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天使の羽根を隠し持つ
ホオノキ
癒しのかわいいフカフカ植物
ホオノキの冬芽と芽吹き
やわらかな銀色の光沢を帯びた芽吹きがとてもキレイな「ホオノキ」。
パステルトーンのやさしくカラフルな彩りの新葉が羽化するかのように展開する様子は魅力的。
そんなホオノキの芽吹き前の冬芽の中に美しい銀白色の天使の羽根が隠されているのを発見しました!
ホオノキの冬芽は秘かに天使の羽根を隠し持っていたのです。
冬芽(とうが・ふゆめ)とは、冬を越す芽のことで、植物によって越冬形態が異なります。晩夏から秋に形成されます。
観察を続けると、冬芽の内部では天使の羽根のように光り輝く新葉が托葉とセットで幾重にも重なって待機しています。天使の羽根のように見えたのは芽吹きを待つ葉の赤ちゃんでした。
豪華に輝く服をたくさん重ね着して、ひっそりと待機している姿は十二単衣を着て竹の中に佇むかぐや姫のよう !?
癒やしのフカフカ植物「ホオノキ」の魅力を探ってみました。
ホオノキはモクレン科 モクレン属の落葉高木で、すっきりとしたシンプルな大きな葉が特徴です。葉の大きさは30〜40cmにもなります。
その大きな葉をソーラーパネルのように空に向かって広げてグングンと高く育つため、成長がとても速いです。
大きな葉は食材を包んだり、食器として、古くから利用されてきました。
また、朴葉味噌や朴葉焼きの素材として、よく知られています。
初夏、枝先に大きくて芳香のある白い花を上向きに咲かせます。
ホオノキ(朴の木)
モクレン科 モクレン属
学名:Magnolia obovata(卵円形の)
Magnolia hypoleuca (裏が白い)
英名:Japanese Bigleaf Magnolia
Japanese whitebark magnolia
日本最大の冬芽と言われ、大きくて存在感のあるホオノキの冬芽。縦の長さは3〜5cm位です。
冬芽には細長いタイプと、やや幅広タイプの2種類があります。
どちらも芽鱗という革質のコートで越冬対策をしています。
ホオノキの場合、冬芽を包む芽鱗は2枚の托葉と葉柄が合着したものがキャップ状になっています。
ホオノキの冬芽の種類
細長いタイプは葉芽、幅広タイプは葉芽と花芽の入った混芽です。
ホオノキの冬芽は、細長いタイプの葉芽が圧倒的に多いです。
美しい芽吹きの葉を内包する冬芽の中は一体どうなっているのか、興味を持っていたところ、観察する機会に恵まれましたので見てみました。
ホオノキの冬芽が何かに似ているなと思ったら大きくてしっかりと閉じているオオハシのクチバシでした。
ここで観察しているホオノキの冬芽はホオノキを伐採した直後に持ち主様のご厚意によりいただいたものです。
細長いタイプの冬芽(葉芽)です。
ホオノキは大きな葉で長くて大きな葉柄を持つので、ハート形?の葉痕や、ハチマキのように枝をくるりと取り囲むライン状の托葉痕も確認しやすいです。
樹皮に散らばったツブツブの明るい点状のものは皮目(ひもく)。気孔と同様に植物体内外の通気に役立つ組織です。
キャップ状になっている革質の芽鱗を外すと、…なんと!
大きくて白く銀色に輝くフカフカの天使の羽根のような幼葉が姿を現しました。凛として気品があります。
幼葉の葉柄部分は下の托葉にがっちりとくっついています。
きれいに剥がすのは難しいです。
ホオノキの芽鱗は元々は托葉だったものが越冬用に変化したもののようです。
▶ 参照:ホオノキの芽鱗と托葉
托葉と天使の羽根はセットになっていて、1枚1枚、托葉を外しながら中身を確認してみると、中心部までマトリョーシカのように天使の羽根姿の幼葉が詰まっています。
葉芽の中にはその年に出す葉と茎が格納されているそうです。
この羽根は内向きにきっちりと二つに折り畳まれているので葉の半分の形になって収まっています。
銀色の産毛は葉の裏側だけにあり、折り畳まれた葉は芽吹きの時に徐々に開きます。
葉が大きくなるにつれ、毛の密度が粗くなっていきます。
ホオノキの学名は Magnolia hypoleuca
種小名 hypoleuca は 裏が白い という意味だそうです。
通常の葉の裏も白っぽいですが、幼葉期から芽吹きにかけての天使の羽根の頃の葉の裏の白さは格別です。
▶ 参照:ホオノキの葉の表と裏
大きめで幅広に膨らんでいる冬芽(混芽)の中身はこの通り。
芽鱗の中で違うタイプの冬芽、葉芽と花芽が混在する混芽です。
芽鱗(托葉)を外すと、枝をとり囲むライン状の托葉痕ができました。
まず、右側の冬芽を取り外して様子を確認します。
天使の羽根つきの芽鱗(托葉)を外してみると、小さなとんがり帽子みたいなものが出てきました。
とても小さくて軽いです。内部は蕾のようですが枯れ色です。
幾つかのものの断面を確認したところ、小さなものは枯れ色でしたが、大きなもので確認すると瑞々しく、蕾の形態をしていました。
ということでこの冬芽は花芽ということが判明しました。
左側部分の芽鱗(托葉)を外した中身はこの通り。
合着した托葉を開いて、中を展開してみると、葉芽でした。
托葉と天使の羽根のセットが交互に格納されています。
セットになった托葉と天使の羽根を1組ずつ外しながら中身を確認してみると、中心部まで天使の羽根が詰まっています。
以上の確認により、幅広で大きめの冬芽は混芽であることが判明。
芽吹きの頃の混芽内部の様子です。かなり大きく膨らんで淡く色づいています。
革質の芽鱗のようだった托葉も膜質に美しく変貌しています。
外側の托葉を外したところ。
托葉に合着していた葉芽を外して、3つのパーツに分けたところです。
このパーツの中の様子は、
芽吹きの頃の混芽内の葉芽の様子。
被膜状の托葉に包まれています。
葉芽の外側の托葉を開いてみると、小さな天使の羽根が入っています。
葉芽の内部を展開してみると、托葉と天使の羽根が幾重にも重なっていました。
このパーツのあった場所は、
芽吹きの頃の被膜状の托葉を外した混芽内の花芽の様子。
花芽を縦に切断してみると、花被と雄しべと雌しべらしきものが入っていました。
雄しべの赤紫色の部分が花糸、白い部分が葯となるようです。
雄しべの内側に雌しべがついていました。
花芽内部の縦断面を見ると、花軸に雌しべが密着していて、その周りを雄しべが取り囲んでいます。
カットすると瞬時に褐色に変色してしまいました。
混芽は花になるためのパーツセット一式と第2段の葉芽が内包されているようで単独の葉芽より複雑です。
このパーツのあった場所は、
冬芽さん、せっかくキビシイ冬を越えてきたのにゴメンナサイ。
申し訳なく複雑な思いで冬芽の中を確認しましたが、振り返ると、タラの芽の場合は罪悪感もなく食べていました。!?? ブロッコリーなんて最たるもの。思い出したら、きりがありません。(笑)
ホオノキの冬芽からはガリのような良い香りがしました。
ドライフラワー状態となった冬芽を観察してみました。
(乾燥より3年以上経過したもの)
冬芽を包む芽鱗は2枚の托葉と葉柄が合着したものでキャップ状。
この細長いタイプの冬芽は葉芽。
(芽鱗の長さは約5cm)
▲片側の芽鱗合着部の下に葉柄だけが合着して、葉身の部分が脱落したような形跡があります。
▲芽鱗が開きかけた時に乾燥させたホオノキの冬芽です。
▲中にあった天使の羽根の葉身部は葉柄のように合着していないため、外れています。中も冬芽を包む外側の芽鱗と同じ構造です。
▲裏側の合着部分も同様です。
芽鱗につく幼葉は退化状態の小さな葉で不要なため脱落したのだと思われます。
芽鱗の中を見てみます。片側の芽鱗を外すと、小さめでやや汚れた天使の羽根が姿を現しました。
▲もろくて、葉身部が托葉からすぐ脱落してしまいました。
▲表側はやや傷んでいますが、裏側はキレイです。
さらに、内側の芽鱗のような托葉を外してみます。
▲芽鱗や托葉は乾燥して木質化していますが合着部にカッターでそっと触れると簡単に開き、幼芽らしき色のものが見えます。
▲慎重に内側の芽鱗を外すと、今度は先程より大きくて綺麗な天使の羽根が姿を見せました。
▲芽鱗はパリパリ割れて剥がしにくいですが天使の羽根はキレイな状態で残っていました。
天使の羽根は若干淡い黄色から黄緑色がかっています。
乾燥冬芽の中の様子は、
▲ 枝は乾燥により水分が抜けて、皺がよっています。
3年前に押し葉にした天使の羽根。
現在もまだ綺麗なままです。
乾燥から3年以上経つドライフラワー状態の冬芽の中を見てみました。芽鱗がめくれかかって、やや小さめの冬芽です。(芽鱗の長さは約3.7cm)
▲幼葉がついているようです。
▲芽鱗を外すと、思いがけず大きめできれいな天使の羽根が出現。
(葉身は約2.8cm)
▲続けて芽鱗状の托葉を外すと、同じような天使の羽根がありました。
▲さらに続けて托葉を外すと、同じような天使の羽根が入っています。
芽鱗のような厚さと堅さの托葉は外側の2層ぐらいまでで、中になるにつれて托葉は薄くて破れやすい膜質となっています。(ピ ーナッツの皮と似た雰囲気。)
▲マトリョーシカみたいに重なって天使の羽根が9枚入っているのを確認できました。
▲一番中心部のものは3mmぐらいの大きさで、中は確認できませんでした。これらの葉が重ならないように輪生状に展開するわけですね。
ホオノキの冬芽のアウターシェルである芽鱗は優秀な代物で、数年経ても中の天使の羽根を保護できるほどで、ちょっとしたタイムカプセルになることがわかりました。
天使の羽根はこのように大事に護られ、美しい托葉と共に羽化するかのように葉を展開しながら芽吹くことができるのですね。
また何年後かに開けて中を確認してみたいと思います。
銀色に光る新葉とサンゴ色の彩りが美しいホオノキの芽吹きは4月中旬頃に見られます。
サンゴ色の葉のように見える膜質のものは托葉。芽生えのときに紫外線などから若葉を保護する役割をしています。花のような美しさです。
冬芽の中では芽鱗のようだった托葉が蝶の羽化のように美しく変身するのには驚きです。
若葉を一枚ずつラッピングするかのようにして托葉は芽吹きの頃の若葉を守っています。
托葉は葉の内側にセットでついていて、葉の生長と共に質感や大きさを変え、か弱い新葉を護ります。
冬に芽鱗として寒さや乾燥から幼葉を守り、芽吹きの頃には大きな赤い膜質の覆いとなって紫外線や虫、風、温度ストレスなどから若葉を守る重責を担っているようです。
托葉は葉の展開を終えると潔く落ちてしまいます。
若葉の葉柄基部に残る托葉痕
ホオノキの若葉の葉柄基部の内側に托葉痕が確認できます。
ホオノキの葉は輪生状の互生で、その中央から新梢が伸び始めています。
冬芽の芽鱗を脱ぎ捨て、羽化したての天使の羽根を広げ、旅立ちの準備をしているかのようなホオノキの芽吹き、期間限定ですが機会があったらご覧になってください。
ホオノキの冬芽や芽吹きについて調べると芽鱗と托葉という名称が同義語のように出てきます。ホオノキの葉の成長を通して、これらの違いを考察してみることにしました。
初夏の新芽
5月上旬の芽吹き後、枝先に放射状に集まった葉の展開が終わり、葉の縁が波打つ程大きくなり、花も咲き始めます。
5月下旬には葉の展開後に伸びる、第2段の新芽が姿を出しています。
※新芽という言葉が適しているか分かりませんが、そう表現させていただきます。
大きく育った葉が光合成で産出したエネルギーを利用して、発射される2段ロケットみたいな新芽の様子を見ると、基本構造は冬芽と同じように見えます。
若葉色の新芽は2枚の膜質の托葉と葉柄が合着したキャップ状のものに包まれています。
冬芽は冬の寒さや乾燥など生育に不適な時期を凌ぐための休眠芽のことです。
芽鱗は休眠芽の外側を覆う鱗状の小片で葉や葉の一部が変形したものである、と考えると休眠芽でない芽は芽鱗を持たないことになります。
ホオノキの場合は托葉が変化して芽鱗の役割を果たしていると考えると、成長期の芽は托葉に包まれている、という表記をすることにしました。
一番外側の新葉は不要のため、葉身部は退化したか、ごく小さいものになっているようで、葉軸のみが残っています。
▲ 葉の展開後、托葉が随時脱落しています。中央から新梢が伸び始めています。
▲ 新葉は天使の羽根とはいかないですが、白い産毛に覆われ、ソフトタッチで、相変わらず、膜質の托葉にガードさてています。
▲ 2段ロケットとなる新梢は既に展葉した葉に影を作らないように、できるだけ長く枝を伸ばしてから葉を展開するために、グングンと上へと伸びていくようです。
▲ さすがに、大きな葉になるだけあって、グイグイ伸びています。
この頃の托葉は若葉色で、芽の成長に合わせて大きくなっています。
▲ 新芽の芽鱗にあたる一番外側の托葉についた葉は成長せず、相対的にとても小さく見えます。
※葉軸部分は托葉の成長に伴い、一緒に長く伸びています。
▲ 紫外線の強さ等、葉の生育環境によって托葉の色は変化して適用しているようです。
▲ 大きな若葉がダイナミックに展開しているところです。
夏から秋にかけての新芽
夏の終わり頃になると、ホオノキは翌年の春に向けて冬芽形成の準備をします。
初夏の頃のような勢いはなくなり、形成されていた新芽は大きな外見的変化が見られせん。
勢いよく育った形跡か、葉柄の間隔が広がっています。
新芽のキャップとなっている托葉は合着したまま開きません。
こちらは10月中旬の混芽です。
季節の移り変わりに合わせ、防寒と乾燥に耐えられるように芽鱗としての役割を担うように質を変化させていると思われます。
秋から冬にかけての新芽
11月下旬、落葉後の冬芽の様子。
本格的な寒さを前にして、乾燥した托葉は芽鱗へと質を変化させているようです。
おそらく、内部の托葉も同様に質を変化させて幼葉を護る構造になって適応していくのだと思われます。
托葉は越冬時には革質の状態の芽鱗となり、芽吹きの頃には柔らかな膜質状態に変化して、随時新葉を保護しているようです。
以上の考察から、アウターシェルを芽鱗、インナーシェルは托葉という表記にしてありますが、専門家ではないのでご了承ください。
ホオノキは樹高が30mになることもある高木です。大きな葉は枝先に集まって放射状に互生します。
新緑の頃に下から見上げると、光を通して葉が万華鏡を覗いた時のように輝いて見えます。
芽吹きを終えた頃は萌黄色で、しなやかな質感が魅力的。やがてツヤのある濃い緑色になり、フチが波打つほどに大きな葉になります。
ホオノキは他の植物に対して阻害的な何らかの作用を及ぼす他感作用(アレロパシー)を示すことが知られています。
そのためか、他の植物に邪魔されずに天高くそびえ、日光を独り占めするかのようにソーラーパネルの如く葉を広げます。
どの葉にもできるだけ多くの陽の光がキャッチできるように樹高を高く高く伸ばして、なるべく葉が重ならないように展葉します。
うちわみたいな大きなホオノキの葉は風が吹くと、打ち寄せる波のようにダイナミックに揺れます。
風と葉の織りなす音が爽やかで、山の中なのに海にいるような不思議な気分がします。
5月下旬に見かけた新たな葉の展開は強烈な陽射しのせいか、木の最上部辺りの新葉がオレンジ色を帯びて綺麗でした。
そんな強い紫外線環境下で生長することを選択したからこそ、芽吹きの頃の弱い新芽を守る紫外線防御対策として、過剰包装にも見受けられる淡いピンク色の托葉が必須アイテムになったのだと考えられます。
新葉がオレンジ色に変化しているのもソーラーパネルを健全に維持するための対策だと思われます。
葉の色はオレンジ色からピンク色を帯びたものまで変化があります。
葉の裏は革質で、産毛が無いように見えます。
秋が深まると、葉は黄色から褐色になり、冷え込みが厳しくなると落葉します。
地面に覆い尽くされた大きな乾燥した葉は踏みしめると派手にガサゴソと大きな音がして、冬の訪れを感じさせます。
また、ホオノキがその附近にあったことを気づかせてくれます。
ホオノキの葉は30〜40cmにもなる大きな葉で、芳香と殺菌作用まであるので、昔から食器代わりや食材の梱包材として使われてきました。
ホオノキは 裏が白いマグノリア という学名 Magnolia hypoleuca を持つだけあって葉の裏は白っぽい色をしています。
また、燃えにくくて良い香りもあるということで、朴葉味噌や朴葉焼きに利用されてきたそうです。
材は堅くて水にも強いため、まな板や包丁の柄、下駄の歯の部分などにも使われたという事ですから人との関わりが深い木だったようです。
ホオノキは花も大きく、初夏に直径15~20cmの存在感のある白い花を枝先に咲かせます。
花は桜のように一斉に咲いて散るのではなく、初夏の間にずれずれに咲くので、いろいろな状態の花が混在します。
参照:▶︎ ホオノキの花の開花過程
遠目で見ると、雌しべが赤くなった白いホオノキの花はイチゴがのったショートケーキみたいな色合いで、なんだか素敵です。
しかし、高いところに花をつけるので、間近で見ることは難しいです。
花被片は内側の6~9枚は花弁状で、外側の淡緑色で一部紅色を帯びている3枚は萼状となっています。
眠りからさめて、夢見るように咲くホオノキの花。
花の中央の円錐状の上部に雌しべ、下部に雄しべが密生しています。
雄しべの花糸は鮮紅色を帯び、葯は黄白色です。
ホオノキの花はハクモクレンと似た乳白色の大きな花で遠目でも目立ちます。
晴れた日に近寄りがたい高い場所に咲き、強い芳香を放つ様子は崇高で高嶺の花といった趣です。
そんなホオノキの花は一億年程前、広葉樹が地球に出現した頃の初期の姿を留める原始的な花なのだとか。
その特徴として、雌しべや雄しべの一つ一つが、松かさのようにらせん状に並んで葉の形を残していることや、蜜を作らずに、香りで虫を誘うこと等が挙げられています。
東南アジアの仏像の頭を想像させるような形の雌しべ。雄性期を終えた雄しべは脱落しています。
受粉についてはコチラ
参照:▶︎ ホオノキの花の受粉
純白の綿帽子姿の花嫁みたいに、美しいお顔を覗かせるホオノキの花。
紅白の雄しべの色合いがおめでたい雰囲気を醸し出しています。
一旦開いた雌しべと花弁を閉じた花が再び花弁を開き、これから雄しべを開いて花粉を出し始める段階だと思われます。
花の秘密をそうっと見せてもらったような感じでした。
ホオノキの花は時差式で性別が変わる雌性先熟タイプの両性花です。
写真上の花弁が開いて華やかに見えるのが雄性期、下の花弁が遠慮がちに開いているのが雌性期の花です。
蜜を出さないホオノキの花は香りで虫を誘うタイプの虫媒花。
マルハナバチ、ハナアブ、甲虫等の花粉を食べる虫が訪花します。
雄しべは花粉を出すともろくなってわずかな力でポロポロと脱落してしまいます。
開花1日目は花弁(花弁状花被片)が控えめに開きます。
この時、内部では雌しべが成熟して受粉が可能となっている雌性期で、期間は数時間から半日程度と比較的短いです。
芽鱗が外れかかった時には既に甘い香りを放ち始めています。
萼(萼状花被片)が開き始めた頃にはさらに強い香りを放出します。
開花は天候にもよりますが、晴れた日の午後からが多く見られました。
花弁状花被片が開くと、強烈な香りを放ちます。
ホオノキの花は初開花から雌性期の間が最も香りが強いです。
大きなホオノキは広々とした高所に花を咲かせ、雌性期間は半日以下と短く、さらに花粉も蜜も無いので、強い香りは広範囲の昆虫を惹きつけるためのものだと思われます。
ホオノキの花の芳香はベンゼノイドが主成分なんだそうです。
成熟した柱頭は反り返り、雄しべは固く閉じたままです。
乳頭状突起と思われる花粉が付着しやすい構造になっています。
光っているのはおそらく芳香物質でペタペタとして粘性があります。
その日の夕暮れ頃から花弁状花被片を閉じ始め、香りがやわらぎます。
夜になると眠るように花弁状花被片を閉じます。
翌朝になっても花弁状花被片は閉じたままです。
天候が良ければ再び花弁状花被片を開き、授粉昆虫の活動温度に合わせて開花する作戦なのでしょう。
2回めの開花時には雌しべの柱頭が固く閉じられていて雌性期を終えているようです。
そして、交代するようなタイミングで雄性期となり、成熟した多数の雄しべが花粉を出し始めて昆虫に授粉を委ねます。
雄性期になって花粉を出し始めた花にさっそくアオハムシダマシと思われる緑色の金属光沢が美しいお客様がありました。
小忙しく雄しべの周りを移動して体は花粉まみれです。この状態でより強い芳香を放つ雌性期の花へと移動して授粉が行われるんですね。
雄性期も短く2日程度です。
雄性期前に萎れた花弁状花被片の内側にはペタペタとした強い芳香成分が艶やかに光っていました。これは数日間香っていました。
花粉を出している雄性期の花は再び花被片を閉じます。これは芳香と花粉の効力を温存するためだと思われ、脱落しかかった雄しべの花粉を求めてハチがやってきました。
その後、花弁状花被片を大きく開くと受粉能力を無くした雄しべはバラバラと落ちてしまいます。
開花期は通常3〜4日程度ですが、天候に左右され、悪天候時は1週間近くになることもあるそうです。
このように、雌雄が時期をずらして成熟するのは、自家受粉を避ける目的だと言われています。
同一木の花による受粉もしますが、発芽・生存率が低くなるそうです。
▲木の枝先に紫褐色の芽鱗のコートに身を包んだホオノキの花の蕾。
▲まだまだ堅そうな蕾。
▲大きく膨らんで、ようやくコートを脱ぎ始めます。
▲コートの中にはピンク色を帯びているふっくらとした蕾。
▲蕾の外側を覆う萼状花被片は個体差があるようで、こちらはうっすらと淡緑色で、わずかにピンク色を帯びています。
▲萼状花被片が開くと重なった乳白色の白い玉のような花弁状花被片が姿を現します。
▲開花1日目、雄しべを護るように花弁状花被片は大きく開かず、中にある雌しべの柱頭だけが開いて受粉態勢となります。
▲開花1日目の雌性期を過ぎると、花弁状花被片を一旦閉じて次の日に再び開き始めます。
▲開花2日目に再び花弁状花被片を開き始めたホオノキの花は雄性期を迎えたところで、雌しべは閉じて軸に密着しています。
▲雄しべは下から上の方へと開いていきます。
▲雄しべが開き始めて葯から花粉が出始めたところ。
雌しべの色も赤みの帯び方に個体差があります。
▲雄しべから花粉が出る終わる頃には葯が褐色を帯びてきます。
▲雄しべが一部落ちているのは訪虫があったからだと思われます。
▲雄しべの葯の部分がもさもさした感じになっています。
▲萼弁状花被片の垂れ下がりと弛い花弁状花被片の閉じ方から、花粉を出している雄性期に一旦閉じた花弁状花被片を再び開き始めている状態だと思われます。
▲花弁状花被片の隙間からバラけている雄しべが見えます。
▲この後、花弁状花被片は大きく開いて雄しべは脱落します。
▲乳白色だった花弁状花被片も受粉能力の低下と共に黄色っぽく変化。
▲花粉も無くなり、雄しべも脱落してきて雄性期も終わったようです。
▲花被片もくたびれて、よれよれ。
▲役目を終え、お疲れの姿。
花の寿命は天候にもよりますが、3〜4日位と短めです。
この後の実についてはコチラ
参照:▶︎ ホオノキの実
ホオノキの蕾をいただいたので近くで花の様子を観察してみました。
午後2時頃に芽鱗が外れました。
午後7時頃に萼が開き始めて午後10時ぐらいまで大きな変化が見られませんでしたが、香りはどんどんと強くなっていきました。
翌日午前10時頃、花弁がゆっくりと開き始めました。
確認するとすでに雌性期を終えていました。
強烈な香りを放っていたものの夜中には開花していなかったので、深夜に雌性期を迎えて開花していたのでしょうか? 確認できなかったのが残念です。
午前10時30分頃には雄しべの様子も見えてきました。
真上から見ると、清楚な色合いと幾何学模様のように整然と並ぶシベの様子がきれいです。
お昼頃になって花弁がそこそ開いてきました。
花粉が出始めてきたようです。
柱頭はしっかり閉じています。
昨夜と比べて、香りの強さはやわらいだものの、換気しないではいられないほどの強烈な甘い香りを放っています。
花弁に滲み出る揮発性の芳香成分は香水の原液のよう。
山や谷や広い野で授粉をしてくれる昆虫たちを高い枝先まで惹き寄せる必須アイテムとして、これほどまでに強い香りを放つのでしょう。
葯から花粉も出始めました。
午後3時頃になって、花弁がさらに開いてきました。
花粉が全体的に出ています。
午後8時頃、花弁はやや垂れ下がり気味で、閉じる気配はありません。
香りも穏やかになってきました。
雄性期の終わりが近づいているようで、葯も褐色を帯びてきました。
花粉はたくさん出ています。
翌日の昼頃から花弁が垂れ下がって香りも激減しましたが、花粉はまだ効力がありそうに見えます。
夕方から翌朝にかけて花弁は褐色になり、傷んで萎れていきました。
ホオノキの花の雌性期は短いので、見る機会は少ないですが、紅色が濃いめで美しい雌しべの花を見ることができました。
この頃の花は強い芳香を放ちます。
ホオノキの花の花弁は中華料理等で見かける散蓮華(チリレンゲ)と呼ばれる陶製のさじに似ています。
散蓮華は散った蓮の花弁に似ていることが名前の由来なんだとか。
白くて、大きな蓮(ハス)の花弁を見れば一目瞭然。
ホオノキは、木に咲く蓮という名前のモクレン属の花だけあって、蓮と雰囲気が似ています。
モクレン属の中でもホオノキの花こそが木蓮の名が相応しいような気がしてなりません。
ハスの花のしべ部分、特に雌しべの雰囲気は大きく異なりますが、ハスの花もホオノキの花も花弁が散る前に、役目を終えた雄しべを花弁に受け止めている姿がよく似て、散蓮華です。
散蓮華に盛られた花粉付きの雄しべは授粉甲虫の餌場にもなりそう。
花粉の有効期間は3日間、花弁上は脱落した雄しべの敗者復活戦舞台が開設されているようでもあります。
ハスの実
余談になりますが、ハスの名前の由来はハチス(蜂巣)で、花の中央にある花托(かたく)が蜂の巣に似ているからだと言われています。
蜂の子が入っているみたいになっています。
シャワーやジョウロの注ぎ口みたいな面白い形です。
雄しべと花弁が脱落して、すっきりと筆の様な姿に。
受粉できたのか雌しべだった子房が膨らんでいます。
大きいので、奇妙さが際立ちます。
閉じていた雌しべだった所が開いてブラシとか毛虫っぽい感じになっています。
ツンツクとした奇妙な未熟果。
やがて、袋果が多数集まる集合果となります。
ホオノキの実の赤ちゃんが落果しているのを時折見かけます。
7月上旬、ホオノキの未熟果が落ちていたので拾ってみました。
あの冬芽から花が咲き、このような姿になったんですね。
9月中旬、赤くなった実がやや傷んだ秋の葉の中で目立っていました。
ホオノキの袋果は成熟すると、縫合線のような心皮の合わせ目から裂開して朱色の種子が姿を現します。
画像の出典:Wikimedia Commons
ホオノキの種子は3層構造。
外層は朱色、中層は果肉質で厚くて白っぽい色をしています。
内層は黒褐色で堅いです。
種子についている白い糸状のものは珠柄といって臍の緒のような役割をしているもので、モクレン科樹種に見られる特徴です。
画像の出典:Wikimedia Commons
これが袋果に繋がっているので、鳥が見つけて食べてくれるまでの間、地面に落ちずに待機できる命綱的な役割をしているよう。
目立つ朱色の種子に惹き寄せられたキツツキ類や、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラなどの鳥は白い果肉状の中層部を食べますが、内層部の胚を含んだ黒褐色の種子を消化しないまま排泄します。結果、種子は広範囲に散布されます。
10月下旬、地面に落ちていた果実は木質化していました。
ホオノキの種子は鳥に好まれるだけあって、落ちている実に種子は無いものが多いです。
強く啄ばまれたような跡の残る実。
種子がわずかに残っている実もありました。
種子を包む袋果は木彫のよう。
奥に入ったままの種子は取り出すのに一苦労。食べられずに残っているのも納得。
割ると生姜のガリような芳香があります。冬芽の中にも似たような香りがあったのを思い出しました。
取り出す時に随分と傷をつけてしまいましたが、白い糸のような珠柄がついたままの種子もありました。
珠柄は内層の黒褐色の種子にもつながっていました。
内層の黒褐色の種子の表と裏。
取り出した種子の種皮もまた木質で堅いです。
中身はお米のような質感の胚が入っていました。
このページは「なんだろな」の中の
「天使の羽根を隠し持つホオノキ」