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不思議で楽しい植物の世界
ジュズダマ
ムクロジ 番外編
数珠といえば、ジュズダマ
ジュズダマはイネ科の植物で堅くてガラス質の光沢のある壺のような形をした実をつけます。
しかも、軽くて手触りの良いその実はビーズ状で、簡単に穴に紐を通すことができたため、数珠を作るのにピッタリだったと思われます。そこからジュズダマという名前がついたというのが通説です。
かつては、とても身近な植物だったので、腕輪や首飾りを作ったり、実を布の袋に詰め、お手玉にしたりと、子どもにとっては手頃で恰好の素材でした。
数珠の起源とされる
おもしろい木の実 ムクロジの番外編
ムクロジとはまさに数珠つながりのページ
壺のような形をしたジュズダマの実は堅くて、ビーズのように実の中央に糸が通せるほどの穴が開いていますが、この穴は花軸の通り道です。
壷のような実に見えるのは花を包む苞葉鞘(ほうようしょう)。ざっくりいえば、花序のつけ根の葉。
苞葉鞘は苞葉、苞、苞鞘、葉鞘、総苞葉などとも表現されています。
壷状となって大切な花序や種子の元を包み込み、最終的にはホウロウ質の堅牢な壺となって種子を護る役割をします。
壺の中に残る植物片を取り除くと、そこにできた空間はちょうど細い紐を通せるほどの穴となります。
ジュズダマ・ビーズは優しい手触りで、持った時にしっくりと手に馴染みます。そして、長い間、色や形や堅さが変化しない素敵な素材です。
壺の中は種子や花をつけなくなった小穂等がごちゃごちゃと入っているので完全な空洞にするのは手間がかかります。
参照:ジュズダマの壺の中の構造1 ▶
ジュズダマの実は壷のような苞葉鞘の中で熟します。
抜け殻が、菩薩様か観音様のように見えますね。
種子を取り囲む植物片は、退化して結実しない雌花や雄花の穂の軸などの花序や苞です。
参照:ジュズダマの壺の中の構造1 ▶
ロザリオは、カトリック教徒が聖母マリアへの祈りを唱える際に、その回数を数えるために用いる数珠状の祈りの道具。または珠を繰りながら唱える祈りのことを指します。
※数珠もロザリオも起源は同じインドで、祈りの数を数えるための道具といわれています。
首飾りではありません。
宗派を問わずにすべての貧しい人のために尽くした聖人マザー・テレサの使われたロザリオはジュズダマで作られたものとして有名です。
参照:ヨブの涙と呼ばれるジュズダマ ▶
アクセサリー作家をしている友人がジュズダマを使って、ロザリオ風のネックレスをプレゼントしてくれました。ステキなアクセサリーに大変身させたセンスの良さとジュズダマの魅力に感動してしまいました!
学名:Coix lacryma-jobi
ジュズダマ属 ヨブの涙
英名:Job's tears
ヨブとは旧約聖書に登場する信仰の篤い人の名前です。裕福な生活をしていましたが一朝にして全財産と息子7人娘3人を失い、さらに全身に腫瘍を生じさせられるなどして神への信仰心を試されます。さんざんな目に遭いながらも、最終的には神の全能と、神の前の自分の無力を悟り悔い改めたという内容が記されています。
今でも天には、私の保証人がおられます。私を保証してくださる方は高い所におられます。私の友は私をあざけります。しかし、私の目は神に向かって涙を流します。その方が、人のために神にとりなしをしてくださいますように。人の子がその友のために。
ヨブ記 16章19節―21節より
これがヨブの涙という名前の由来だといわれています。
ジュズダマがヨブの涙に見立てられたのは堅い決意の涙がこぼれ落ちるような象徴的な形と質感だったからだと思われます。
マザー・テレサが生涯携えていたというロザリオはヨブの涙であったことは有名です。高価な素材でないところがマザーらしく感じられます。
参照:ロザリオに使われたジュズダマ ▶
こちらは白色系のジュズダマビーズとビーズとメダイとを組み合わせて繋げてみたものです。
白色系の方が涙っぽいですね。
メダイはポルトガル語のメダルのこと。
円形の薄い小さめの金属の表面や裏面にキリストや聖母マリアや聖人等が刻まれたキリスト教の聖品です。
陶磁器やタカラガイのようにきれいなジュズダマ。褐色系が多いですが、色柄のバリエーションは豊富。
中身を取り除いたジュズダマの穴に細い紐やテグス等を通して結ぶだけで素朴なアクセサリーを簡単に作ることができます。
ゴムテグスは伸び縮みするので扱いやすく、ブレスレットとして使う時に装着が簡単なのでおすすめです。
これぞジュズ・ブレスレット。(笑)
ジュズダマを繋ぐ長さはお好みで。
実を繋げ終わったら、ゴムテグスの両端を左側が上になるように固結びした後で、右側が上になるようにして、もう一度固結びしたら、両端を強くひっぱって結ぶとほどけなくなります。
結び目がほどけないように接着剤を使う方法もあります。
結び目の端の余った部分は穴に入れて隠します。
ガラスビーズやメタルビーズなどを混ぜて繋げると、また違った印象のアクセサリーになります。
ゴムテグスを使えば簡単に作り直しができるのでいろいろと試してみるのも楽しいです。
ムクロジとの組み合わせも良い感じとなりました。
丸みを帯びて貝の中でも触り心地の良いタカラガイ(宝貝)。
ジュズダマと雰囲気が似ています。
古代には貨幣としても用いられ、装身具、儀式的な用途にも使用されていました。
子安貝とも呼ばれ、安産のお守りとされていて、竹取物語にはツバメが産むという不思議な貝 燕の子安貝として登場します。
民俗学者の柳田國男はジュズダマという名前は仏教の数珠から来たのではなく、古名のズズダマ・ツシダマに由来するものであり、ジュズダマの実と同様に、糸に通して首にかけていた宝貝の名称ツシヤの起こりと関係があるのではないかと推察しています。そして、ジュズダマは数珠のように手首にかけるものではなく、首から長く垂らすものであったと考察しています。
参照:「人とズズダマ」柳田國男著 1952
ジュズダマはアジア原産のイネ科に属する単子葉の多年草ですが、日本では一年草。日本には稲などと一緒に渡来したと言われています。
根元で枝分かれした多数の茎が束になって草丈は1〜2m位になり、葉は茎の先の方までつきます。
かつてはあぜ道などでよく見かけたジュズダマですが、最近は見る機会が少なくなりました。
水害の多い昨今、大水にさらされても生き残ることのできるジュズダマを水難除けの御守りとして持つのも良いかもしれませんね。
また、ジュズダマはいろいろな薬効もあり実質ご利益のある植物です。
ハトムギ同様、果実は消炎・利尿・いぼ取りなどに用いられ、根は神経痛・肩こり・リウマチなどに用いられるそうです。ですが、殻が堅いのが難点で、使う時には殻付きのまま砕いて使ったそうです。
生薬名:実 川穀(せんこく)
根 川穀根(せんこくこん)
因みにハトムギはジュズダマの栽培種で堅い殻を持ちません。
ジュズダマの花序は上向きにつき、ハトムギの花序は垂れ下がるという違いがあります。
ジュズダマは、束になった茎の葉のつけ根に花穂(かすい)を伸ばし、夏から秋にかけて次々と多数の花を咲かせます。雌雄同株。
花は風媒花で、雌花と雄花があり、雄花の花序は短縮して重なり合った鱗片の間に、花が収まるという小穂の形をしていて、苞葉鞘から外に出て垂れ下がり、風によって花粉を散らす仕組みとなっています。
雌花は緑色の壺のような苞葉鞘の中にあって、細かな毛に覆われた白い2本の柱頭だけを外に出して、花粉をキャッチします。
雌性先熟で、雌性期は雄花序の包穎(鱗片状の包葉)は閉じています。その時の内部の様子。葯は半透明の被膜状の鱗片に包まれています。
柱頭が萎れると、雄花序の包穎が開いて葯が姿を現し、花粉を出し始めます。
雌花は受粉すると、柱頭がしおれ、種子は苞葉鞘の中で成熟します。
実が成熟するにつれ、壺状の苞葉鞘は色も質感も変化して堅いホウロウ質となっていきます。
完熟すると壺状の実は脱落します。
成長中のジュズダマの壺の中がどのようになっているか見てみました。
ジュズダマは雌花の入っている壺と、壺から出た雄花の穂でワンセットの花となっています。
雄花序の花軸側の壺の一部を剥いたところです。
雄花序の花軸が中央を貫いています。その両側にある長ネギみたいなものは退化した雌花です。
ジュズダマ・ビーズの穴はこれらが抜けてできるのですね。
雄花穂に対して花軸が細すぎる感じがしますが、元々根本は壺で護られているし、風媒花で風で揺れなければならないので、このくらいの太さが適正なのでしょうね。
壺から中身を取り出してみました。
壺の中には3つの雌花が入っています。
そのうち1つだけが花柱をつけた受粉可能な雌花(稔実小穂)で、他2つは退化した雌花(不稔小穂)です。
雄花序の花軸と反対側の壺の表面を外したところ。玉ねぎみたいに見えます。
柱頭付近を拡大。中身は鱗片と思われる薄皮に包まれています。
壺の中に入っていたパーツ。
一番中央には半透明の鱗片に大事に包まれた子房がありました。
※専門家ではないので、その点ご了承ください。
雄花序が苞葉鞘から出始めて雌しべの柱頭が褐色に変化をしている未熟なジュズダマの壺。宝珠を思わせる仏教的な形をしています。
壺の外側を剥がした中のようす。
白い鱗片に包まれて玉ねぎみたいな雰囲気です。
雄花序の花軸と雌花の柱頭と花柱のようす。
雄花序を外したところ。
キャップのように子房に被っていた花柱部分。
未熟なジュズダマの壺の中の様子。
膨らんでいる雌花には5枚の鱗片に包まれた子房があります。
参考までに、壺になる前の苞葉鞘。
ジュズダマは、丸い壺型に変形した苞葉鞘の中に3つの雌花が入っていて雌小穂群を形成しています。
3つの雌花のうち1つは柱頭がついた種子をつける花で、2つは種子をつけない退化した雌花(小穂)。
退化した雌花とはどんな姿をしているのでしょう? 壷の外側を外して雌花を確認してみました。
退化した雌花の先端にある鱗片状のものは痕跡的になった小花のよう。
参照:ジュズダマ Coix lacryma-jobi L. ▶
種子をつける雌花は子房が入っていているので球根状ですが、退化した雌花はスレンダーです。
苞葉鞘は腰痛コルセットみたいに雄花序の花軸を支えているのですね。苞葉鞘を外した雄花序はだらんと垂れ下がって頼りなげ。
長ネギみたいなやや太めの退化した雌花は壺の中で脇士のように、やや細めの雄花序の花軸を支えているように見えます。また、壺の中で緩衝材的な役割をして種子を乾燥や寒さから護っているのかもしれません。
ジュズダマは水に浮いて散布されることから、退化した雌花にはある程度の期間は水などが入らないようにコルク栓のような蓋の役割をしているとも考えられます。
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ジュズダマ」