りしていた柔軟性に富んだ類稀なるチャレンジャーだったのですから。
東海道五十三次
東海道:江戸日本橋ー京都三条大橋間
五十三の宿場
品川、川崎、神奈川、保土ケ谷、
戸塚、藤沢、平塚、大磯、小田原、
箱根、三島、沼津、原、吉原、蒲原、由比、興津、江尻、府中、丸子、
岡部、藤枝、島田、金谷、日坂、
掛川、袋井、見付、浜松、舞坂、
新居、白須賀、二川、吉田、御油、
赤坂、藤川、岡崎、池鯉鮒、鳴海、宮、桑名、四日市、石薬師、庄野、
亀山、関、坂之下、土山、水口、
石部、草津、大津
因みに江尻は現在の清水、府中は静岡のことです。
絵の中の文字が読めない?
書かれている文字は一見簡単そうに見えるのに読むことができない方が多いことと思います。
これは部分的に変体仮名(へんたいがな)で記されているからです。
興味のある方はこちらを参照されると判読の助けとなります。
そめいろづくし
そめいろづくしは団扇の地紙用として国芳によって描かれた染め物を題材にした戯画です。
擬人化された動物たちが水辺で自分に因んだ染色にとりかかっています。
出典:WIKIMEDIA COMMONS
File:Self-portrait of the shunga album.jpg
江戸時代後期、幕府が武士や庶民に贅沢を禁ずる奢侈禁止令を出したため、着物の色は茶・鼠・藍に限定されてしまいました。
この許可された色の中で江戸の町民が粋を追求した結果、洒落たシックな色彩が多数生み出されました。その色数は、
四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)といわれるほどバリエーション豊かです。
国芳の描いたそめいろづくしで当時の文化をお楽しみください。
そめいろづくし 猫
ねこ志ぼり:手ぬぐいに絞りを施し、粋な柄を染め上げた姉さん猫。
絞りは布の所々を紐等で縛り、染料が染み込まない箇所を作って模様を出す染色技法
着物の柄は 猫にかけて 小判 模様?
そめいろづくし 狐
狐 こん:嬉しそうな笑顔で紺色に布を染めあげる狐。
紺色は藍染めを何度も重ねて染めないと出ない深い色
狐はご機嫌のときにはコンと鳴くのだとか。狐がコンコンという表現は奈良時代からあったそうです。
着物の柄は 柘植の 櫛 模様?
そめいろづくし 熊
熊 くろ:黒色を出すには苦労します。
着物の柄は ツキノワグマにかけて
お月様 模様。
そめいろづくし 鼠
鼡 ねづミいろ:鼠色は四十八茶百鼠といわれるほどバリエーションが豊富。
着物も染めている布も色は鼠色。
四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)は茶色が48色、鼠色が100色もあるほど多いという意味合いで、実際には茶色系・鼠色系、どちらもそれ以上の色名があるそうです
着物の柄は 鼠に因んで 米俵 模様。
そめいろづくし りす
りす ぶどうねづミ:
りすの染めたい色は葡萄鼠色。
ぶどうのような目をして、斜め前の鼠に染め色の確認をとっているよう。
着物の 柄は ぶどう柄?
江戸時代、葡萄とリスを組み合わせた葡萄栗鼠文は子孫繁栄・豊穣を象徴する縁起の良い吉祥文様として周知されていたようです
そめいろづくし 狸
たぬきちゃいろ:茶色に染めた糸の束を持つ狸の背中には子狸。
ねんねこの柄は ぶんぶく茶釜?
そめいろづくし 猪
猪 はないろ:猪の鼻にかけた色なんでしょうが、遅刻でもしたのかこれから染める反物を小脇に抱えて大慌て。
たぬきちに怒鳴られているようです。
花色・はなだ色は藍染めで染めた露草のような青色。
はゐいろだったら灰色のように思えますが、江戸時代は火事を連想させる灰色は縁起が悪いとされていたので鼠色という色名が使われたのだとか
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旅先で出会ったニャンコ
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