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大仁田山周辺 季節の植物
ユキノシタ

大仁田山周辺の奥武蔵で見られた季節を彩る植物を紹介しています。

美しいユキノシタの花の群生

ユキノシタは5月から6月にかけて白く美しい可憐なを多数咲かせます。

湿り気の多い岩場などの半日陰の環境で育ち、寒さにも強い丈夫な半常緑植物で、昔から民間薬として利用されてきた身近な植物です。

美しいユキノシタの花

そんなユキノシタが咲くまでの過程や受粉に関するの構造等について記載しています。

岩に群生するユキノシタの花

ユキノシタの名前の由来のひとつに白いがちらちら降る雪のように見えるという牧野富太郎博士の説がありますが、時としてそのように感じる光景に出会うことがあります。

きれいなユキノシタの花の群生

名前には諸説があり、緑色のに白斑があるのを表面に雪が積もった状態に見立てたとか、寒さに強く、雪の下でもが枯れずに残るから、とも言われています。

日陰でグランドカバー化するユキノシタの葉
緑色に白い筋状の斑の入るユキノシタの葉

その他、花の下側の2枚の長い花弁を「雪の舌」に見立てたという説もあります。

咲きたてのユキノシタの花

ユキノシタ科 ユキノシタ属

学名:Saxifraga stolonifera

英名:Strawberry Geranium


参照:大仁田山周辺 季節の植物 ▶

ユキノシタの花

岩場に咲き誇るユキノシタの花

ユキノシタの装いは白地にピンクと黄色で彩られた3枚の華やかな花弁と2枚の純白の長い花弁。

可憐に咲くユキノシタの花
可憐なユキノシタの花

ピンク色の濃さには個体差がありますが、多くは淡い色で濃いめは珍しい。

美しいユキノシタの花
花粉のとれたユキノシタの花
美しく花を咲かせるユキノシタの花茎
白い花弁が天女の羽衣のように優雅に揺れるユキノシタの花

風に優雅に揺れ動く姿は羽衣を纏った天女の舞のよう。

風に優雅に揺れるユキノシタの花

群生すると賑やかで雑然とした雰囲気ですが、近くで見ると、端正で綺麗なスッキリとしたです。

きれいななユキノシタの花

ユキノシタにはに紫色の色素が少ないタイプもあり、ハルユキノシタに雰囲気が似ています。

ピンク色の少ないユキノシタの花

こちらのタイプも爽やかで素敵です。

ピンク色の少ないユキノシタの花 拡大
花粉の出終わったユキノシタ
ピンク色の少ないユキノシタの花の群生

ハルユキノシタの花期は4〜5月での表面は光沢のある緑色で斑が無いのが特徴です。

ユキノシタの花の構造

咲きたての美しいユキノシタの花

の中央で黄色く雌しべの基部を取り囲むように目立っているものは花盤。表面全体が蜜腺となってを分泌して授粉昆虫を呼び寄せます。

優雅なユキノシタの花 拡大

がきらきらと光っています。

正面から見たユキノシタの花 拡大

雄しべの位置は花弁とほぼ同じ平面の場合が多いようですがを求めて花盤を訪れた昆虫に効率よく花粉をつけるように、が開いて花粉を出す時には10本の雄しべは時間差で前方へ移動して位置を変化させているようです。

花粉のついた雄しべを前方に出すユキノシタの花
葯から花粉を出すユキノシタの花
ユキノシタの花の葯から花粉が出ているところ

を上から見ると、ラジオ体操しているみたいで微笑ましいです。

花粉のついた雄しべを前方に出すユキノシタの花を上から見たところ

花粉を放出したの様子。

ユキノシタの雌しべの葯

花粉が出終わった頃、雌しべが伸びて2つの花柱が離れていきます。

ユキノシタの雌しべと雄しべ

柱頭が輝くころには雄しべは動かなくなります。

雄蕊から葯が落ちて雌性期のユキノシタの花
雄性期から雌性期のユキノシタの花
雌性期のユキノシタの花の柱頭
柱頭が輝くユキノシタの花
雌性期のユキノシタの花
花弁を閉じ始めた雌性期のユキノシタの花
花弁を閉じ始めた雌性期のユキノシタの花の柱頭
雌性期を終えた頃のユキノシタの花
花弁を閉じ始めたのユキノシタの花を横から見たところ

ユキノシタの花 受粉

ユキノシタはハナアブ等によって授粉される虫媒花です。

ヒラタアブの仲間に授粉されるユキノシタ

ここに訪花しているヒラタアブの仲間は植物や野菜の受粉を助け、幼虫の時はアブラムシカイガラムシなどの小さな昆虫を捕食するため、畑の益虫として知られているそうです。

ユキノシタの雄蕊にとまるヒラタアブの仲間

その他にもいろいろな昆虫が訪花して受粉に一役買っているようです。

昆虫はやや日当たりの良い場所の方が活動の適温になるのか、沢沿いなどの冷んやりとした薄暗い場所よりも見かけることが多かったです。

ユキノシタの雄蕊にとまるミドリバエ
ユキノシタの蜜を吸うミドリバエ
ユキノシタの雄蕊にとまるハチかアブの仲間
ユキノシタの蜜を吸うハチかアブの仲間
ユキノシタの蜜を吸う花粉まみれのハチかアブの仲間
ユキノシタの蜜を吸うモンシロチョウ

ユキノシタの花 受粉後

受粉後のユキノシタの様子です。

受粉直後のユキノシタ
受粉後のユキノシタ
受粉後に実のついたユキノシタ
受粉したユキノシタ
受粉後、実のついたユキノシタ

この後、先端が2裂したくちばし状の蒴果となります。

ユキノシタの花茎

ユキノシタは初夏に株の中心から花茎を出します。同じような色で細長く伸びているのは走出枝ランナー)。

ユキノシタの花茎の出現

花茎はびっしりと紅色の毛で覆われてモールみたいです。

出始めたばかりの毛深いユキノシタ花茎

が荒い毛で覆われているのもユキノシタの特徴。

紅色の毛に覆われた出始めたばかりのユキノシタの花茎

先端に花芽がついています

出始めたばかりの毛深いユキノシタの花茎
花茎が伸びて始めたユキノシタ
立ちあがって蕾をつけたユキノシタの花茎
立ちあがって蕾をつけた毛深いユキノシタの花茎

伸びた花茎をつけ、円錐状の集散花序となりますます。

ユキノシタの毛深い蕾

▶ユキノシタの花茎 蕾から開花へ続く

ユキノシタの葉

ユキノシタの新葉

ユキノシタは肉厚で毛が生えていて、形がの耳に似ていることから、漢名では虎耳草コジソウ)と呼ばれ、古くから民間薬として利用されてきました。

毛深いユキノシタの葉

赤味を帯びた筋状の斑入りの虎柄に見えなくもないです。

トラ
トラの耳拡大
出典:Wikimedia Commons
赤みのあるユキノシタの毛深い葉

虎耳草というだけあって、搾り汁はの病気の中耳炎や耳垂れなどにはよく使われていたそうです。その他、抗菌や消炎、抗酸化、解熱・解毒等、美白等の効能が知られています。

岩場に茂るユキノシタの葉

は赤味を帯びたものや、緑色に白い筋状の斑入りのものなどがありますがこれは生育環境によって異なるように見受けられます。

花の咲く頃のユキノシタの毛深い葉の裏

の裏も赤みを帯びたものと帯びないものがあります。

淡い緑色のユキノシタの毛深い葉の裏

の裏も毛が生えています。

緑色のユキノシタの毛深い葉

は食用にもなり、一年中採れる山菜として人々に親しまれてきました。

緑色のユキノシタの毛深い葉 拡大

クセは無く、天ぷらが定番です。

ユキノシタの繁殖

四方八方に伸びたユキノシタのランナー

ユキノシタ種子以外にもランナーと呼ばれる走出枝を出して、その先端に新苗を生ずる栄養繁殖でも増えます。

岩場に紅色の糸状の長いランナーと花茎を出すユキノシタ

葉柄の付け根から伸びた赤い針金のような多数のランナーは四方八方に伸びて、その先に子株を作り、繁殖範囲を広げていきます。

石垣で紅色の糸状の長い走出枝を出すユキノシタに花茎が立ち上がっている
走出枝の先に新しい葉と根を出すユキノシタ
紅色の糸状の長い走出枝を出すユキノシタ

ユキノシタはたくさんの走出枝を出して増えるため、グランドカバーとして日陰で多湿な場所に利用されます。

グランドカバーのように地面を覆う緑色のユキノシタ

ユキノシタの学名は
Saxifraga stoloniferaですが、
属名である saxifraga は、ラテン語で石を砕くという意味で、腎臓結石を溶かす作用があると思われたことに由来するそうです。

岩場の隙間から育つユキノシタ

石積みの割れ目から元気よく自生する様子もやがて岩をゆっくり砕いてしまうような印象があります。

また、種小名 stolonifera は匍匐茎・走出枝をもつという意味だそうです。

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大仁田山周辺 季節の植物 ユキノシタ