チャレンジコーナー
カリンを食べたい!
魅惑の果実 カリン
魅惑の果実 カリン
秋から初冬にかけてカリンの木にはたくさんの黄色い実がつきます。
果実はやや大きめで、堅くて洋梨を寸胴にしたような形で、明るい黄色の表面はちょっとペトペトしていて魅惑的な甘い芳香があります。
この香りの成分はトリテルペン化合物によるもので、細菌やウイルスの増殖するのを妨いだり、炎症を和らげる効果があるのだそうです。
折しもカリンの実の旬の時期は乾燥気味。部屋や車に置いて風邪予防を兼ねた薬用芳香剤として有効活用するのも良いですね。
魅惑的な芳香を思いっきり満喫して癒やされてみてはいかがでしょう?
ある冬の山歩きをしている時です。
甘い芳香に導かれて歩いてみると、カリンの木の下に黄色の果実がたくさん落ちていました。
木の下に落ちた果実を拾ってみると、完熟した梅と桃のような何とも言えない魅惑的な香りにうっとりとしてしまいました。
その木の持ち主の方がおっしゃるには、カリンの実を部屋や車に置いて芳香剤代わりにすると良い、ということで、親切にもたくさん持たせてくださいました。
家に持ち帰って置いてみたところ、部屋中に甘くて素敵な香りが漂い、大満足。
以来、牛に引かれて善光寺参りではないですが、香りに惹かれてカリンの果実参り状態となり、毎年カリンの実の香る季節を心待ちにするようになりました。
カリンは堅くて渋みがあるため生食できないと言われている果実です。
大量に実った果実が枝に残ったままですし、落ちた果実も長い間木の下に残っているので、鳥や獣にも食べられないようです。
しかし、あまりに良い香りのため、幼い頃にフルーティーな消しゴムをかじってみたくなったのと同じような衝動にかられました。
試しに一口かじってみたところ猛烈に渋いです。舌にべっとりと渋みがコーティングされてしまったような感触です。とても酸っぱく、食感もザラザラとして良くありません。
生食できないカリンは独特の風味や薬用成分を抽出するためにハチミツ漬けや果実酒などにして、エキスを利用してきた果実です。
また、果実を食べるためには強烈な渋み故に長時間糖分にさらしたり、煮込んだりと、時間と労力を必要とする果実でもありました。
カリンのハチミツ漬けは渋みも苦味も全く無く、とても美味しいシロップとなり、おすすめメニューですが、仕込んでから食べられるまで最低1ヶ月半程かかる上に、発酵防止のための管理も要します。
カリン酒は薬効があり、長期保存できる伝統的な利用方法ですが、美味しく飲めるまでに半年から1年近くの長い時間を要します。
調べてみると渋みの正体はタンニンでした。このタンニンさえうまく取り除く事ができればおいしくカリンを食べる事ができるのでは?…そう考えて渋抜き方法を模索し、実験してみたところ、ついに短時間で渋抜きをする方法が見つかりました。
この方法ならば、渋戻りもないのでお試しください。
渋くて簡単に食べられないとされていたカリンを超短時間で渋抜きする方法を考案しました。
ざっくり言えば、細かくしたカリンを牛乳や豆乳で煮詰めるだけ。
同時に、砂糖やハチミツをお好みで加えておくと、すぐ食べられます。
また、強い酸味もマイルドになって食べやすくなります。
この方法を使えば、カリンをお手軽においしいおやつに大変身させる事ができます!
カリンの渋みの原因であるタンニンは熱を加えてタンパク質と化合させる事で渋み問題が解消されます。
そこで、タンニンとタンパク質がより結合しやすくなるようにカリンをすりおろしたり、スライスして表面積を増やします。
次に牛乳などのタンパク質と一緒に熱を加えます。
たったこれだけで、カリンの渋みが超短時間に無くなります。
カリンのおやつレシピを大公開していますので、カリンの実を簡単に食べたいと思っていた方必見!
堅くて転がりやすいカリンを切るにはちょっとしたコツがあります。
切り時は黄色く完熟した頃です。
カリンをラップに包んで電子レンジ(600W)で1分ほど加熱、または、鍋の中に水を入れたまま強火で加熱、沸騰してから5分ほど湯がくなど、温めることで切りやすくなるそうです。
① カリンの両端を切り落とします。
(実の頭とお尻は割と切りやすい)
(この後に皮を剥いても良い)
② カリンを立てて縦に切ります。
(平らにカリンを立てると安定)
③ さらにカリンを縦に切り、リンゴの芯を取る要領で種子の部分と切り分けます。
④ カリンの皮を剥きます。
⑤ 傷んだ部分を取り除きます。
カリンの茶色い部分や虫食い部分を残すと味が悪くなるので、もったいなくてもできるだけ取り除くこと。
⑥ カットした後は酸化しやすいので薄い塩水に浸けます。
カリンの形にもよりますが、輪切りにしても簡単に切れます。
ペトペトした皮が滑りやすりので、両端を切り落とした後にピーラーで皮を剥くと作業しやすいです。
種子と周りの部分を切り分けます。
カリンの風味を残したままで、簡単にスグできるおいしいおやつを作るポイントを説明します。
カリンは黄色くなって、香りの良い完熟したものだけを使います。
緑色の実は堅くて酸味が強いため、黄色くなるまで常温で追熟します。リンゴと一緒に置いておくと追熟が早まります。
皮の表面にカビなどの汚れがついている場合はスポンジを使って洗い、乾燥させておきます。
カリンはリンゴより酸化が速いので手速く塩水に浸けて茶色くならないようにします。
カリンの茶色くなった所・虫食い箇所はまずくなるので取り除きます。
個体差があるので牛乳や砂糖の濃さは適宜調整してください。
カリンの品種については専門家でないので不明ですが、木によって実の色や味が異なることがあるようです。
似た環境で育つ別々の2本の木から収穫したカリンの実を同じように追熟させてからカットしたところ、上の写真のように実の色味が濃いものと薄いものとに分かれました。
濃い色の方が柔らかめで洋梨っぽい雰囲気でした。何個かずつカットして検証してみたところ、同じ結果となったので、これに関しては個体差というよりは品種の違いのように感じられました。
牛乳や豆乳のタンパク質に使う事で簡単・短時間に渋抜きができます。
基本レシピは以下の3種
カリンの果肉をまるごと渋抜きして作る カリン・フィリング
カリンの果汁を渋抜きして作る乳酸菌飲料風のジュース カリン・オ・レ
渋抜きしたカリンの果汁の搾りカスで作る カリン・クレープ&チップス
カリンまるごと1個を余すところなく使いたいので、2と3はセットで作ることをおすすめします。
果汁をジュースに、ボソボソの食感の搾りカスであるカリンのおからをクレープやチップスにします
ボソボソの食感の搾りカスはおからのようなもので、便秘の予防と改善に効果・効能もある不溶性食物繊維が豊富に含まれます。
カリンのおからに卵と小麦粉を加えることで風味豊かな心地よい食感のヘルシーなおやつに大変身します。
紹介しているカリンのおやつはとても簡単にできますので、以下の注意事項を守ってお試しください。
種子には有効な薬用成分が含まれているのですが、シアン化物という毒成分もあるので、確実に取り除く事。
青梅と同様に塩やアルコールに漬け込む事で毒成分は分解され、薬効成分になるそうですが、時短レシピの場合は安全のために種子は確実に取り除いて調理してください。
カリンのおやつ作りで残った種子と皮を使って作る夕焼け色のジャム。
煮出した種子は必ず濾して取り除いて除いて下さい。
カリン・フィリングはパンにジャム代わりに乗せたり、クラッカーに乗せたり、冷凍パイシートを使って、風味豊かなカリン・パイを作ったりと、色々なスイーツや料理に利用できて便利です。
作り方はいたってシンプル。
薄切りにしたカリンの果肉を牛乳と砂糖で20〜30分煮詰めるだけで簡単に渋抜きができます。
嬉しいことに渋戻りがありません。
お好みで蜂蜜を入れます。
カリン・フィリングはアップルパイの中のリンゴの甘煮のカリン版
酸味の効いたおいしいカリンジャム風
豆乳やプロテインを使ってもOK!
▶ 材料
塩水はカリンの酸化を防ぐためのもので、水200ccに塩小さじ1程度の割合
牛乳の1/3ほどの水で薄めてもOK
カリンによって酸味や甘さが異なるので、砂糖の量は目安です
カリンによって虫喰いや傷んだ場所があるので量は適宜
① カリンを切って種子を取り除き、皮を剥く
② カリンの果肉を薄切りにして塩水に浸けておく
薄く切る事で、渋が抜けやすくなって柔らかくなります
塩水に浸すことで酸化防止と渋抜きの効果が期待できます
数分でもOKですが30分程がおすすめ
長い時間水に浸すと栄養や風味が抜けてしまうので注意
③ ザルに入れて水を切ってカリンの重さを計る
④ カリンと砂糖を鍋に入れ、果肉がひたひたになるまで牛乳を入れる
好みで蜂蜜を適宜入れる
牛乳の1/3ほど水で薄めても大丈夫
⑤ 吹きこぼれないように注意して、撹拌しながら煮つめる
温めた牛乳にカリンの酸が加わって、カッテージチーズのようになります
⑥ 水分が少なくなってきたら、火を弱めて、ほんのりとした焦げ目を絡めて(キャラメリゼ)火を止めて冷ます
できたてよりも、少し時間をおいた方が味が馴染んでおいしくなります
カリン・フィリングは酸味と甘みがあるので、乳製品とよく合います。
チーズにトッピングしたり、牛乳やアイスクリーム、ヨーグルトに混ぜるとおいしいです。
オリーブオイルやごま油とも相性が良く、肉料理にも合います。
オイルを加えてフルーツソースとしても使えて便利です。
カリン・フィリングを冷凍パイシートで包んで焼けば、簡単にアップパイのようなカリン・パイのできあがり
▶ 材料(2個分)
冷凍パイシートの扱いはパッケージの説明に従うこと
冷蔵庫で約30分、または常温で10分ほど解凍してから使用
長時間放置すると、生地が柔らかくなり過ぎるので注意する
① カリン・フィリングを作って
冷ましておく
② パイシートを半分にカット
フォークで間隔をあけて、
全体に穴を開ける(ピケ)
③ パイシートの上に冷ましておいたカリン・フィリングをのせる
④ 切れ目を入れたパイ生地をその上に被せる
⑤ 上下のパイ生地をフォークで押して、パイ生地の周りを閉じる
⑥ オーブンを210℃で予熱しておく
⑦ 卵黄液を上面に塗る
⑧ オーブンで焼く 210℃で約8分、
パイが浮き上がってきたら温度を180℃に下げて約8分焼く
機種によって時間は異なります。
グリルを使う場合はアルミホイルを被せて焦げないように注意します。
卵黄液はなくても大丈夫
カリンの酸味と風味がパイのバター風味とマッチしてとてもおいしいです。
フィリングが余った場合にはヨーグルトに入れたり、トーストにジャム代わりとして使えます。
肉料理のソース材料としても使えます。
カリン・フィリングはチーズとの相性が抜群!カリンで作るフルーツチーズは香りと酸味と甘み×塩気とこってり感が絶妙です。
牛乳で渋抜きしたカリン・フィリングをチーズと一緒に食べるだけの超簡単メニューですが、スイーツを食べたような満足感があります。
チーズの油分には苦味や渋みを和らげる効果があるのでカリンと相性が良いのも頷けます。
お手軽にプロセスチーズと一緒に食べるだけでもよく合います。
カマンベールチーズだと認知症予防効果も期待できます!
ひと手間加えて、常温に戻したクリームチーズと混ぜればディップにも!
パンに乗せて朝食やおやつにもグッド。刻んだナッツを入れてもおいしいです。
肉料理にも合います。
カリンの果汁と牛乳で作ります。
牛乳にカリンの風味が加わり、乳酸菌飲料のような爽やかなカリンジュース
ホットでもアイスでもおいしいです
▶ 材料
牛乳を水で若干薄めてもOK
① 牛乳をおろし金器の受け皿に入れておく
② カリンを切る
③ カリンを4つ割りにする
皮を剥いて種子と芯の部分を全て取り除いて塩水に浸す
ピーラーやスプーンを使うと簡単
茶色く変色した場所は取り除く
④ 牛乳の入った受け皿の上でカリンを素速くすりおろす
カリンを乱切りにして牛乳とミキサーで混ぜてしまえば、さらに簡単!
⑤ 鍋に移し、混ぜながら中火でしばらく煮る
この過程でタンニンとタンパク質が化合して渋味が抜ける
⑥ 冷ましてからザルと布でこす
ポイント
ザルでこす時におたまやシリコンヘラでゴシゴシ押しつけて、水分を残らず分離する
⑧ 好みの量の砂糖を入れる
カリン・オ・レのできあがり!
プロテインを使えば、少量で簡単に渋抜きが可能。しかも高タンパクで
よりヘルシーなクエン酸入りの飲料となります。
酸味が強い場合は、牛乳を混ぜるとマイルドで飲みやすくなります。
合成甘味料を使えば、ダイエットしているや糖尿病の方にもピッタリ。
健康に気を使う方におすすめです。
カリン・オ・レ をサイダーで希釈すると、キリリ感が出て、スッキリとした爽やかな飲み物になります。
カリン・オ・レ やカリンの皮を少量紅茶入れると、フルーティーな紅茶が楽しめます。
カリンの香り成分は抗菌・殺菌作用があるというので風邪気味の時などに良いかもしれませんね。
カリン・オ・レを作った搾りカスとして残るカリンのおからに卵と小麦粉を加えてカリッと焼きあげます。
▶ 材料(1〜2人分)
カリン・オ・レを作ったあとに残る搾りカスに搾りカスより少量の小麦粉を加え、よく混ぜ合わせる。
生卵1個を加え、手でよくこねる。
フライパンでクレープを焼くようにして薄く焼いてできあがり。
粉末コンソメ等で味をつける。
ジャムやハチミツもよく合う。
食物繊維が豊富でオシャレなヘルシーデザートができあがりました!
クセになるおいしさが楽しめます。
カリン・オ・レとの相性もバッチリ!
余ったものは密閉できる袋に入れて冷凍保存し、後で食べる時にオーブンでカリッとなるまでじっくり焼くか、油で揚げてカリン・チップスにします。
カリンクレープをオーブンでカリッとなるまで焼いたり、揚げるだけでカリン・チップスのできあがり。
ドーナツのような甘い香りが食欲をそそります。
味付けは塩・コショウをお好みで。
コンソメパウダーもオススメ!
甘党の方は最初から砂糖や三温糖などを混ぜて調理してもOKです。
カリン・オ・レを作ったあとに残る搾りカスはおからと質感が似ているので、人気のおからレシピを応用すれば、さらにおいしいレパートリーが広がります。
小麦粉にカリンのおからを混ぜて、ピザ生地を作ってみました。
カリッとした食感と酸味が相まり、絶妙なピザができあがりました。
いろいろと試してみたいですね。
カリン・オ・レを作ったあとに残る搾りカスにバニラアイスをよく混ぜるだけで、クッキー入りのアイスのようになり、食物繊維豊富で楽しい食感のおいしいアイスクリームとなりました。
栄養価の高い搾りカスで増量されて噛みごたえもあるので少量でも満足感があります。
疲労回復に役立つクエン酸も含まれていますので、健康が気になる方やダイエットをしたい方にオススメのスイーツだと思われます。
スグできる!カリンのおやつを作る時に残る種子と皮でジャムを作ってみました。
カリンの皮はペタペタしていて汚れが付着しやすいので、皮を使う場合はきれいに洗って乾かし、再びペタペタしてから使います
種子も皮もキレイなものだけを使えば安心です
カリン中玉3個のキレイな所だけを使用して実験
カリンの種子と皮をヒタヒタより、やや多めの水を入れて鍋で10〜15分ほど煮てから、ザルでこします。
種子の色が朱色っぽく変化。
さらに、布でこします。
カリンの種子と皮の煮汁はやや黄色みを帯びた乳白色です。
この煮汁に30%ほどの砂糖を加えて弱火で煮ます。
今回は三温糖を使用
加熱後しばらくすると飴色になってきます。こげないように夕焼け色になるまで煮詰めます。(約50分)
適度にとろみのついた、風味豊かなおいしいジャムのできあがり。
ごくわずかですが、渋みがあります。
カリン・ジャムがきれいな夕焼け色になるのには、カリンの種子に含まれるアミグダリンが分解してベンズアルデヒドを生じ、そこに熱を加えることにより、いろいろな反応生成物ができ、その中に赤色を示す物質があることによるらしいです。
ベンズアルデヒドはアンズなどの香気のもととなる物質だそうです。
きれいな色のカリン・ジャムは魅力的ですが、種子に含まれるアミグダリンは果肉に比べて高濃度に含まれます。
完熟した果肉であれば未熟果実のような心配は無いのですが、種子に含まれるアミグダリンがどの程度の加熱と糖と時間によって分解され、無毒化するのか専門家ではないので不明です。
健康を害することも考えられるので、上記の方法で作ったカリン・ジャムはできたて時には味見程度で大量摂取しない方が無難です。
▶ 参照:国立健康・栄養研究所
アミグダリン、レートリル、レトリル
また、市販されているカリン加工食品は食品衛生上の問題はないようなので煮沸消毒した容器で数ヶ月ほど熟成させると良いように思われます。
カリンの風味がとても素晴らしいので渋みを取り除き、食べやすい食感にできないか試行錯誤をした結果、カリンのおいしい食べ方を考案!しました。超簡単に渋抜きできて結果は良好です。
こうなると、他の渋みがあって食べられなかったものの渋抜きができるかが気になります。そこで、応用編ということで挑戦してみました!
サクランボのように赤く輝いておいしそうなグミの実ですが、完熟していないと、タンニンによる渋みが強くて食べられません。
グミの実のきれいな赤い色はトマトと同じリコピンの色で抗酸化作用が強い成分なんだそうです。
そこで、今まで渋くて食べるのを諦めていた庭のグミも同じ比率・方法で渋抜きを試してみたところ、イイ感じで大成功!でした。
渋抜きしたオ・レ部分と搾りカスを混ぜてみたところ、とても飲みやすくておいしいグミ・ジュースができあがりました。ゼリーやババロアにしても良さそうです。
βカロテンやビタミンEなど、ビタミンやミネラルなどの栄養をバランス良く含む果物です。
シラカシやアラカシなど渋くて食不適なカシの実で実験。
見事に渋みが抜け、おいしいナッツに変身させることができました。
元々渋の少ないマテバシイも当然、良い結果となりました。マテバシイの実は砲弾型のドングリで、大きめなのでお得感があります。
マテバシイの実の殻の内側はシックな木目調で素敵です。
興味のある方はぜひ割ってみてお試しください。
カリンと似ているマルメロも渋抜きできると思い、実験してみました。
残念ながら、手頃なマルメロが手に入れられなかったので、ご好意により落下していた未熟果をいただいて実験したところ、渋さは抜けたものの、酸化がとても速く、すぐに変色してしまい、苦味が残ってしまいました。虫が入っていたことも正確な結果を得られない要因でした。
機会があればレモン汁を入れた水か酢水を使用して、質の良い完熟果を入手して、再チャレンジしてみたいと思います。
トチの実もシブは抜けてもサポニンが残るため不向きでした。かわいいトチの実が簡単に食べられれば…と思ったのに残念でした。
渋柿もすぐに渋が抜けてジュースになると思われましたが、試みたところ、柿の食感とは相性が悪く、不味かったのでオススメできません。
カリンは中国原産のバラ科カリン属の耐寒性落葉高木です。
原産地の中国では約2000年も昔からカリンを咳止め、利尿作用、鎮痛作用として使っていたそうです。
日本には平安時代に、遣唐使の空海(弘法大師)が唐から苗を持ち帰ったことで伝わったそうです。
カリンは和木瓜(ワモッカ)・榠櫨(メイサ)という生薬名で古くから酔いさましや痰の除去に利用されていたそうです。
カリンを焼酎につけたり、煎じた液に砂糖や蜂蜜を加えたりして飲む民間療法もよく知られています。
カリンに含まれるポリフェノールは抗菌作用、抗炎症作用の両方を持っているので咳止めや喉の炎症の予防に効果があるんだそうです。
このコラムの写真は淀屋橋心理療法センター 季節の写真より掲載させていただいています。カリンの成長過程の楽しくて美しい写真がたくさんあるので、ぜひ訪れてみてください。
"金は貸しても借りん"の語呂合わせから庭にカシとカリンを植えて金運アップ・商売繁盛の縁起をかついだと言われています。
植える場所は縁起を担ぐ木なので、玄関先に植えるとか、前庭にカシを植えて裏庭にカリンを植えるとか、西に黄色い実のなる木があると金運が良くなる等、解釈はさまざま。
カリンの枝は上へ上へと伸び、実も天に向かってつくことが多いので、縁起が良いとする説もありますが、実が大きく重くなると下向きになるものもあります。これはこれで縁起が良さそうです。
冬の厳しい寒さを乗り越えた芽吹きの季節から開花期にかけて、多くの植物は駆け足でその姿を変えますが、特にカリンはどの瞬間も色鮮やかで美しく感動してしまいます。
2月上旬、雪も残る寒い時期ですが冬芽の芽鱗が開き始め、姿を現したカリンの幼く美しい葉。
ぎざぎざの小さな葉を縁取るように光る水玉がレース飾りみたいで綺麗です。
3月上旬、カリンの美しい芽吹き。
赤みを帯びた新芽の裏には防寒対策なのか白い産毛が生えています。
4月中旬、ピンク色のカリンの蕾が姿を現しました。
4月の下旬頃に花盛りとなります。
花言葉は豊麗・優雅 ぴったりです。
別のカリンの樹を見てみると葉や花の色が微妙に違いました。
カリンの花も葉も単色に近いようですが、こちらも綺麗です。
条件が揃えば、晩秋から初冬の頃に紅葉・黄葉も見られます。
カリンの葉には鋸歯があります。
芽吹きの頃のカリンの葉は縁に腺状の鋸歯が目立ちます。
吸盤がついたような縁取り。
たっぷりと水を蓄えて水分調整でもしているのでしょうか。
日差しの強い場所では、葉が赤みを帯びて紫外線を防護します。
芽吹き始めた花芽の中では、腺状の鋸歯に縁取られた葉が何枚も重なり、色鮮やかな濃いピンク色の蕾を厳重に護っていました。
内側がふかふかとした芽吹きの頃の萼にも腺状の鋸歯らしきものがありました。
葉が大きくなるにつれ、鋸歯の先端の膨らみが減って、腺の存在自体が目立たなくなっています。
この鋸歯の先端の膨らみは発芽後の本葉でも目立ちます。
カリンの種子は水に触れると高粘性となって保湿・消炎・殺菌作用を持つトロミ成分の素を装備しているくらいですから、この腺も幼葉が元気に育つための何らかの役目を担っているのでしょう。
カリンは雄花と両性花が混在して咲くそうです。両性花には花柱が5本あります。
カリンの花の最も美しい頃は花粉が綺麗な時なのではないかと感じて、花の中心部を覗き込んでみました。
カリンは人工授粉無しでもたくさん実をつけます。それは魅力的な花粉が虫を呼び寄せているからでしょうか。この頃は虫たちにとっても魅惑的な時期みたいです。
花びらの付け根にはふわふわとした白い綿毛がついていてすべり止めにでもなっているかのよう。
この繊維が風などによってほつれたのか綿アメのようになって、花粉と絡まったものがありました。
この綿アメ作戦は受粉率を上げる役割をしているのかもしれません。
両性花には雌しべの長いタイプと短いタイプがあるようです。
雌しべが黄な粉をまぶした安倍川餅みたいでおいしそうです。(笑)
カリンの花を見に行くと、猛烈な風で花びらが揺れて撮影はとても無理!と思った時に花が葉っぱつきでポトポトと落花してきました。
見てみると両性花が多いです。重いのか、バランスが悪いのか…。
これは神風?(笑) 実がなると思ったらもったいなくてできないけれど、落ちた花ならばと、観察です。
子房が膨らんでいるものが両性花だというので花びらをとって確認。
…ゴメンナサイ。
確かにカリンの両性花は子房が膨らんでいるようです。
蕾の中は汚れなく、美しくパフェのようで美味しそうです。
花粉から蜜のような粘液が出ているように見えます。ぱっと見には雄花に見えますが、何となく花柱らしきのがあるような?どちらにしても蕾の中は穢れなくキレイです。
花が終わるとたくさんの実をつけますが、この時期に乾燥状態が続くと実を落としてしまいます。
紫外線が強い場所だとつき始めの実は赤みを帯びるようです。
カリンの実は年により収穫量の多い成り年(表年)と少ない不成り年(裏年)があるように見えます。
豊作の年は見ていて嬉しいですね。
9月中旬、実が大きくなって重そうです。
果実が黄色くなって熟し始めると、甘くて素敵な香りが漂い、収穫に適した時期となります。
黄色い実の食べ頃期間は割と長く、日持ちがします。
落ちた果実は完熟していて、触るとペタペタとして芳香を漂わせます。
ぽかぽかとした冬の陽だまりの中、大量に落ちたカリンの実の近くにはうっとりする香りが辺り一面立ちこめてカリン風呂に入っているような心地よさがあります。
カリンの香り成分は細菌やウイルスの増殖するのを妨いだり、炎症を和らげる効果があるので、地上の薬湯みたいで癒されます。
カリンの種子は水分に触れるとトロミが出ます。
そして少量の水に浸しておくだけで、トロミがたっぷりと出て、ゼリー状になります。
透明でなめらかな高粘性の溶液は保湿作用・消炎作用・殺菌作用があるため化粧水に利用できるのだとか。
このトロミは乾燥や寒さなど、厳しい環境下でカリンの種子を護る働きをする優れものです。
綺麗な種子だけを選んでお茶パックに詰めてアルコール漬けに。
アルコールに浸した種子は明るい朱色に変化。
カリン・ジャムに似た綺麗な色です。
種子の入ったお茶パックを取り除くと、残されたアルコールにはトロミがついていました。化粧水として利用できそうです。
優秀な種子のおかげでしょうか。
カリンはとても発芽率が良いです。
カリンの発芽過程に興味のある方は
カリンは幹肌も樹皮が不規則に剥がれ、キリンのような模様が出るので観賞用としても楽しい樹木です。
特に芽吹きを過ぎた頃が綺麗です。
花も果実も幹肌も至近距離で見ると見応えがあります。
因みに全く違う種類の樹木ですが、サルスベリやナツツバキ、リョウブもキリンのようなキレイな幹肌で、魅力的です。キリンの模様みたいな幹肌は樹皮が鱗片となって剥がれ落ち、その下の滑らかな肌がまだらに現れることでできるんですね。
葉や松ぼっくりは松そのもでですがハクショウ(白松)は松らしくない白、黄、緑色のモザイク状の幹肌を持つ美しい松で、中国では聖樹として植えられているそうです。
カリンといえば長野県が有名ですが、長野県ではマルメロのことをかりんと呼ぶため、マルメロとカリンが混同されがちです。同じバラ科で形も特徴も似た果実ではありますが、植物学的にはカリン属・マルメロ属と別の属に分類されています。
また、マルメロの在来種を本かりんとか和かりん、スミルナ種のことを西洋かりん・洋かりんと呼ぶ所もあるので、混乱しがちです。
その一方で、本来のカリンは学名では偽マルメロの意味であるということで、似ているが故にカリンとマルメロは実にややこしい関係です。
どちらも黄色く熟した果実には芳香があり、渋みが強いので生食できないため、砂糖やハチミツ漬け、焼酎漬けにして咳止めの民間薬として利用されてきました。
カリンは原産地が中国で、9世紀前半に遣唐使だった空海(弘法大師)により伝わったと言われています。
マルメロは中央アジが原産地とされ、古くからヨーロッパへで栽培され、16世紀後半に長崎に持ち込まれたとか。
マルメロにはフェルトのような産毛があってフカフカしていてかわいいです。形は個体差があるので見分けにくいですが、産毛がカリンとの大きな違いですね。ちょうど落下して表面が剥げてしまった実があったので観察してみると産毛の落ちた表面はカリンと似ています。
マルメロは中央アジアが原産地で、古くからヨーロッパに伝わり栽培されてきた、当時人気のあった果実です。
日本への渡来は諸説あるようですが、16世紀末に来日したスペイン人アビラ・ヒロンが書いた「日本王国記」には「1595年にメキシコから長崎に持ち渡る。」と記されているそうで、この頃に日本にやって来たようです。
マルメロはポルトガル語のMarmeloが名前の由来で、マルメロ・ジャムのことを、ポルトガル語で、マーマレードと言うのだとか。
マルメロは特別な香りがあり、カリンと同じく咳止めなどに効果があるとされる果実酒の材料として重宝がられています。
その他、美しい夕焼け色のジャムやシロップ漬け、ゼリー、アメなどに加工され人気があります。
※マルメロ (marmelo) はポルトガル語で、本来は果実の名前で樹はマルメレイロ (marmeleiro) というのだそうです。
(参照:ウィキペディア)
するとマルメロの実という表現は間違っていることになりそうです。
でも、日本でマルメレイロ という表現は殆ど使わないのでマルメロの実の方がわかりやすいかも。因みに英語名はクインス(quince) です。
マルメロ (スミルナ種) の清楚な花が4月の下旬に咲き、5月の上旬にはビワのような産毛のあるかわいらしい実がなり始めました。
マルメロの木は耐寒性があり、雨が少なく冷涼な気候を好むので、実や葉の産毛は防寒と乾燥対策のためのだと思われます。
シンクイムシなどにやられやすいため産毛の防虫効果は微妙。
6月上旬、マルメロが少し大きくなって膨らんで、かわいい形になってきました。
マルメロ (スミルナ種) の花がカリンより少し遅れて咲き始めました。
蕾のふんわりと巻いた姿はとってもチャーミング。
やさしそうなパステルピンク色で縁取られた花びらがソフトクリームのストロベリーミックスみたいで美味しそうです。
若葉もカリンと比べて大きくて柔らかく、産毛に覆われています。
マルメロ (スミルナ)の花と新緑は春の風に揺られてしなやかに軽やかにの爽やかに揺れます。
埼玉県飯能市で(2016年5月1日開催)のお散歩マーケット「天空のお休み処おおやつ」でプレゼントしたカリンの苗は昨年カリンのおやつを作った時のカリンの種から発芽したもの。
発芽率がとてもよく、想像以上に苗がたくさんできたので、プレゼントする事になった次第です。大事に育ててくださると嬉しいです。
縁起の良い美しい木なので、まずは実を期待せずに記念樹として育ててみようと思っています。
寒さにも強いので関東では育てやすそうです。
気の長い話になりますが、カリンは盆栽にも向いている木です。
因みに10月下旬、この苗は1m位の高さに育ち、春には力強く芽吹き、順調に育っています。
2年後も順調に育ち続け紅葉が絵画のようで綺麗です。
3年後も順調に育ち続けて、初冬の頃に美しい紅葉となりました。
好評につき、
「スグできる!カリンのおやつ」のプリント用PDFファイル作成しました。調理しやすいように印刷してご活用ください。
このページは なんだろな の中の
「カリンを食べたい!」