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不思議で楽しい植物の世界
モクゲンジ
ムクロジ 番外編
モクゲンジとムクロジ
モクゲンジとムクロジは同じムクロジ科の植物で、どちらも堅くて黒い種子がなり、数珠の起源説があります。
参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶
モクゲンジ(木欒子)は モクゲンジ属
ムクロジ(無患子)は ムクロジ属
この両者は同様に外来した落葉高木で羽状複葉の葉をつけ、梅雨頃に大きな円錐花序を多数立ち上げて蜜源となる花を大量に咲かせて実をつけます。
そして、黒くて堅牢な丸い種子がなるという共通項の多い似た雰囲気の樹木だったので昔から混同されてしまった経緯があり、ややこしい関係となっていたのでした。
モクゲンジは大量の実が提灯のようにぶら下がり、熟す頃には袋状の果皮が褐色になり、裂開して黒くて丸い種子が姿を現します。
果皮は枯葉のような質感で脆いです。
種子の大きさは5〜6mm。
ムクロジも同様に大量の実がなりますが、形や質感がまったく異なります。
ムクロジの実は丸いポットのような形で、熟すと半透明の明るいオレンジ色になります。種子は高所から落ちても割れることのない丈夫な果皮に包まれたまま散布されます。
種子の大きさは13〜16mmです。
モクゲンジと比べると、かなり大きくて堅いです。
ムクロジに関して詳しくはこちら
参照:ムクロジ ▶
モクゲンジとムクロジは、その名前が二転三転、何度も入れ替わったりして現在の名称に落ち着きました。
しかし、未だに数珠のルーツがどちらであったかは定かではありません。
参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶
モクゲンジは大量の種子をつけますが、ザラつく灰褐色の斑模様のあるものが多く、数珠の珠には適さないように思っていました。
ですが、8月中旬から下旬頃にかけて比較的キレイな種子があるのを確認できました。
そこで、黒々として光沢のある比較的大きめの54個のモクゲンジの種子を選抜してムクロジの種子1個と数珠のように試しに繋げてみとところ、触り心地・使い勝手はなかなか良いです。
ただし、ムクロジと比べると木質部が薄いため堅牢性は弱そうです。また、きれいな種子が少ないのも残念です。
モクゲンジの種子に手軽に穴のあけて見たい方はコチラ
▶︎ 参照:モクゲンジの種子に穴をあける
花に関してはモクゲンジの方が華やかで美しいです。
そんなモクゲンジがどんな植物であるかを追ってみました。
さらにオオモクゲンジという似た樹木についても触れています。
モクゲンジ(木欒子) は中国原産といわれるムクロジ科モクゲンジ属の落葉高木で、日本には割と古くから渡来していたと思われます。
栴檀葉の菩提樹(センダンバノボダイジュ)とも呼ばれ、種子を数珠にすると言われているために寺院に植えられていることも多い樹木です。
自生か栽培か、逸出したものかは不明ですが、本州から九州の日本海側の海岸に群落を形成している場所があります。
逸出(いっしゅつ):栽培している植物が管理下から外れて野生化すること
モクゲンジは夏にとても美しい花を大量に咲かせ、Golden-rain tree、
黄金の雨の木 という素敵な英名を持ち、海外では景観木として人気のある樹木です。また、干ばつや大気汚染にも強い耐性があるため、都市部では街路樹として利用されているようです。
実はフウセンカズラを逆三角形にしたホオズキとも似た雰囲気の風船のような蒴果です。
大量の花のような黄緑色の若い実と花が混在する様子も賑やかで綺麗。
かわいらしい実が提灯のようにぶら下がった様子も楽しくて魅力的。
薄い果皮が裂開すると種子が姿を現します。
完熟前の種子は黒い珠のようです。
ツヤとハリがあって輝いています。
秋には種子が熟して堅くなります。
晩秋から初冬にかけて、木の上から下の方へとずれずれに黄葉し始め、落葉します。
木にはたくさんの種子をつけた実が残ります。
完熟して黒く堅くなった種子の大きさは5〜6mm位で数珠に使われたといわれています。
欒樹(ムクレンジノキ)、モクレンジ、ムクレニシとも呼ばれます。
※欒はセンダンの古名ともあります。
参照:ちょっと寄り道:栴檀(センダン) ▶
木患子を(モクゲンジ)という読み方をするのはムクロジの中国名である木患子を誤ってモクゲンジにあてたためといわれています。
参照:数珠の迷宮 モクゲンジとムクロジ ▶
モクゲンジ ムクロジ科 モクゲンジ属
- 学名:Koelreuteria paniculata
英名:goldenrain tree
別名:センダンバノボダイジュ
ムクレンジノキ(欒樹)
ムクレニシ
- 日本では中部以西に分布する
高さ10mぐらいになる落葉高木
秋には黄葉する
- 葉は奇数一回羽状複葉
小葉は卵形でふちには不ぞろいの
粗い鋸歯がある
- 雌雄同株
6月中旬〜7月中旬頃に
枝先に大型の円錐花序をつけ、
小さな黄色い花を密に咲かせる
- 直径5〜7mmの黒い種子は堅牢で
数珠に使用されたといわれる
- 風船のように膨れ3裂する蒴果で
熟すと果皮は褐色になる
- 寺院などに植栽されていることが多い
- 樹高は通常、高さ5〜12m
25mに達することもある
枝は広がるが、輪郭は丸みを帯びる
- 干ばつや大気汚染にも強く
樹形が美しく花も果実も楽しめるため
海外では街路樹として利用されている
栴檀葉の菩提樹の別名があるように葉はセンダンの特徴である羽状複葉で縁に鋸歯があって、新緑がとても美しい木です。
4月中旬から下旬にかけての様子。
5月中旬頃の様子
6月上旬頃の様子。
年によって異なりますが、6月中旬から下旬頃に蕾が姿を現します。
モクゲンジの主役は美しい若葉から花へと移行します。
その後の様子は
▶ 参照:モクゲンジの花
秋から初冬にかけて黄葉し、その後葉を落とします。
4月上旬、モクゲンジの芽吹き。
その後の様子は
▶ 参照:モクゲンジの葉
モクゲンジは6月中旬から7月中旬に枝の先に大型の円錐花序をつけ、小さな黄色い花を多数咲かせます。
蕾の多い時期は黄緑色っぽい花序。
開花が進むにつれて、豪華な黄色の円錐花序となります。
学名は Koelreuteria paniculata。
小種名がpaniculata (円錐花序) という名前の通り、見事な円錐花序を立ちあげます。
※モクゲンジ属を指すKoelreuteriaは
Joseph Gottlieb Koelreuter(ケルロイター)という18世紀のドイツの植物学者の名前よりつけられています。
モクゲンジには雄花と雌花があり、同一花序に混在しています。
どちらも花弁の基部の付属体が黄色から次第に赤い色に変化して色鮮やかになります。
▶ 参照:モクゲンジの雄花
▶ 参照:モクゲンジの雌花
鮮やかな黄色の花には朱色の付属体がついていて、チャームポイントとなっています。ムクロジの花と比べると、色は派手で美しいです。
花は2〜3週間と比較的長い間見ることができます。花の終わり頃には円錐花序に黄緑色のたくさんの実が混在します。
花期には遠目からでも目立つ黄色い樹冠のモクゲンジ。
日本では仏教と縁のあることから寺院で見かけることの多い木ですが、
海外ではゴールデンレインツリー という洒落た英名で呼ばれ、公園等に景観木として植栽されています。
花盛りの頃の黄金色の花序は見応えがあります。
英名がGolden rain treeというだけあって、黄金色に例えられる大量の雄花は花粉を出して役割を終えると、雨の雫のような音を立てて落ちます。花盛りを終えようとする頃に一斉に花が落ちる様子を黄金色の雨の降る木と表現したのでしょう。
アスファルト道路に落ちた大量の黄色い花は車が通過するたびにふわっと舞い上がって風紋のように姿を変え、花筏のよう。路上に散った桜の花を思い起こさせます。
美しい黄色の花は目薬や黄色の染料としても使われるそうです。
開きたての雄花。
葯には毛が生えています。
雄しべの花糸の下半分あたりにも毛が生えています。
花弁の付属体が黄色から朱色に変化して華やかになります。
葯が開き始めます。
花粉が出ています。
落花したモクゲンジの雄花
開きたての雌花。
雌花も雄花も花序の中でずれずれに開花するのでいろいろな状態の花が混在しています。
雌しべが目立つのが雌花で、雄しべが機能しているかどうかは不明。
葯同士がくっついてドーナツみたいです。中央の出っ張りが雌しべ。
雄花同様、付属体が朱色に変化して華やかな彩りとなります。
雄しべの花糸が伸びて、ドーナツ状の葯が離れて広がります。
雄花と比べて花糸は短いです。
花粉が出ることなく、雄しべは機能していないように見えます。
その後の雌花の様子は、
▶ 参照:受粉後のモクゲンジの雌花
受粉を終えた雌花が袋状の実になり始めています。
2〜3週間の間、次々と花が咲いては実になるため、新しく咲いた花と実が混在する時期があります。
その後の様子は、
▶ 参照:モクゲンジの実1
モクゲンジの花は蜜と花粉が豊富な虫媒花で虫たちに大人気です。
花期には羽音が木の周りでブンブン鳴り響き、大賑わいです。
モフモフとしたトラマルハナバチは可愛らしい常連さん。
昆虫たちへのプレゼントが功を奏して、受粉率は抜群!たくさんの実がなります。
▶ 参照:モクゲンジの実1
花期が終盤となった頃、遠目には花のようにも見える未熟果と黄色の花が高密度で樹冠を彩っています。
びっくりするほどのたくさんの実がついていて嬉しくなります。
樹下に行ってみると、未熟果が大粒の雨のような音をたててパラパラと落ちてきました。
うっかり踏んでしまった時にパツンと弾ける音がしてびっくり。
大量の花が実を結び、過剰分は落果しているようです。
落ちていた実はフウセンカズラの実のように風船状に膨らみ、質感も似ていて、ぬくもりさえあって可愛く感じました。
風船のように空気が入って膨らんでいますが、形は三角状卵形で、先端は尖っています。
フウセンカズラとホオズキを合わせたような雰囲気の実をしています。
早期に果皮が裂開するだけあって、フウセンカズラの実と違って気密性は低く、少し力が加わるだけで空気は抜けてしまいます。
▶ モクゲンジとフウセンカズラの実の比較
3つの部屋に別れた風船の中を見ると未熟な種子がついていました。
1室に2個の種子がついていますが、大きさには個体差があります。
その後の実の成長の様子は、
参照:モクゲンジの実2 ▶
フウセンカズラはモクゲンジと同じムクロジ科の植物です。そのせいか、実の雰囲気が似ています。
7月中旬、嵐の翌日にモクゲンジの黄緑色の風船の実が大量に落ちていました。
そこで、幾つかの拾った実と似た頃合いのフウセンカズラの実を比較してみました。
(暑さのせいで少々へたれています。)
正面から見ると、雰囲気や質感は似ていますが、モクゲンジの実の方はハートを細長くしたみたいな逆三角形の実です。また、モクゲンジの実はフウセンカズラのように袋が完全に閉じていません。
ですが、モクゲンジの種子が海流にのって日本に漂着し、自生するかのように日本海側の海岸に根付いたのだとすると、フウセンカズラ同様、風散布&水散布で種子が拡散されたとも考えられます。フウセンカズラほど水散布に適していなかったため世界の広域には散布されなかったのかもしれません。
▶ 参照:水散布で旅するフウセンカズラ
モクゲンジの実は3室に分かれてます。フウセンカズラと同じですが、仕切りは膜質ではなく、外の袋と同じ質感。種子のついている上部だけにあります。
種子は1室につき1〜2個でした。
種子の内部はフウセンカズラというよりもムクロジに似ています。
▶ 参照:ムクロジの種子 成長過程
同じ環境で保存していた5年後の実を比較すると、フウセンカズラの実は触ってもドライフラワー状態でしたが、モクゲンジの果皮は少しの力でポロポロと砕けてしまいます。
一見、似ていても果皮の質や丈夫さは異なるようです。
花期終了前に実っているたくさんの未熟果は風船状の果皮がまだ閉じているものや裂け始めたもの、裂けて中の種子が見えるもの等、さまざまのものが混在状態。
袋状の蒴果の袋は早々に開きます。
その後の様子は、
▶ 参照:モクゲンジの実3
7月中旬から下旬、すっかり花の姿がなくなった頃のモクゲンジは花のようにたくさんの黄緑色の実をつけていました。受粉率が良いのは昆虫たちのおかげでしょう。
種子は順調に育っているようですが、個体差が大きく、大きめの種子はグリーンピースみたいな雰囲気。
果皮はさほど丈夫でもなく、虫食い痕なども多々見られます。
木の下にはたくさんの未熟果が落果していました。
落果していた未熟果の中。
すでに種子が外れているものもありました。
その後の実の成長の様子は、
▶ 参照:モクゲンジの実4
7月下旬、モクゲンジの木は大量の実をつけています。
実の構造上、風の吹き抜けやすい所では落ちやすいようで、多くの実が樹下に落ちていました。
木になっているものも落ちているものも実の中の種子の大きさや成長具合はさまざま。最初の花が咲いてから最後の花が咲き終わるまで3週間近くの差があったので当然の結果ではあります。
生理落果もあって、不稔のものも多く見られます。
落ちたモクゲンジの実の中から比較的大きくて綺麗な種子のついている実を選んで、成長過程を知る参考としました。
まだ黄緑色でも種子が大きくなって状態の良いものもありました。
種子は黄緑色から紫がかって黒色に変化するようです。
既に完熟間近のような雰囲気の種子もあります。
熟したかのように見える実ですが、まだ水分が多くてやや大きめ。種子はそれほど堅くありません。
この頃の綺麗なモクゲンジの種子を見ると、数珠にするというのもアリと思えます。
この種子について詳しくは、
▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子
その後の実の成長の様子は、
▶ 参照:モクゲンジの実5
8月上旬、モクゲンジの実は黄緑色のままですが、果皮はやや乾燥して中の種子は大きくなっています。
相変わらず多くの実が樹下に落ちています。
落ちた実の果皮は乾燥が進み、褐色に色づき始めたものが目立ちます。
果皮は少々傷んでいたり、虫にやられたものもありますが、中の種子は健全そうに見えるものが多く見られます。
成熟過程の色とりどりの種子は宝石のようで綺麗です。
この時期の大粒のモクゲンジの種子は8mm弱で、ツヤとハリがあって黒く輝き、このまま数珠になったら良さそうに見えますが、まだ堅くはなっていません。
この種子に穴を開けて乾燥させたところ、6mm弱となり、堅くはなりましたが、かなり小さくなった印象があります。
乾燥前の大粒の種子と比べると違いが感じられます。
その後の実の成長の様子は、
▶ モクゲンジの実6
8月中旬、木になっている実はまだ黄緑色のものが多いですが、開いて中の見える種子は黒いものが増えていました。
樹下には褐色になったモクゲンジの実が以前にも増して、たくさん落ちていました。
中の種子は黒いものばかりです。
むきだしの黒い種子もあちらこちらに散らばっていました。
種子が外れた果皮は軽くなって飛ばされたり、踏まれて砕けたりして、やや重い種子だけが落果した付近に残ったのでしょう。
その後の実の成長の様子は、
▶ モクゲンジの実7
8月下旬、木になっている実は褐色になったものが増えていました。
中には赤褐色のきれいな実も見られます。
ですが、多くのモクゲンジの果実は色づいたというよりは枯れ色です。
残念ながら美しくはありません。
果序によっては全部が褐色になっているものもあり、秋が深まる前に熟すものも多いようです。
落ちていた実も熟して落ちたもののように見えるものが増えました。
この種子について詳しくは、
▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子4
その後の実の成長の様子は、
▶ モクゲンジの実8
9月上旬、木になる全ての実が褐色というか枯れ色になっていました。
薄く乾燥してパリパリとした果皮は丈夫でなく、破れて種子がむき出しになるものもあります。
この頃になると種子は黒に灰色を帯びたものばかりで、意外にも綺麗な黒色の種子は少ないようです。
落ちていた実と種子も同様です。
数珠を作るのなら、完熟手前の綺麗な種子を拾って乾燥させたものの方が良いように思えます。
中にある胚は水分が抜けて完熟しているようなものもありました。
緑色から黄色へと変化中の胚。
栗きんとんのような色の胚などほぼ完熟と思われるものが多数見られました。
その後の実の成長の様子は、
▶ モクゲンジの実9
9月中旬、実は暗褐色になり、ちらほらと黄葉も見られるようになりました。
実の中で待機していた種子も殆どが熟してきたようです。
乾燥した種子は7mmぐらいの大きめのものが多く見られました。
ですが、数珠にしたくなるような黒々とした綺麗なものは見つけられませんでした。
種子を覆う皮膜なようなものに空気が入るのか、灰色のムラムラ模様がついたものばかり。
木なり完熟になれば、大きめで艶やかな黒い種子が多々見られると期待していたのですが、残念な結果となりました。このことが、モクゲンジの数珠がムクロジほど作られていない一因となっているような気がしてなりません。
その後の様子は、
▶ モクゲンジの実10 秋から冬の完熟期
10月上旬頃から房なりの実と黄葉した葉が一緒に見られるようになりました。
残念ながら、実が枯れ色のせいで、あまり美しく感じられません。
それに対してオオモクゲンジは似た木ですが、キレイなピンク色の実と黄色の花が初秋に同時に楽しめる為、観賞価値が高く、人気があります。
モクゲンジの黄葉は部分的で、早々に落葉するものが多く、イチョウのように一斉に黄葉しません。
場所によっては枝に残る実が減ってきました。
木の下には実が果穂ごと落ちていたり、落葉も見られるようになってきました。
やはり、真っ黒な種子は見当たりませんでした。
薄くて脆い果皮は、落ちると風化が速いようで、砕けて形が無くなり、種子と落葉した葉と長い葉柄・果柄だけが目立ちます。
種子もそれほど堅牢でないらしく、踏まれてつぶれたり砕けているものも多く見かけました。
樹下にはたくさんの実の落ちた形跡があり、風散布と思われていた実はさほど遠くに飛ばされていない様子が意外でした。
風船のような形をした脆い果皮にはどんな役割があるのかが疑問として残りました。
そんな頼りなげな実ですが、時として冬になっても落ちないものもあります。
7月下旬に落ちていたモクゲンジの実の中には成長過程がわかるような種子がついていたので、拾って様子を観察してみました。
光沢のある大きめの黄緑色の種子。
約7mmあります。
縦半分に切ってみると、中は充実。
渦巻いて見えるのは子葉となる部分で、その先に幼根がついています。
同じような黄緑色の種子。
こちらは種皮を剝いてみました。
柑橘類の白いわたのような質感の薄い皮に覆われた胚が出てきました。
薄皮は胚に密着してペトついていて剥がすのが難しかったですが、幼根と緑色の子葉が重なった胚が確認できました。
同様の種子の中の様子。
こちらは巻いた子葉の中央に粘液が溜まっています。この液体から栄養をもらって胚が生育していると思われます。
外見は似たような種子でも、上の方の子葉が形成されつつあるような未熟な状態のものもありました。
外見は似たような種子でも、中には子葉になるものが生成している初期の段階のものもありました。
外見上、良い種子は大きくて光沢がありますが、明らかに悪い種子は小さくて表面がざらついています。
外見は良さそうに見える種子。
しかし、中を見てみると、そうではないものが殆どでした。
生理的落果した実だから当然の結果かもしれません。
こういった種子は水に入れると軽いので浮いてしまいます。
▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子2
連日の猛暑が続いた8月上旬、枝に残ったモクゲンジの実は7月下旬の頃と比べると、果皮は乾燥気味で、開いて中の種子が見えるものが多くなりました。
落ちていた実の中の種子は7月下旬に落ちていたものと比べると、大きめで、完熟に近づいているものが増えていました。
まだ8月上旬だというのに既に秋を感じさせるような彩りで綺麗です。
モクゲンジの種子は小さめで果皮も薄いため、比較的短期間で完熟するのかもしれません。
落ちていた実の種子は少しの衝撃で外れてしまうものが多いです。
大きさも様々。
種子(胚珠)は育つ時、心皮の胎座と呼ばれるヘソの緒のような部分にくっついています。
落果後に種子が外れないものは栄養を吸収中で完熟を目指している過程だったのでしょう。
種子が未熟なううちに外れてしまって残された胎座と不稔の種子
モクゲンジの未熟種子のへそ
これらの種子の中の様子は、
▶ 参照:成長過程のモクゲンジの種子3
8月上旬に落果していた種子の中は胚が出来上がって完熟を待つばかりと思われるものもいくつか見られました。
大きくて綺麗な種子を選抜。大きなものは約8mmもありました。
種子は黒くなってから乾燥が進んで堅くなるにつれて小さくなります。
少し色づき始めた、大きくてツヤのある黄緑色のモクゲンジの種子。
種皮は簡単に剥けます。
薄皮に包まれた胚が出てきました。フェルトのような質感の湿った薄皮に包まれています。
薄皮を剥くとツヤやかな胚が出てきました。
大豆でいえば枝豆ぐらいの成熟度合でしょうか。
大きくてツヤがある褐色に変化途中のモクゲンジの種子。
カッターで種皮を取り除いてみました。それほど堅くはありません。
薄皮に包まれた胚が出てきました。みかんの中身ぐらいの堅さで、薄皮は剥がれにくいです。
薄皮を取り除くと、ロールケーキ状に子葉と幼根が丸まった胚が姿を現しました。鮮やかな黄緑色をしていてペタペタとします。
熟したように見える黒いモクゲンジの種子。
種皮はそれほど堅くはありません。
薄皮に包まれた胚が出てきました。
薄皮はクリの渋皮に似ていて剥がしにくく、薄皮の内側にはやや粘性があります。
薄皮は子葉をラッピングするように巻きついています。
これから完熟に向けて乾燥するであろう胚はベタついています。
落果したものでしたが、健全そうな胚を持つ種子が見られました。
モクゲンジの胚はムクロジを小さくしたような雰囲気です。
▶︎ 参照:ムクロジの種子 成長過程
比較すると子葉が薄めなので、巻物のようにも見える胚を昔の人はお経のようだと思ったのも頷けます。
▶︎ 参照:モクゲンジ縁起
8月下旬に落果していた種子。
以前に落ちていた未熟な種子は黒くて艶やかに輝いていましたが、この頃に落ちていたものは日焼け後に皮膚が剥けるように表面の薄皮が剥がれているものが多いです。
表面の薄皮が剥がれると光沢のないマットな黒い地が現れます。
大きさは約6mmで、やや堅め。
木質となった種皮の中から栗の渋皮のようなものに包まれた胚が出てきました。
渋皮のような種皮は乾燥・密着して剥がしにくいので水分を少し含ませてから剥いてみました。
中は黄色くなって干しいもみたいにねっとりしてペタペタします。
その後、乾燥するとやや小さくなりました。堅くなった木質の種皮の中で胚はこのように乾燥して発芽までの条件が揃うまで待機するのだと思われます。
8月下旬に落果していた種子には、このようにほぼ熟したが多く見られました。
モクゲンジの果皮と種子。
これは5年前に拾ったものです。
外側の光沢のあった種皮が一部剥げてきていますが、大きな変化はありません。
ムクロジと同じで、種子は経年劣化も少なく堅牢なようです。
大きさは5円玉の穴位です。
殻を割って中を見てみました。
少々、歪んでしまいましたが、思いの外、簡単に割れました。
中身はムクロジの種子と似ていて、栗の渋皮のような種皮がしっかりとまとわりついて剥がれにくくなっています。そこで種子内部に水分を含ませると渋皮がが剥けやすくなって仁も膨張してきました。
割った時に若干キズがついてしまいましたが、子葉と幼根となる部分がお経のように丸まっています。
5年前に拾ったモクゲンジの種子の中の様子を見てみました。
堅いと思われた殻は思いの外、簡単にパリッと割れて、中から栗の渋皮のような薄皮に包まれた胚が出てきました。薄皮はがっちりとまとわりついて剥がすのは困難。
そこで、この種皮と思われる薄皮に水分を含ませてふやかしてから剥がしてみることに。
吸水すると6mmくらいの大きさに膨張。やや剥がしやすくなったものの、渦巻き状の子葉部分を包み込むように薄皮は食い込んでいて、小さいためにうまく剥がせずに傷つけて内側の子葉も外れてしまいました。
薄皮を取り除いてから、元にあったと思われる位置に子葉を収めてみたのでやや正確性にかけ不格好です。
吸水した胚は膨れてロールケーキのような雰囲気となりました。
まだ発芽できる種子だったように見えます。
同時期の5年前に採取したムクロジとの比較。同じように吸水させたものです。
同時期の5年前に採取した大きさの似ているフウセンカズラとの比較。同じように吸水させたものです。
モクゲンジの方は吸水後の経過時間が長く、白っぽくなっています。
フウセンカズラの胚の根となる部分はモクゲンジと比較すると小さく、種皮も食い込んでいないため、比較的簡単に取り出すことができました。子葉となる部分がバレーボールのようにきれいに丸まっています。
センダンはセンダン科の落葉高木。
葉は羽状複葉で縁に鈍鋸歯があり、互生します。
暖地に自生しますが公園樹や街路樹として栽植されることが多いです。
初夏に淡い紫色の5弁花を多数咲かせます。
秋に黄色の丸い実をたくさんつけます。果実は核果。
学名: Melia azedarach L.
英名: White cedar, Chinaberry
別名:アフチ、オオチ、オウチ、アミノキ
白檀の別称
果実はしもやけ、樹皮は虫下し、葉は虫除けにするなど薬用植物として用いられた
※「栴檀は双葉より芳し」のセンダンは香木の白檀のことで、このセンダンではありません。
学名: Santalum album L.
英名: Sandalwood
梵名:チャンダナ(candana)
インド原産のビャクダン科ビャクダン属の半寄生の熱帯性常緑樹。雌雄異株。
爽やかな甘い芳香が特徴で香木として利用される
オオモクゲンジ(フクロミモクゲンジ)もまたムクロジ科の樹木です。
オオモクゲンジの花はモクゲンジの花とよく似ていますが花期が異なり初秋に開花します。
タイミングが良いとピンク色の風船状の実と黄金色の花が一緒に見られるため、観賞用として人気があります。風船状の実はモクゲンジと比べて大きめで丸い感じです。
また、モクゲンジとは異なり、二回羽状複葉で、花をつける頃の成木には葉に切れ込みギザがありません。
(但し、幼木には重鋸歯があります。)
▶ オオモクゲンジの実と種子
オオモクゲンジ ムクロジ科 モクゲンジ属
- 学名:Koelreuteria bipinnata Franch
Koelreuteria integrifoliola Merr.
英名:golden-rain tree
別名:フクロミモクゲンジ(袋実木欒子)
フクワバモクゲンジ(復羽葉木欒子)
マルバモクゲンジ(丸葉木欒子)
- 中国及び朝鮮半島の南部を原産とする
高さ10〜20mぐらいになる落葉高木
秋に美しく黄葉する
- 葉は奇数二回羽状複葉
小葉は卵形で成木には鋸歯がないが
幼木には重鋸歯がある
モクゲンジより葉が大きい
- 雌雄同株
初秋に枝先に大型の円錐花序をつけ、
小さな黄色い花を密に咲かせる
花と実が同時に見られる時期がある
- 直径7mmぐらいの黒い種子をつける
- 風船のように膨れ3裂する蒴果で
果皮は黄緑色からピンクになり、
やがて色褪せる
花のように見えるオオモクゲンジの実はピンク色で明るく綺麗です。
10月上旬、落ちたオオモクゲンジの実を見てみると、ピンク色の風船の中には淡い黄緑色〜クリーム色の種子がついていました。
ほんのり枯れ色になった風船の中の種子は黒色になっていました。
しばらくすると、実は褪色して枯れ色になってしまいます。
種子は黄緑色から白っぽくなって、徐々に赤みを帯びて最終的には黒褐色になります。
オオモクゲンジの種子の形や構造はモクゲンジと似ています。
完熟過程のオオモクゲンジの種子は意外にも宝石のようにキレイです。
時期を同じくして、追熟中に美しく変化しているムクロジと一緒に記念撮影してみました。
完熟前の種子は同じような色の変化を辿っていました。
但し、ムクロジの種子は時間をかけてじっくりと熟すため、完熟する前に果皮を剥いてしまうと、保護環境が悪くなるのか、一文字の切れ込み部分が開いたり、皺がよって健全な種子にはならないようです。
拾ったオオモクゲンジの種子をまいてみたところ発芽しました。
オオモクゲンジの発芽
オオモクゲンジは元々種子が小さいのでムクロジと比べるとボリュームに欠けます。ちょっと毛深いですが発芽の様子はよく似ています。
参照:ムクロジの発芽 ▶
その後の様子は
▶ オオモクゲンジの成長1
オオモクゲンジの成木は葉に鋸歯が無いのが特徴ですが、若い状態の時にはギザギザがあってモクゲンジの葉と良く似ています。
10月下旬、オオモクゲンジは黄葉をし始めました。樹高は約36cmとなりました。
ムクロジの幼木と似た雰囲気に育ちました。葉は相変わらず切れ込みがあります。
徐々に黄葉し、11月下旬、ムクロジとほぼ同じ頃に落葉。中にはピンク味を帯びている葉もあり、きれいでした。
オオモクゲンジの冬芽と葉痕
3月上旬頃のオオモクゲンジの冬芽と葉痕の様子です。
ムクロジと似ていますが、毛があるのが大きな違いです。
参照:落葉後のムクロジの葉痕 ▶
オオモクゲンジの芽吹き
4月上旬、オオモクゲンジが芽吹き始めました。
実がピンク色なのと関係しているのか新芽もピンク色で褐色の産毛に覆われています。
その後の様子は
▶ オオモクゲンジの成長2
4年目の葉です。相変わらず重鋸歯があります。
大きくならないようにして育てていますが既に2mを越えています。
5年目の芽吹きです。
5年目の葉です。相変わらず重鋸歯があります。表と裏面。
秋には綺麗に黄葉した後、葉柄ごと落葉しました。
6年目の葉も重鋸歯があります。
モクゲンジとオオモクゲンジの種子は大きさが近いですが、ムクロジと比べるとかなり小粒の種子です。
どちらの種子も発芽直前の割れ込みの入ったの種子と形が似ています。
どちらも実の構造はフウセンカズラと似て、3室に分かれた風船状の袋の中央部に種子がつきます。
※風船状の袋といっても閉じてません。
モクゲンジとオオモクゲンジは1室に1〜2個の種子がなります。
モクゲンジ(木欒子)とムクロジ(無患子)はどちらも数珠に使われる木の実として知られていて、その起源はとあるお経に遡ります。
お釈迦様が「木槵子(モクゲンジ)という木の実で作った数珠を使って佛法僧三宝の名を唱えるとご利益が得られる」と数珠について説かれた仏説 木槵子経 (もくげんじきょう) 。
参照:国立国会図書館デジタルコレクション
大蔵経抜鈔 [99] コマ番号24/99 仏説木槵子経
佛説木槵子経
時難國王名波流離來到佛所白佛言世
尊我國邊小頻歳寇賊五穀勇貴疾病流
行人民困苦我恒不得安臥乃至唯願世
尊特垂慈愍賜我要法使我日夜易得修
行未來世中遠離衆苦
佛告王言若欲滅煩悩障報障者當貫木
槵子一百八以常自隨若行若坐若臥恒
當至心無分散意稱佛陀達摩僧伽名乃
過一木槵子如是漸次度木槵子若十若
二十若百若千乃至百千萬若態滿二十
萬遍身心不亂無諸詔曲者捨命得生第
三燄天衣食自然常安楽行若復能滿一
百萬遍者當得斷除百八結業始名背生
死流趣向泥洹未斷煩悩根獲無上果
佛説醫喩經
(前半部抜粋)
この木槵子という難しい植物の名前がモクゲンジだったのか、ムクロジであったのかが、明確でなかったのが混乱の元だったのです。
元々サンスクリット語の原典に書かれていた木の実の存在を気候風土の異なる当時の異国人が漢訳する際に正しく知っていたのかは疑問です。
木槵子が原典通りの木の実だったとしても木槵子なる植物は日本に自生していませんでした。
木槵子と呼ばれる植物は仏教文化と共に渡来したので、この頃から数珠に使われる黒くて堅い木の実として、モクゲンジとムクロジの混同が始まったと思われます。
※ここでいう木の実は正確には種子のこと。
この両者は種子の特徴が似ているだけでなく、どちらも羽状複葉の葉をつける外来の落葉高木という特徴も似ています。
さらに名称に難読漢字があてがわれたせいで、識別する際に混同・混乱が起こり、今日に至っているように見受けられます。(以下 参照)
モクゲンジの名前の変遷(説)
木欒子(モクランシ)
↓
モクロシ
↓ 間違え
ムクロジ
↓ 訂正
木患子(モクカンシ)
↓
モクゲンジ
↓
木欒子(モクゲンジ)
ムクロジの名前の変遷(説)
桓
↓
木桓子
↓
木患子・木槵子(モクカンシ)
↓ 間違え
モクゲンジ
↓ 訂正
無患子(ムクロジ)
数珠の起源の木槵子はどっち?
個人的には仏説木槵子経の木槵子は種子の耐久性や質感、珠数としての触り心地により、ムクロジの種子だと思っています。
モクゲンジの種子を略式念珠風に繋げてみたところ、軽くて触り心地もまずまずで、女性には使い勝手の良い大きさのように思えました。
(因みに親玉はムクロジの種子を使用)
ですが、種子を集めてみようとした時、綺麗なものが少なく、繋げた時に輪がいびつになるというのが難点でした。
▶ モクゲンジの実9 秋から冬の完熟期
その点、ムクロジの種子は多少、汚れていても洗って磨けば綺麗になるものが多かったのも利点として挙げられれます。
試しに、お経に書かれているように108個のムクロジの種子を数珠状に繋げてみました。
使用した種子は14mmくらいの中粒の中身を取り除いたもの。
長さは151cm、重さは122g。
擦れ合う音が昭和の玉のれんを思い起こさせます。
モクゲンジとムクロジについての考察はムクロジのページに詳しく掲載しているので、興味のある方は参考にしてみて下さい。
▶ 縁起の良い木の実 数珠
▶ 仏説木槵子経の木槵子とは?
▶ ムクロジの名前のルーツ
重修本草綱目啓蒙の 欒華 の項目にセンダイ葉ノボダイジュのハナ、木名ムクレニシノキとしてモクゲンジのことが記述されています。
この中にモクゲンジとお経に関する記述があります。
河内の国(現在の大阪府南東部)の聖徳太子開基といわれる道明寺建立の際に埋めた五部の大乗経の上から自然とモクゲンジが出現したという縁起により、このモクゲンジの種子を諸国の寺に持ち帰って栽培する者が多かったという内容が記されています。
画像の出典:国立国会図書館デジタルコレクション
重修本草綱目啓蒙 35巻. [24] コマ番号35-36
重修本草綱目啓蒙:
江戸時代の本草書 本草綱目啓蒙の重修版
本草綱目は明の李時(1518-1593)による薬物書。これに基づいて本草家小野蘭山が数多くの和漢古書を引用し、和名、説明を加え自説を加えるなどしたものが本草綱目啓蒙。
また、平安時代、菅原道真公が道明寺で書き写した五部の大乗経を埋めた経塚から、モクゲンジが育ったという伝承を題材に作られた謡曲 道明寺 の霊験譚もあります。
真偽のほどは分かりませんが、モクゲンジの種子の仁の形がお経を巻いたような形をしていることに起因していると思えます。数珠に用いられたと言われていたことも仏教との繋がりを感じます。
このページは「なんだろな」の中の
「不思議で楽しい植物の世界
モクゲンジ」