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不思議で楽しい植物の世界
モクゲンジ
ムクロジ 番外編

モクゲンジとムクロジ

数珠の実がなるといわれる若いモクゲンジの実と種子

モクゲンジムクロジは同じムクロジ科の植物で、どちらも堅くて黒い種子がなり、数珠の起源説があります。

参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶

モクゲンジ木欒子)は モクゲンジ属

ムクロジ無患子)は ムクロジ属

下から見上げたモクゲンジの木
モクゲンジの高木
モクゲンジの木 羽状複葉の葉 枝先にたくさんの実をつける
モクゲンジの木
ムクロジの高木
緑色の葉が茂り、未熟果がたくさんなっているムクロジの高木
下から見上げたムクロジの木
ムクロジの木 鋸歯のない羽状複葉の葉 枝先に実をつける
羽状複葉の葉 枝先に実をつけるムクロジの未熟か
ムクロジの木

この両者は同様に外来した落葉高木羽状複葉をつけ、梅雨頃に大きな円錐花序を多数立ち上げて蜜源となるを大量に咲かせてをつけます。

そして、黒くて堅牢な丸い種子がなるという共通項の多い似た雰囲気の樹木だったので昔から混同されてしまった経緯があり、ややこしい関係となっていたのでした。


羽状複葉の葉に実がなっているモクゲンジの木

モクゲンジは大量の提灯のようにぶら下がり、熟す頃には袋状果皮が褐色になり、裂開して黒くて丸い種子が姿を現します。

種子が数珠になるといわれるモクゲンジの実がなっている様子

果皮枯葉のような質感で脆いです。

数珠の実がなるモクゲンジの木

種子の大きさは5〜6mm。

完熟して木に残るモクゲンジの実

ムクロジも同様に大量のがなりますが、形や質感がまったく異なります。

ムクロジの実は丸いポットのような形で、熟すと半透明の明るいオレンジ色になります。種子は高所から落ちても割れることのない丈夫な果皮に包まれたまま散布されます。

秋に輝くムクロジ
木にたくさんぶら下がる美しいムクロジの実

種子の大きさは13〜16mmです。

モクゲンジと比べると、かなり大きくて堅いです。

ムクロジの実と黒い種子

ムクロジに関して詳しくはこちら

参照:ムクロジ ▶


モクゲンジムクロジは、その名前が二転三転、何度も入れ替わったりして現在の名称に落ち着きました。

しかし、未だに数珠のルーツがどちらであったかは定かではありません。

黒々したモクゲンジとムクロジの種子を数珠のように繋げたもの
モクゲンジとムクロジの種子を連ねたもの

参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶


袋のような形をした乾燥したモクゲンジの実
袋のような形をした乾燥して赤褐色になったモクゲンジの実
数珠の実がなるモクゲンジの実と種子

モクゲンジは大量の種子をつけますが、ザラつく灰褐色の斑模様のあるものが多く、数珠には適さないように思っていました。

あまり綺麗でないモクゲンジの種子

ですが、8月中旬から下旬頃にかけて比較的キレイな種子があるのを確認できました。

モクゲンジとムクロジの種子を繋げた数珠

そこで、黒々として光沢のある比較的大きめの54個のモクゲンジ種子を選抜してムクロジ種子1個と数珠のように試しに繋げてみとところ、触り心地・使い勝手はなかなか良いです。

数珠にしたモクゲンジの種子 拡大

ただし、ムクロジと比べると木質部が薄いため堅牢性は弱そうです。また、きれいな種子が少ないのも残念です。

穴をあけたモクゲンジとムクロジビーズの比較
ムクロジ (左) とモクゲンジ (右) の種子

モクゲンジ種子に手軽にのあけて見たい方はコチラ

▶︎ 参照:モクゲンジの種子に穴をあける


に関してはモクゲンジの方が華やかで美しいです。

大きな円錐花序をたくさん立ち上げたモクゲンジ
数珠の実がなるモクゲンジの黄色い花
数珠の実がなるといわれる美しいモクゲンジの黄色い花
モクゲンジの花
大きな円錐花序をたくさん立ち上げたムクロジ
ムクロジの円錐花序
ムクロジの白い花
ムクロジの花

そんなモクゲンジがどんな植物であるかを追ってみました。

モクゲンジの実と種
モクゲンジの実と黒い種子
photo by: BETTY

さらにオオモクゲンジという似た樹木についても触れています。


モクゲンジ


モクゲンジ

モクゲンジ木欒子 は中国原産といわれるムクロジ科モクゲンジ属の落葉高木で、日本には割と古くから渡来していたと思われます。

栴檀葉の菩提樹(センダンバノボダイジュ)とも呼ばれ、種子を数珠にすると言われているために寺院に植えられていることも多い樹木です。

センダンバノボダイジュ

自生か栽培か、逸出したものかは不明ですが、本州から九州の日本海側の海岸に群落を形成している場所があります。

逸出(いっしゅつ):栽培している植物が管理下から外れて野生化すること

大きな円錐花序を枝先につける美しいモクゲンジの花
センダンのような葉に美しい黄色の花を咲かせるモクゲンジ

モクゲンジは夏にとても美しいを大量に咲かせ、Golden-rain tree
黄金の雨の木 という素敵な英名を持ち、海外では景観木として人気のある樹木です。また、干ばつや大気汚染にも強い耐性があるため、都市部では街路樹として利用されているようです。

満開の花を咲かせる小ぶりのモクゲンジの木

フウセンカズラを逆三角形にしたホオズキとも似た雰囲気の風船のような蒴果です。

モクゲンジの花と若い実

大量ののような黄緑色の若いが混在する様子も賑やかで綺麗。

たくさんの黄緑色の若い実と花をつけたモクゲンジの花序

かわいらしい提灯のようにぶら下がった様子も楽しくて魅力的。

7月下旬、提灯のように黄緑色の実をつけたモクゲンジの木
提灯のようにぶら下がるモクゲンジの未熟果

薄い果皮が裂開すると種子が姿を現します。

7月下旬、種子が色づき始めたモクゲンジの実

完熟前の種子は黒い珠のようです。

8月中旬、地上に落ちた黒く輝くモクゲンジの種子

ツヤとハリがあって輝いています。

地上に落ちた黒く輝くモクゲンジの種子

秋には種子が熟して堅くなります。

9月中旬、熟して開いて種子が見え始めモクゲンジ実
黒い種子が見える木になるモクゲンジ実

晩秋から初冬にかけて、木の上から下の方へとずれずれに黄葉し始め、落葉します。

晩秋の黄葉したモクゲンジの木

木にはたくさんの種子をつけたが残ります。

晩秋、たくさんの種子をつけた実が残る黄葉したモクゲンジの木
黄葉した木に残るモクゲンジの実

完熟して黒く堅くなった種子の大きさは5〜6mm位で数珠に使われたといわれています。

モクゲンジの種子で作った数珠

欒樹ムクレンジノキモクレンジムクレニシとも呼ばれます。

センダンの古名ともあります。

参照:ちょっと寄り道:栴檀(センダン) ▶

木患子モクゲンジという読み方をするのはムクロジの中国名である木患子を誤ってモクゲンジにあてたためといわれています。

参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶


モクゲンジ ムクロジ科 モクゲンジ属

  • 学名:Koelreuteria paniculata
    英名:goldenrain tree
    別名:センダンバノボダイジュ
       ムクレンジノキ欒樹
       ムクレニシ
  • 日本では中部以西に分布する
    高さ10mぐらいになる落葉高木
    秋には黄葉する
  • 葉は奇数一回羽状複葉
    小葉は卵形でふちには不ぞろいの
    粗い鋸歯がある
  • 雌雄同株
    6月中旬〜7月中旬頃に
    枝先に大型の円錐花序をつけ、
    小さな黄色い花を密に咲かせる
  • 直径5〜7mmの黒い種子は堅牢で
    数珠に使用されたといわれる
  • 風船のように膨れ3裂する蒴果で
    熟すと果皮は褐色になる
  • 寺院などに植栽されていることが多い
  • 樹高は通常、高さ5〜12m
    25mに達することもある
    枝は広がるが、輪郭は丸みを帯びる
  • 干ばつや大気汚染にも強く
    樹形が美しく花も果実も楽しめるため
    海外では街路樹として利用されている

モクゲンジの葉

栴檀葉の菩提樹の別名があるようにセンダンの特徴である羽状複葉で縁に鋸歯があって、新緑がとても美しい木です。

モクゲンジの美しい芽吹き

4月中旬から下旬にかけての様子。

新緑の美しいモクゲンジ
芽吹きの頃のモクゲンジ
5月、羽状複葉の葉を展開モクゲンジ

5月中旬頃の様子

5月、新緑が美しいモクゲンジ
5月、羽状複葉の新緑が美しいモクゲンジ
下から仰ぎ見たモクゲンジの羽状複葉の葉
下から仰ぎ見たモクゲンジの葉

6月上旬頃の様子。

6月中旬のモクゲンジ
羽状複葉の葉が美しいモクゲンジ

年によって異なりますが、6月中旬から下旬頃にが姿を現します。

蕾をつけたモクゲンジ

モクゲンジの主役は美しい若葉からへと移行します。

花穂をつけ始めたモクゲンジ
たくさんの蕾をつけ、花が咲き始めたばかりのたモクゲンジの花序
センダンのような葉と花が咲き始めたモクゲンジの花序

その後の様子は

▶ 参照:モクゲンジの花


モクゲンジの葉
羽状複葉のモクゲンジの葉
羽状複葉のモクゲンジの葉 秋

秋から初冬にかけて黄葉し、その後を落とします。

緑色から黄色へと変化するモクゲンジの葉
モクゲンジの黄葉
晩秋のモクゲンジの黄葉
緑色から変化中のモクゲンジの黄葉

モクゲンジの花

円錐花序を立ち上げ、咲き始めたモクゲンジ

モクゲンジは6月中旬から7月中旬に枝の先に大型の円錐花序をつけ、小さな黄色い花を多数咲かせます。

蕾の多い頃のモクゲンジの円錐花序

の多い時期は黄緑色っぽい花序。

円錐花序に美しい黄色い花を咲かせるモクゲンジ

開花が進むにつれて、豪華な黄色の円錐花序となります。

咲き誇るモクゲンジの花

学名は Koelreuteria paniculata

小種名paniculata (円錐花序) という名前の通り、見事な円錐花序を立ちあげます。

大型の円錐花序を枝先につける美しいモクゲンジの花

モクゲンジ属を指すKoelreuteria
Joseph Gottlieb Koelreuterケルロイターという18世紀のドイツの植物学者の名前よりつけられています。

大型の円錐花序をつけるモクゲンジ

モクゲンジには雄花雌花があり、同一花序に混在しています。

どちらも花弁の基部の付属体黄色から次第に赤い色に変化して色鮮やかになります。

▶ 参照:モクゲンジの雄花

▶ 参照:モクゲンジの雌花

モクゲンジの美しい円錐花序

鮮やかな黄色のには朱色の付属体がついていて、チャームポイントとなっています。ムクロジの花と比べると、色は派手で美しいです。

モクゲンジの美しい花
黄色に朱色のワンポイントが美しいモクゲンジの花

は2〜3週間と比較的長い間見ることができます。の終わり頃には円錐花序に黄緑色のたくさんのが混在します。

円錐花序を埋め尽くす黄緑色の実と黄色の美しい花が混在する花期終盤のモクゲンジ

ゴールデン・レイン・ツリー

花期には遠目からでも目立つ黄色い樹冠のモクゲンジ

黄色い樹冠が目立つ花期のモクゲンジ

日本では仏教と縁のあることから寺院で見かけることの多い木ですが、

海外ではゴールデンレインツリー という洒落た英名で呼ばれ、公園等に景観木として植栽されています。

花盛りのモクゲンジ

花盛りの頃の黄金色の花序は見応えがあります。

埋め尽くすように大量に咲く花盛りの頃のモクゲンジの花

英名がGolden rain treeというだけあって、黄金色に例えられる大量の雄花花粉を出して役割を終えると、雨の雫のような音を立てて落ちます。花盛りを終えようとする頃に一斉にが落ちる様子を黄金色の雨の降る木と表現したのでしょう。

地面に落ちたモクゲンジの黄色い花

アスファルト道路に落ちた大量の黄色い花は車が通過するたびにふわっと舞い上がって風紋のように姿を変え、花筏のよう。路上に散った桜のを思い起こさせます。

地面に大量に落ちたモクゲンジの花
路面を覆うように大量に落ちたモクゲンジの花
地面にたくさん落ちたモクゲンジの黄色い花

美しい黄色の花目薬黄色の染料としても使われるそうです。

地面に落ちたモクゲンジの黄色い雄花
地面に降り積もったモクゲンジの黄色い雄花
地面に落ちたモクゲンジの黄色い雄花

モクゲンジの雄花

開きたての葯の開いていないモクゲンジ雄花 拡大

開きたての雄花

開きたての雄しべが開き始めたモクゲンジ雄花

には毛が生えています。

開きたての雄しべが開き始めたモクゲンジ雄花の葯
開きたての付属体が黄色いままのモクゲンジ雄花

雄しべ花糸の下半分あたりにも毛が生えています。

付属体が黄色いままのモクゲンジ雄花

花弁の付属体が黄色から朱色に変化して華やかになります。

葯の開く前のモクゲンジ雄花
朱色の付属体が美しい黄金色のモクゲンジ雄花
モクゲンジ雄花の朱色の付属体
葯の開く前と開いたあとのモクゲンジ雄花

が開き始めます。

モクゲンジ雄花の雄しべの拡大
花粉を出す朱色の付属体が目立つモクゲンジの雄花

花粉が出ています。

花粉が出ているモクゲンジの美しい雄花の 拡大
花糸が先端でまとまり葯が近づいたモクゲンジの雄花 拡大
葯が開いて花粉を出すモクゲンジの雄花 拡大

落花したモクゲンジの雄花

機能を終えて落花したモクゲンジの雄花を見てみました。

落花したモクゲンジの雄花
落ちていたモクゲンジの雄花をいろいろな角度から見たところ
落ちていたモクゲンジの雄花 拡大

モクゲンジの雄花花弁を2枚取り除くと雄しべ花弁の基部には短毛があります。その点は、ムクロジの花と似ています。

落ちていたモクゲンジの雄花の花弁を2枚取り除いてみたところ
落ちていたモクゲンジの雄花の花弁を2枚取り除いてみたところ 雄しべ部拡大
落ちていたモクゲンジの雄花の花弁を2枚取り除いてみたところ 花弁部拡大

モクゲンジの雌花

開き始めのモクゲンジ雌花

開きたての雌花

蕾から開き始めたモクゲンジ雌花

雌花雄花も花序の中でずれずれに開花するのでいろいろな状態のが混在しています。

モクゲンジ雌花が咲いている円錐花序

雌しべが目立つのが雌花で、雄しべが機能しているかどうかは不明。

開き始めのモクゲンジ雌花

同士がくっついてドーナツみたいです。中央の出っ張りが雌しべ

開き始めのモクゲンジ雌花 拡大
全体的に黄色いモクゲンジ雌花 拡大

雄花同様、付属体が朱色に変化して華やかな彩りとなります。

横から見たモクゲンジの美しい雌花 拡大
モクゲンジの雌花のドーナツみたいな雄しべの葯が外れる手前の状態

雄しべ花糸が伸びて、ドーナツ状のが離れて広がります。

ドーナツ状の葯が離れて広がるモクゲンジの雌花の様子
雌しべが突き出たモクゲンジの雌花

雄花と比べて花糸は短いです。

モクゲンジの美しい雌花 拡大

花粉が出ることなく、雄しべは機能していないように見えます。

花柱が目立つモクゲンジの雌花
モクゲンジの雌花

その後の雌花の様子は、

▶ 参照:受粉後のモクゲンジの雌花

モクゲンジの花は虫媒花

花盛りのモクゲンジに集まる昆虫たち

モクゲンジの花花粉が豊富な虫媒花たちに大人気です。

モクゲンジの花に集う昆虫

花期には羽音が木の周りでブンブン鳴り響き、大賑わいです。

モクゲンジの花とトラマルハナバチ
モクゲンジの花とトラマルハナバチ

モフモフとしたトラマルハナバチは可愛らしい常連さん。

モクゲンジの花に潜り込むミツバチ
モクゲンジの花と蝶(ヒョウモンチョウ)

昆虫たちへのプレゼントが功を奏して、受粉率は抜群!たくさんのがなります。

▶ 参照:モクゲンジの実1

モクゲンジの実1

樹冠を彩る黄緑色の風船のような実と黄色い花をつける花期終盤のモクゲンジ

花期が終盤となった頃、遠目にはのようにも見える未熟果と黄色のが高密度で樹冠を彩っています。

たくさんの黄緑色の風船のような実と黄色い花をつける花期終盤のモクゲンジ

びっくりするほどのたくさんのがついていて嬉しくなります。

たくさんの黄緑色の風船のような実と黄色い花をつける花期終盤のモクゲンジ
びっしりと風船のような黄緑色の若い実がついたモクゲンジ

樹下に行ってみると、未熟果が大粒の雨のような音をたててパラパラと落ちてきました。

うっかり踏んでしまった時にパツンと弾ける音がしてびっくり。

花と一緒に路面に落ちた黄緑色をしたモクゲンジの未熟果

大量のを結び、過剰分は落果しているようです。

花と路面に落ちた黄緑色をした風船のようなモクゲンジの未熟果

落ちていたフウセンカズラの実のように風船状に膨らみ、質感も似ていて、ぬくもりさえあって可愛く感じました。

路面に落ちていた黄緑色をした風船のようなモクゲンジの未熟果

風船のように空気が入って膨らんでいますが、形は三角状卵形で、先端は尖っています。

路面に落ちていた黄緑色をした風船のようなモクゲンジの未熟果

フウセンカズラホオズキを合わせたような雰囲気のをしています。

黄緑色をした風船のようなモクゲンジの未熟果

早期に果皮が裂開するだけあって、フウセンカズラの実と違って気密性は低く、少し力が加わるだけで空気は抜けてしまいます。

早々に裂開し始めた黄緑色をしたモクゲンジの未熟果
早々に開き始めた黄緑色をしたモクゲンジの未熟果

▶ モクゲンジとフウセンカズラの実の比較

黄緑色をした風船のようなモクゲンジの未熟果の果皮を破って見えた種子

3つの部屋に別れた風船の中を見ると未熟な種子がついていました。

早々に落果した黄緑色をした風船のようなモクゲンジの果皮を破って見えた種子

1室に2個の種子がついていますが、大きさには個体差があります。

早々に落果した黄緑色をした風船のようなモクゲンジの果皮を破って見えた種子 拡大

その後のの成長の様子は、

参照:モクゲンジの実2 ▶

モクゲンジとフウセンカズラの
実の比較

フウセンカズラモクゲンジと同じムクロジ科の植物です。そのせいか、の雰囲気が似ています。

落下していた黄緑色のモクゲンジの実

7月中旬、嵐の翌日にモクゲンジの黄緑色の風船の実が大量に落ちていました。

そこで、幾つかの拾ったと似た頃合いのフウセンカズラの実を比較してみました。

未熟なモクゲンジの実

(暑さのせいで少々へたれています。)

正面から見ると、雰囲気や質感は似ていますが、モクゲンジの実の方はハートを細長くしたみたいな逆三角形のです。また、モクゲンジの実フウセンカズラのようにが完全に閉じていません。

黄緑色のモクゲンジの実とフウセンカズラの比較 正面から見たところ

ですが、モクゲンジ種子が海流にのって日本に漂着し、自生するかのように日本海側の海岸に根付いたのだとすると、フウセンカズラ同様、風散布&水散布種子が拡散されたとも考えられます。フウセンカズラほど水散布に適していなかったため世界の広域には散布されなかったのかもしれません。

▶ 参照:水散布で旅するフウセンカズラ

黄緑色のモクゲンジの実とフウセンカズラの比較 上面から見たところ
黄緑色のモクゲンジの実とフウセンカズラの比較 下面から見たところ
黄緑色のモクゲンジの実とフウセンカズラの比較 一室を開けて種子の様子を見たところ

モクゲンジの実3室に分かれてます。フウセンカズラと同じですが、仕切りは膜質ではなく、外の袋と同じ質感。種子のついている上部だけにあります。
種子は1室につき1〜2個でした。

未熟なモクゲンジの実の中

種子の内部はフウセンカズラというよりもムクロジに似ています。

未熟なモクゲンジの種子とその断面
未熟なモクゲンジの種子の断面

▶ 参照:ムクロジの種子 成長過程


同じ環境で保存していた5年後のを比較すると、フウセンカズラは触ってもドライフラワー状態でしたが、モクゲンジ果皮は少しの力でポロポロと砕けてしまいます。

一見、似ていても果皮の質や丈夫さは異なるようです。

モクゲンジの実2

花期終了前に実っているたくさんの未熟果風船状果皮がまだ閉じているものや裂け始めたもの、裂けて中の種子が見えるもの等、さまざまのものが混在状態。

たくさんの黄緑色の風船のような実と黄色の美しい花が混在する花期終盤のモクゲンジ

袋状の蒴果の袋は早々に開きます。

黄緑色の風船のような実が開いて種子が見えるものや果皮が裂開し始めているモクゲンジの実
黄緑色の風船のような実の果皮が裂開し始めているモクゲンジの実
黄緑色の風船のような果皮が裂開し始めたモクゲンジの実
黄緑色の風船のような実の果皮が裂開したモクゲンジの実

その後の様子は、

▶ 参照:モクゲンジの実3

モクゲンジの実3

7月中旬から下旬、すっかりの姿がなくなった頃のモクゲンジのようにたくさんの黄緑色の実をつけていました。受粉率が良いのは昆虫たちのおかげでしょう。

花のようにたくさんの黄緑色の実をつけるモクゲンジ
たくさんの黄緑色の実をつけるモクゲンジ 拡大
モクゲンジの黄緑色の実 拡大

種子は順調に育っているようですが、個体差が大きく、大きめの種子はグリーンピースみたいな雰囲気。

様々大きさの種子がなっているモクゲンジの未熟果の中
モクゲンジの未熟果の中の種子の様子
グリーンピースみたいなモクゲンジの未熟果の中の種子の様子 拡大

果皮はさほど丈夫でもなく、虫食い痕なども多々見られます。

虫に穴が開けられたモクゲンジの未熟果の果皮

木の下にはたくさんの未熟果が落果していました。

落果したモクゲンジの未熟果の中

落果していた未熟果の中。

落果したモクゲンジの未熟果の果皮を広げたところ
落果したモクゲンジの未熟果の果皮を広げたところ

すでに種子が外れているものもありました。

種子が1つ外れている 落果したモクゲンジの未熟果の果皮を広げるたところ
落果したモクゲンジの未熟果の中の種子が外れたところ

その後のの成長の様子は、

▶ 参照:モクゲンジの実4

モクゲンジの実4

7月下旬、モクゲンジの木は大量のをつけています。

大量に黄緑色の実がなっているモクゲンジ
円錐果序にたくさんの黄緑色の実がぶら下がっているモクゲンジ
円錐果序に黄緑色の実がぶら下がっているモクゲンジ

の構造上、風の吹き抜けやすい所では落ちやすいようで、多くのが樹下に落ちていました。

7月下旬、落果しているモクゲンジ

木になっているものも落ちているものもの中の種子の大きさや成長具合はさまざま。最初のが咲いてから最後のが咲き終わるまで3週間近くの差があったので当然の結果ではあります。

生理落果もあって、不稔のものも多く見られます。

落果しているモクゲンジの未熟果

落ちたモクゲンジの中から比較的大きくて綺麗な種子のついているを選んで、成長過程を知る参考としました。

果皮が緑色から褐色 落果しているモクゲンジに見る実の成長過程
果皮が緑色から褐色、種子が黄緑色から黒褐色となった落果しているモクゲンジに見る実の成長過程
落果しているモクゲンジに見る実の成長過程
7月下旬、種子が大きくなって落果している黄緑色のモクゲンジの実

まだ黄緑色でも種子が大きくなって状態の良いものもありました。

果皮が褐色になって黄緑色の大きな種子がついたモクゲンジの実

種子は黄緑色から紫がかって黒色に変化するようです。

果皮が褐色になって種子が緑色から黒色に変化しているモクゲンジの実

既に完熟間近のような雰囲気の種子もあります。

黒くなったモクゲンジの未熟種子

熟したかのように見えるですが、まだ水分が多くてやや大きめ。種子はそれほど堅くありません。

完熟したかのように見えるモクゲンジの実

この頃の綺麗なモクゲンジの種子を見ると、数珠にするというのもアリと思えます。

この種子について詳しくは、

▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子

完熟間近のモクゲンジの実

その後のの成長の様子は、

▶ 参照:モクゲンジの実5

モクゲンジの実5

8月上旬、モクゲンジの実は黄緑色のままですが、果皮はやや乾燥して中の種子は大きくなっています。

8月中旬のモクゲンジの実
8月中旬の種子が熟してきたモクゲンジの実

相変わらず多くのが樹下に落ちています。

8月中旬に落果したモクゲンジの実

落ちた果皮は乾燥が進み、褐色に色づき始めたものが目立ちます。

果皮は少々傷んでいたり、虫にやられたものもありますが、中の種子は健全そうに見えるものが多く見られます。

8月中旬に落果した熟しかけているモクゲンジの実

成熟過程の色とりどりの種子宝石のようで綺麗です。

8月中旬の色とりどりのモクゲンジの種子
色とりどりのモクゲンジの未熟な種子

この時期の大粒のモクゲンジ種子は8mm弱で、ツヤとハリがあって黒く輝き、このまま数珠になったら良さそうに見えますが、まだ堅くはなっていません。

ツヤとハリのある黒く輝くモクゲンジの種子

この種子に穴を開けて乾燥させたところ、6mm弱となり、堅くはなりましたが、かなり小さくなった印象があります。

乾燥して縮んだモクゲンジの種子

乾燥前の大粒の種子と比べると違いが感じられます。

乾燥して縮んだモクゲンジの種子と乾燥前の種子

その後のの成長の様子は、

▶ モクゲンジの実6

モクゲンジの実6

8月中旬、木になっているはまだ黄緑色のものが多いですが、開いて中の見える種子は黒いものが増えていました。

種子が黒っぽくなってきた木になっているモクゲンジの黄緑色の実

樹下には褐色になったモクゲンジの実が以前にも増して、たくさん落ちていました。

樹下に落ちている茶色くなったモクゲンジの実と黒い種子

中の種子は黒いものばかりです。

樹下に落ちた褐色のモクゲンジの実と黒い種子

むきだしの黒い種子もあちらこちらに散らばっていました。

8月中旬、種子が散らばって落ちているモクゲンジの実

種子が外れた果皮は軽くなって飛ばされたり、踏まれて砕けたりして、やや重い種子だけが落果した付近に残ったのでしょう。

8月中旬、種子が散らばって落ちているモクゲンジの実

その後のの成長の様子は、

▶ モクゲンジの実7

モクゲンジの実7

8月下旬、木になっているは褐色になったものが増えていました。

8月下旬、褐色に色づいた実が増えてきたモクゲンジ

中には赤褐色のきれいなも見られます。

8月下旬、褐色に色づいた実と緑色の実が混在するモクゲンジ

ですが、多くのモクゲンジ果実は色づいたというよりは枯れ色です。

8月下旬、完熟に近いと思われる実が増えてきたモクゲンジ

残念ながら美しくはありません。

8月下旬、褐色になった実が増えてきたモクゲンジ

果序によっては全部が褐色になっているものもあり、秋が深まる前に熟すものも多いようです。

8月下旬、完熟に近いと思われる実が多いモクゲンジの果序

落ちていたも熟して落ちたもののように見えるものが増えました。

8月下旬、熟して落ちたと見られるモクゲンジの実

この種子について詳しくは、

▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子4

その後のの成長の様子は、

▶ モクゲンジの実8

モクゲンジの実8

9月上旬、木になる全てのが褐色というか枯れ色になっていました。

褐色の実のなる秋のモクゲンジの木

薄く乾燥してパリパリとした果皮は丈夫でなく、破れて種子がむき出しになるものもあります。

9月上旬、完熟して褐色に色づいた実のなるモクゲンジ
数珠に使われる実がなると言われるモクゲンジ

この頃になると種子に灰色を帯びたものばかりで、意外にも綺麗な黒色種子は少ないようです。

褐色の実から完熟した種子が見えるモクゲンジ
生成り完熟の真っ黒でないモクゲンジの種子

落ちていた種子も同様です。

完熟した頃に落ちていたモクゲンジの実と種子

数珠を作るのなら、完熟手前の綺麗な種子を拾って乾燥させたものの方が良いように思えます。

完熟した頃に落ちていたグレーがかったモクゲンジの種子
完熟した頃に落ちていた斑模様のモクゲンジの種子

中にあるは水分が抜けて完熟しているようなものもありました。

完熟した頃に落ちていた斑模様のモクゲンジの種子の中身

緑色から黄色へと変化中の

9月上旬に落ちていた斑模様のモクゲンジの種子の緑色から黄色へ変化中の中身

栗きんとんのような色のなどほぼ完熟と思われるものが多数見られました。

9月上旬に落ちていた斑模様のモクゲンジの種子の黄色くなった中身

その後のの成長の様子は、

▶ モクゲンジの実9

モクゲンジの実9

9月中旬、は暗褐色になり、ちらほらと黄葉も見られるようになりました。

9月中旬、黄葉し始めたモクゲンジの木に熟して暗褐色になったモクゲンジの実の房

の中で待機していた種子も殆どが熟してきたようです。

9月中旬、熟して暗褐色になったモクゲンジの実の房
9月中旬、熟して開いて種子が見え始めモクゲンジ実
9月中旬、種子が熟してきたモクゲンジ実

乾燥した種子は7mmぐらいの大きめのものが多く見られました。

9月中旬、熟して落ちた7mmぐらいのモクゲンジの種子

ですが、数珠にしたくなるような黒々とした綺麗なものは見つけられませんでした。

9月中旬、熟して落ちた大きめなモクゲンジの種子

種子を覆う皮膜なようなものに空気が入るのか、灰色のムラムラ模様がついたものばかり。

熟して落ちたあまり綺麗でないモクゲンジの種子

木なり完熟になれば、大きめで艶やかな黒い種子が多々見られると期待していたのですが、残念な結果となりました。このことが、モクゲンジ数珠ムクロジほど作られていない一因となっているような気がしてなりません。

その後の様子は、

▶ モクゲンジの実10 秋から冬の完熟期

モクゲンジの実10 秋から冬の完熟期

10月上旬頃から房なりの黄葉したが一緒に見られるようになりました。

秋に黄葉するモクゲンジの大木
モクゲンジの黄葉

残念ながら、が枯れ色のせいで、あまり美しく感じられません。

黄葉と一緒に見られる枯れ色になって木にぶら下がるモクゲンジの実

それに対してオオモクゲンジは似た木ですが、キレイなピンク色の黄色の花が初秋に同時に楽しめる為、観賞価値が高く、人気があります。


モクゲンジの黄葉と枝に残る実

モクゲンジ黄葉は部分的で、早々に落葉するものが多く、イチョウのように一斉に黄葉しません。

黄葉する頃に枝に残るモクゲンジの実と種子

場所によっては枝に残るが減ってきました。

秋、木の下に落ちていた果皮がボロボロになったモクゲンジの実と種子
木に残るモクゲンジの実

木の下には果穂ごと落ちていたり、落葉も見られるようになってきました。

秋、木の下に落ちていたモクゲンジの実

やはり、真っ黒な種子は見当たりませんでした。

秋、木の下に落ちていたモクゲンジの実と種子

薄くて脆い果皮は、落ちると風化が速いようで、砕けて形が無くなり、種子と落葉したと長い葉柄果柄だけが目立ちます。

秋、木の下に落ちていたモクゲンジの葉と種子

種子もそれほど堅牢でないらしく、踏まれてつぶれたり砕けているものも多く見かけました。

秋、木の下に落ちたモクゲンジの種子
秋、木の下で砕けたり潰れているモクゲンジの種子

樹下にはたくさんのの落ちた形跡があり、風散布と思われていたはさほど遠くに飛ばされていない様子が意外でした。

風船のような形をした脆い果皮にはどんな役割があるのかが疑問として残りました。


そんな頼りなげなですが、時として冬になっても落ちないものもあります。

成長過程のモクゲンジの種子1

7月下旬に落ちていたモクゲンジの実の中には成長過程がわかるような種子がついていたので、拾って様子を観察してみました。

色づくモクゲンジの種子

光沢のある大きめの黄緑色の種子

約7mmあります。

7月下旬、落果していたモクゲンジの実になっていた黄緑色の大きめの種子

縦半分に切ってみると、中は充実。

7月下旬、落果していたモクゲンジの実についていた黄緑色の大きめの種子を縦に半分に切った断面

渦巻いて見えるのは子葉となる部分で、その先に幼根がついています。

モクゲンジの黄緑色の未熟種子の縦の断面

同じような黄緑色の種子

落果していたモクゲンジの実になっていた黄緑色の大きめの種子

こちらは種皮を剝いてみました。

柑橘類の白いわたのような質感の薄い皮に覆われたが出てきました。

モクゲンジの黄緑色の未熟種子の薄皮に覆われた胚

薄皮はに密着してペトついていて剥がすのが難しかったですが、幼根と緑色の子葉が重なったが確認できました。

生育過程にあるモクゲンジの未熟種子の胚 

同様の種子の中の様子。

モクゲンジの黄緑色の未熟種子の生育過程にある嘴のような葉痕を持つ胚

こちらは巻いた子葉の中央に粘液が溜まっています。この液体から栄養をもらってが生育していると思われます。

モクゲンジの黄緑色の未熟種子の生育過程にある胚 巻いた子葉の中央に粘液が溜まっている
巻いた子葉の中央に粘液が溜まっているモクゲンジの未熟種子の胚 
モクゲンジの未熟種子の中のきれいな緑色をした形成中の子葉 

外見は似たような種子でも、上の方の子葉が形成されつつあるような未熟な状態のものもありました。

薄皮の中で育つモクゲンジの未熟な胚
外側の子葉がまだ小さい成長過程のモクゲンジの未熟な胚

外見は似たような種子でも、中には子葉になるものが生成している初期の段階のものもありました。

子葉になりたてのようなモクゲンジの未熟な胚と剝いた種皮
生育過程にあるモクゲンジの未熟な胚と剝いた種皮
子葉になりたてのようなモクゲンジの未熟な胚
種皮を剝いて子葉になりたてのようなモクゲンジの未熟な胚が見える
子葉になりつつあるモクゲンジの未熟な胚
断面に子葉になりつつあるモクゲンジの未熟な胚のモクゲンジの種子
モクゲンジの未熟な胚のモクゲンジの種子の断面 子葉になりつつある状態

外見上、良い種子は大きくて光沢がありますが、明らかに悪い種子は小さくて表面がざらついています。

黒い種子がついて完熟したかのように見えるモクゲンジの実
7月下旬から8月上旬、落果していたモクゲンジの実になっていた良いものと悪い黒い種子

外見は良さそうに見える種子

黒くなったモクゲンジの未熟な種子

しかし、中を見てみると、そうではないものが殆どでした。

生理的落果しただから当然の結果かもしれません。

黒くなったモクゲンジの未熟な種子の中

こういった種子は水に入れると軽いので浮いてしまいます。

黒くなったモクゲンジの未熟な種子を半分に割ってみたところ 不稔状態
半分に割った黒くなったモクゲンジの未熟な種子

▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子2

成長過程のモクゲンジの種子2

連日の猛暑が続いた8月上旬、枝に残ったモクゲンジの実7月下旬の頃と比べると、果皮は乾燥気味で、開いて中の種子が見えるものが多くなりました。

8月上旬のモクゲンジの実

落ちていたの中の種子7月下旬に落ちていたものと比べると、大きめで、完熟に近づいているものが増えていました。

8月上旬、落果していたモクゲンジの実

まだ8月上旬だというのに既に秋を感じさせるような彩りで綺麗です。

8月上旬、落果していた彩り豊かなモクゲンジの実

モクゲンジの種子は小さめで果皮も薄いため、比較的短期間で完熟するのかもしれません。

8月上旬、落果していた彩り豊かなモクゲンジの実と種子

落ちていた種子は少しの衝撃で外れてしまうものが多いです。

8月上旬、落果して褐色に変化したモクゲンジの果皮と黄緑色の種子
8月上旬、落果して褐色に変化しつつあるモクゲンジの実と種子

大きさも様々。

8月上旬、いろいろな大きさの落果していたモクゲンジの実になった黄緑色の種子と黒い種子
8月上旬、落果していたモクゲンジの実になった黒い種子

種子胚珠)は育つ時、心皮の胎座と呼ばれるヘソの緒のような部分にくっついています。

胎座とつながるモクゲンジの黄緑色から褐色へ変色中の種子

落果後に種子が外れないものは栄養を吸収中で完熟を目指している過程だったのでしょう。

胎座とつながるモクゲンジの黒くなった種子
モクゲンジの胎座と不稔の種子

種子が未熟なううちに外れてしまって残された胎座と不稔の種子

へそが目立つモクゲンジの未熟種子

モクゲンジの未熟種子へそ

モクゲンジの未熟種子のへそ

これらの種子の中の様子は、

▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子3

成長過程のモクゲンジの種子3

8月上旬に落果していた種子の中はが出来上がって完熟を待つばかりと思われるものもいくつか見られました。

8mmくらいの大きさのモクゲンジの未熟な種子

大きくて綺麗な種子を選抜。大きなものは約8mmもありました。

8月上旬、落果していたモクゲンジの種子の大きさ

種子は黒くなってから乾燥が進んで堅くなるにつれて小さくなります。


わずかに色づき始めている黄緑色のモクゲンジの種子

少し色づき始めた、大きくてツヤのある黄緑色のモクゲンジ種子

わずかに色づき始めている黄緑色のモクゲンジの種子の果皮を剥がしたところ

種皮は簡単に剥けます。

薄皮に包まれたが出てきました。フェルトのような質感の湿った薄皮に包まれています。

わずかに色づき始めた頃の黄緑色のモクゲンジの種皮に包まれた胚
モクゲンジの胚を包む薄皮を剥がしているところ
モクゲンジの胚と胚を包んでいた薄皮

薄皮を剥くとツヤやかなが出てきました。

成熟したかのように見えるモクゲンジの胚
ツヤやかでむっちりとしてきれいな緑色にモクゲンジの胚

大豆でいえば枝豆ぐらいの成熟度合でしょうか。


褐色に色づき始めているモクゲンジの種子

大きくてツヤがある褐色に変化途中のモクゲンジ種子

カッターで種皮を取り除いてみました。それほど堅くはありません。

褐色に色づき始めているモクゲンジの種子の外側の種皮を取り除いたもの

薄皮に包まれたが出てきました。みかんの中身ぐらいの堅さで、薄皮は剥がれにくいです。

褐色に色づき始めているモクゲンジの種子の外側の種皮を取り除いたもの

薄皮を取り除くと、ロールケーキ状に子葉幼根が丸まったが姿を現しました。鮮やかな黄緑色をしていてペタペタとします。


黒くなったモクゲンジの若い種子

熟したように見える黒いモクゲンジ種子

外側の種皮を取り除いた黒くなったモクゲンジの未熟な種子

種皮はそれほど堅くはありません。

薄皮に包まれたが出てきました。

黒くなったモクゲンジの若い種子の渋皮のような薄皮を剥がしているところ

薄皮はクリの渋皮に似ていて剥がしにくく、薄皮の内側にはやや粘性があります。

黒くなったモクゲンジの若い種子の胚を保護している薄皮を剥がしているところ

薄皮は子葉をラッピングするように巻きついています。

5mm位の大きさの熟したモクゲンジの若い種子の胚

これから完熟に向けて乾燥するであろうはベタついています。

黒くなったモクゲンジの若い種子の胚

落果したものでしたが、健全そうなを持つ種子が見られました。

巻物のように見えるモクゲンジの若い種子の胚
巻物のように子葉部分が丸まったモクゲンジの緑色の胚
巻物のように子葉部分が丸まったモクゲンジの若い種子の胚

モクゲンジムクロジを小さくしたような雰囲気です。

▶︎ 参照:ムクロジの種子 成長過程

比較すると子葉が薄めなので、巻物のようにも見えるを昔の人はお経のようだと思ったのも頷けます。

▶︎ 参照:モクゲンジ縁起

成長過程のモクゲンジの種子4

8月下旬に落果していた種子

8月下旬に落ちていたモクゲンジの種子

以前に落ちていた未熟な種子は黒くて艶やかに輝いていましたが、この頃に落ちていたものは日焼け後に皮膚が剥けるように表面の薄皮が剥がれているものが多いです。

8月下旬に落ちていた種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子

表面の薄皮が剥がれると光沢のないマットな黒い地が現れます。

種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子

大きさは約6mmで、やや堅め。

種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子の木質の皮を剥いて中身を取り出したところ

木質となった種皮の中から渋皮のようなものに包まれたが出てきました。

モクゲンジ堅い殻から取り出した渋皮に包まれた胚

渋皮のような種皮は乾燥・密着して剥がしにくいので水分を少し含ませてから剥いてみました。

種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子の木質の皮を剥いて取り出した黄色くなった胚

中は黄色くなって干しいもみたいにねっとりしてペタペタします。

種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子の中身を取り出したところ

その後、乾燥するとやや小さくなりました。堅くなった木質の種皮の中ではこのように乾燥して発芽までの条件が揃うまで待機するのだと思われます。

種子の表面の皮が剥けているモクゲンジの種子の乾燥した中身

8月下旬に落果していた種子には、このようにほぼ熟したが多く見られました。

5年前のモクゲンジの種子

モクゲンジ果皮種子

5年経過したモクゲンジの果皮と種子

これは5年前に拾ったものです。

5年経過したモクゲンジの種子

外側の光沢のあった種皮が一部剥げてきていますが、大きな変化はありません。

モクゲンジの種子

ムクロジと同じで、種子は経年劣化も少なく堅牢なようです。

モクゲンジの種子と5円玉 大きさの比較

大きさは5円玉の穴位です。

モクゲンジの種子 拡大

を割って中を見てみました。

少々、歪んでしまいましたが、思いの外、簡単に割れました。

5年経過したモクゲンジの種子の種皮を割った中身

中身はムクロジ種子と似ていて、栗の渋皮のような種皮がしっかりとまとわりついて剥がれにくくなっています。そこで種子内部に水分を含ませると渋皮がが剥けやすくなって仁も膨張してきました。

5年経過したモクゲンジの種子の種皮の内部

割った時に若干キズがついてしまいましたが、子葉幼根となる部分がお経のように丸まっています。

5年経過したモクゲンジの仁に水分を含ませて膨張したところ

5年前のモクゲンジの種子の中

5年前に拾ったモクゲンジ種子の中の様子を見てみました。

堅いと思われたは思いの外、簡単にパリッと割れて、中から渋皮のような薄皮に包まれたが出てきました。薄皮はがっちりとまとわりついて剥がすのは困難。

5年経過した種皮に包まれたモクゲンジの仁

そこで、この種皮と思われる薄皮に水分を含ませてふやかしてから剥がしてみることに。

吸水すると6mmくらいの大きさに膨張。やや剥がしやすくなったものの、渦巻き状の子葉部分を包み込むように薄皮は食い込んでいて、小さいためにうまく剥がせずに傷つけて内側の子葉も外れてしまいました。

5年経過した種皮に包まれたモクゲンジの仁を覆う渋皮のような薄皮を剥がしているところ

薄皮を取り除いてから、元にあったと思われる位置に子葉を収めてみたのでやや正確性にかけ不格好です。

5年経過した無患子とモクゲンジの仁を斜め上から見たところ

吸水したは膨れてロールケーキのような雰囲気となりました。

5年経過した無患子とモクゲンジの仁を横から見たところ

まだ発芽できる種子だったように見えます。


ムクロジの胚との比較

同時期の5年前に採取したムクロジとの比較。同じように吸水させたものです。

5年経過した無患子とモクゲンジの仁を上から見たところ

フウセンカズラの胚との比較

同時期の5年前に採取した大きさの似ているフウセンカズラとの比較。同じように吸水させたものです。

モクゲンジの方は吸水後の経過時間が長く、白っぽくなっています。

5年経過したフウセンカズラとモクゲンジの仁を正面から見たところ

フウセンカズラの根となる部分はモクゲンジと比較すると小さく、種皮も食い込んでいないため、比較的簡単に取り出すことができました。子葉となる部分がバレーボールのようにきれいに丸まっています。

吸水させた5年経過したフウセンカズラの仁

ちょっと寄り道:栴檀
センダン

センダンセンダン科の落葉高木。

は羽状複葉で縁に鈍鋸歯があり、互生します。

センダンの木

暖地に自生しますが公園樹や街路樹として栽植されることが多いです。

下から仰ぎ見たセンダンの葉
下から仰ぎ見たセンダンの葉

初夏に淡い紫色の5弁花を多数咲かせます。

初夏に紫色の花をつけるセンダンの木
紫色の花をつけるセンダンの木
初夏に咲くセンダンの花

秋に黄色の丸い実をたくさんつけます。果実は核果。

晩秋にたくさんの実をつけるセンダン
青いセンダンの実
黄色いセンダンの実

学名: Melia azedarach L.
英名: White cedar, Chinaberry
別名:アフチ、オオチ、オウチ、アミノキ
   白檀の別称

果実はしもやけ、樹皮は虫下し、葉は虫除けにするなど薬用植物として用いられた

※「栴檀は双葉より芳し」のセンダンは香木の白檀のことで、このセンダンではありません。


さらに寄り道:栴檀
ビャクダン(白檀)

白檀の花
ビャクダンの花
photo by Wikimedia Commons
白檀の実
ビャクダンの実

学名: Santalum album L.
英名: Sandalwood
梵名:チャンダナ(candana)

インド原産のビャクダン科ビャクダン属の半寄生の熱帯性常緑樹。雌雄異株。

爽やかな甘い芳香が特徴で香木として利用される

オオモクゲンジ

オオモクゲンジフクロミモクゲンジもまたムクロジ科の樹木です。

オオモクゲンジの木

オオモクゲンジモクゲンジとよく似ていますが花期が異なり初秋開花します。

開花し始めのオオモクゲンジの花
オオモクゲンジの花と枝葉
美しいオオモクゲンジの花
黄色いオオモクゲンジの花
オオモクゲンジの花

タイミングが良いとピンク色風船状黄金色が一緒に見られるため、観賞用として人気があります。風船状モクゲンジと比べて大きめで丸い感じです。

花と実の美しいオオモクゲンジ
花と実の美しいオオモクゲンジ
photo by: Mauroguanandi

また、モクゲンジとは異なり、二回羽状複葉で、をつける頃の成木にはに切れ込みギザがありません。

オオモクゲンジの葉

(但し、幼木には重鋸歯があります。)


きれいなピンク色の実をたくさんつけるオオモクゲンジ
木にわずかな実の残るオオモクゲンジ
きれいなピンク色のオオモクゲンジの実

▶ オオモクゲンジの実と種子


オオモクゲンジ ムクロジ科 モクゲンジ属

  • 学名:Koelreuteria bipinnata Franch
          Koelreuteria integrifoliola Merr.

    英名:golden-rain tree
    別名:フクロミモクゲンジ袋実木欒子
          フクワバモクゲンジ復羽葉木欒子
           マルバモクゲンジ丸葉木欒子
  • 中国及び朝鮮半島の南部を原産とする
    高さ10〜20mぐらいになる落葉高木
    秋に美しく黄葉する
  • 葉は奇数二回羽状複葉
    小葉は卵形で成木には鋸歯がないが
    幼木には重鋸歯がある
    モクゲンジより葉が大きい
  • 雌雄同株
    初秋に枝先に大型の円錐花序をつけ、
    小さな黄色い花を密に咲かせる
    花と実が同時に見られる時期がある
  • 直径7mmぐらいの黒い種子をつける
  • 風船のように膨れ3裂する蒴果で
    果皮は黄緑色からピンクになり、
    やがて色褪せる

オオモクゲンジの実と種子

のように見えるオオモクゲンジの実はピンク色で明るく綺麗です。

花のように美しいオオモクゲンジのピンク色の実

10月上旬、落ちたオオモクゲンジを見てみると、ピンク色風船の中には淡い黄緑色〜クリーム色の種子がついていました。

淡い黄緑色〜クリーム色の種子が覗いて見えるオオモクゲンジのピンク色の実

ほんのり枯れ色になった風船の中の種子は黒色になっていました。

黒い種子が覗いて見えるオオモクゲンジの枯れ色になった実

しばらくすると、は褪色して枯れ色になってしまいます。

枯れ色になって木に残るオオモクゲンジの実
枯れ色になって木に残る黒い種子のついたオオモクゲンジの実
地面にたくさん落ちている枯れ色のオオモクゲンジの実
地面に落ちた枯れ色のオオモクゲンジの実
地面に落ちた枯れ色のオオモクゲンジの実の中の種子
地面に落ちた枯れ色のオオモクゲンジの実の中の種子
11月上旬のオオモクゲンジの実

種子は黄緑色から白っぽくなって、徐々に赤みを帯びて最終的には黒褐色になります。

種子が赤みを帯び始めたオオモクゲンジの実
淡い黄緑色から赤みを帯び始めたオオモクゲンジの種子
淡い黄緑色から赤みを帯び始めたオオモクゲンジの未熟な種子
オオモクゲンジの未熟な種子の中の胚
オオモクゲンジの未熟種子の中の胚
種子が赤くなったオオモクゲンジの実
赤くなったオオモクゲンジの種子
きれいに赤くなったオオモクゲンジの種子

オオモクゲンジ種子の形や構造はモクゲンジと似ています。

暗赤褐色になったオオモクゲンジの種子
暗褐色になったオオモクゲンジの種子
黒褐色になったオオモクゲンジの種子

オオモクゲンジとムクロジ

完熟過程のオオモクゲンジ種子は意外にも宝石のようにキレイです。

追熟中のオオモクゲンジとムクロジ

時期を同じくして、追熟中に美しく変化しているムクロジと一緒に記念撮影してみました。

追熟中のオオモクゲンジとムクロジの種子

完熟前の種子は同じような色の変化を辿っていました。

追熟中の暗赤褐色のオオモクゲンジとムクロジの種子

但し、ムクロジ種子は時間をかけてじっくりと熟すため、完熟する前に果皮を剥いてしまうと、保護環境が悪くなるのか、一文字の切れ込み部分が開いたり、がよって健全な種子にはならないようです。

オオモクゲンジの成長1

オオモクゲンジの成木はに鋸歯が無いのが特徴ですが、若い状態の時にはギザギザがあってモクゲンジと良く似ています。

順調に育つ実生のオオモクゲンジ
オオモクゲンジの若葉
モクゲンジと似るオオモクゲンジの若葉

10月下旬、オオモクゲンジ黄葉をし始めました。樹高は約36cmとなりました。

ムクロジの幼木と似た雰囲気に育ちました。は相変わらず切れ込みがあります。

オオモクゲンジの幼木
オオモクゲンジの幼木の葉

徐々に黄葉し、11月下旬、ムクロジとほぼ同じ頃に落葉。中にはピンク味を帯びているもあり、きれいでした。

オオモクゲンジの黄葉
オオモクゲンジの落葉していた葉

オオモクゲンジの冬芽と葉痕

3月上旬頃のオオモクゲンジ冬芽葉痕の様子です。

ムクロジと似ていますが、があるのが大きな違いです。

オオモクゲンジの葉痕と冬芽

参照:落葉後のムクロジの葉痕 ▶


オオモクゲンジの芽吹き

4月上旬、オオモクゲンジ芽吹き始めました。

オオモクゲンジの芽吹き

がピンク色なのと関係しているのか新芽もピンク色で褐色の産毛に覆われています。

若葉を展開し始めたオオモクゲンジ

その後の様子は

▶ オオモクゲンジの成長2

オオモクゲンジの成長2

4年目のです。相変わらず重鋸歯があります。

オオモクゲンジの新緑
オオモクゲンジの新緑
裏から見た4年目のオオモクゲンジの葉
裏から見た秋のオオモクゲンジの葉

大きくならないようにして育てていますが既に2mを越えています。


5年目の芽吹きです。

オオモクゲンジの芽吹きと葉痕
発芽から5年目のオオモクゲンジの芽吹き
発芽から5年目のオオモクゲンジの芽吹きの葉

5年目のです。相変わらず重鋸歯があります。表と裏面。

5年目のオオモクゲンジの羽状複葉の葉-表
5年目のオオモクゲンジの羽状複葉の葉-裏

秋には綺麗に黄葉した後、葉柄ごと落葉しました。

5年目のオオモクゲンジの黄葉した羽状複葉の葉

6年目のも重鋸歯があります。

6年目のオオモクゲンジの鋸歯のある羽状複葉の葉

モクゲンジとオオモクゲンジ

モクゲンジオオモクゲンジ種子は大きさが近いですが、ムクロジと比べるとかなり小粒の種子です。

フウセンカズラとモクゲンジとオオモクゲンジとムクロジの種子の大きさの比較
種子の大きさの比較

どちらの種子発芽直前の割れ込みの入ったの種子と形が似ています。

オオモクゲンジとモクゲンジの種子拡大写真
モクゲンジ(左)とオオモクゲンジ(右)の種子
モクゲンジの種子拡大
モクゲンジの種子
オオモクゲンジの種子拡大
オオモクゲンジの種子

どちらもの構造はフウセンカズラと似て、3室に分かれた風船状の中央部に種子がつきます。

風船状の袋といっても閉じてません。

オオモクゲンジとモクゲンジの実と種子
モクゲンジ(左)とオオモクゲンジ(右)の実

モクゲンジオオモクゲンジは1室に1〜2個の種子がなります。

因みにフウセンカズラムクロジ科の植物で未熟な時のムクロジの種子も同じ構造です。

モクゲンジとフウセンカズラの実 比較 ▶


フウセンカズラムクロジは似ているけれど、種子を3つにするか1つにするかで決定的な違いが生じています。その事に関してはコチラ。

参照:ムクロジの花 受粉後 ▶


モクゲンジの種子とその断面の精細な写真が掲載されているすばらしいページがありましたので興味のある方はご覧になってください。

モクゲンジ種子 ▶ フラボンの秘密の花園

種子の中が経巻の形!? に見えます。

数珠の迷宮
モクゲンジとムクロジ

モクゲンジ木欒子)とムクロジ(無患子)はどちらも数珠に使われる木の実として知られていて、その起源はとあるお経に遡ります。

お釈迦様が「木槵子モクゲンジ)という木の実で作った数珠を使って佛法僧三宝の名を唱えるとご利益が得られる」と数珠について説かれた仏説 木槵子経 (もくげんじきょう) 。

参照:国立国会図書館デジタルコレクション
大蔵経抜鈔 [99] コマ番号24/99 仏説木槵子経

佛説木槵子経

時難國王名波流離來到佛所白佛言世
尊我國邊小頻歳寇賊五穀勇貴疾病流
行人民困苦我恒不得安臥乃至唯願世
尊特垂慈愍賜我要法使我日夜易得修
行未來世中遠離衆苦

佛告王言若欲滅煩悩障報障者當貫
槵子
一百八以常自隨若行若坐若臥恒
當至心無分散意稱佛陀達摩僧伽名乃
過一木槵子如是漸次度木槵子若十若
二十若百若千乃至百千萬若態滿二十
萬遍身心不亂無諸詔曲者捨命得生第
三燄天衣食自然常安楽行若復能滿一
百萬遍者當得斷除百八結業始名背生
死流趣向泥洹未斷煩悩根獲無上果
佛説醫喩經

(前半部抜粋)

この木槵子という難しい植物の名前がモクゲンジだったのか、ムクロジであったのかが、明確でなかったのが混乱の元だったのです。


元々サンスクリット語の原典に書かれていた木の実の存在を気候風土の異なる当時の異国人が漢訳する際に正しく知っていたのかは疑問です。

木槵子が原典通りの木の実だったとしても木槵子なる植物は日本に自生していませんでした。

木槵子と呼ばれる植物は仏教文化と共に渡来したので、この頃から数珠に使われる黒くて堅い木の実として、モクゲンジムクロジの混同が始まったと思われます。

※ここでいう木の実は正確には種子のこと。

モクゲンジの種子とムクロジの種子 比較写真
ムクロジ (左)とモクゲンジの種子 (右)

この両者は種子の特徴が似ているだけでなく、どちらも羽状複葉をつける外来の落葉高木という特徴も似ています。

さらに名称に難読漢字があてがわれたせいで、識別する際に混同・混乱が起こり、今日に至っているように見受けられます。(以下 参照)


モクゲンジの名前の変遷(説)

木欒子モクランシ
 ↓
モクロシ
 ↓ 間違え
ムクロジ
 ↓ 訂正
木患子モクカンシ
 ↓
モクゲンジ
 ↓
木欒子モクゲンジ

ムクロジの名前の変遷(説)

 
 ↓
木桓子
 ↓
木患子木槵子モクカンシ
 ↓ 間違え
モクゲンジ
 ↓ 訂正
無患子ムクロジ


数珠の起源の木槵子はどっち?

個人的には仏説木槵子経木槵子種子耐久性質感珠数としての触り心地により、ムクロジ種子だと思っています。

ムクロジとモクゲンジの略式念珠の比較
略式念珠風の数珠
ムクロジ (左)  モクゲンジ (右)

モクゲンジ種子略式念珠風に繋げてみたところ、軽くて触り心地もまずまずで、女性には使い勝手の良い大きさのように思えました。

(因みに親玉ムクロジ種子を使用)

ですが、種子を集めてみようとした時、綺麗なものが少なく、繋げた時に輪がいびつになるというのが難点でした。

▶ モクゲンジの実9 秋から冬の完熟期

その点、ムクロジ種子は多少、汚れていても洗って磨けば綺麗になるものが多かったのも利点として挙げられれます。

モクゲンジの種子とムクロジの種子を繋げたものの比較

試しに、お経に書かれているように108個のムクロジの種子数珠状に繋げてみました。

108個のムクロジの種子を繋げた数珠

使用した種子は14mmくらいの中粒の中身を取り除いたもの。

長さは151cm、重さは122g。

ムクロジの種子108個を繋げた数珠

擦れ合う音が昭和の玉のれんを思い起こさせます。


モクゲンジムクロジについての考察はムクロジのページに詳しく掲載しているので、興味のある方は参考にしてみて下さい。

▶ 縁起の良い木の実 数珠

▶ 仏説木槵子経の木槵子とは?

▶ ムクロジの名前のルーツ

モクゲンジ縁起

重修本草綱目啓蒙欒華 の項目にセンダイ葉ノボダイジュのハナ、木名ムクレニシノキとしてモクゲンジのことが記述されています。

重修本草綱目啓蒙-木欒子の頁
重修本草綱目啓蒙-木欒子の次頁
重修本草綱目啓蒙-木欒子の次次頁

この中にモクゲンジお経に関する記述があります。

河内の国(現在の大阪府南東部)の聖徳太子開基といわれる道明寺建立の際に埋めた五部の大乗経の上から自然とモクゲンジが出現したという縁起により、このモクゲンジの種子を諸国の寺に持ち帰って栽培する者が多かったという内容が記されています。

重修本草綱目啓蒙-木欒子の頁に記載された道明寺と欒樹に関する縁起の記述

画像の出典:国立国会図書館デジタルコレクション
重修本草綱目啓蒙 35巻. [24] コマ番号35-36

重修本草綱目啓蒙

江戸時代の本草書 本草綱目啓蒙の重修版

本草綱目は明の李時(1518-1593)による薬物書。これに基づいて本草家小野蘭山が数多くの和漢古書を引用し、和名、説明を加え自説を加えるなどしたものが本草綱目啓蒙


また、平安時代、菅原道真公が道明寺で書き写した五部の大乗経を埋めた経塚から、モクゲンジが育ったという伝承を題材に作られた謡曲 道明寺霊験譚もあります。

真偽のほどは分かりませんが、モクゲンジの種子の形がお経を巻いたような形をしていることに起因していると思えます。数珠に用いられたと言われていたことも仏教との繋がりを感じます。

横から見た水分を含んで膨張した5年経過したモクゲンジの仁

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モクゲンジ