不思議で楽しい植物の世界
おもしろい木の実
ムクロジ

ムクロジの実と種子。

どこまでも楽しいムクロジの実

ムクロジ メニュー


ムクロジ(無患子)とは

ムクロジは昭和レトロの魔法瓶みたいなユニークな形をしているおもしろい木の実で、その中に格納された黒くて堅い種子羽根つきのおもり数珠厄除け無病息災の願いを込められて利用されてきました。

また、水に浸すと泡立つ果皮薬用石鹸として役立ってきました。

枝先にたくさんのオレンジ色の実をリズミカルにつけるムクロジ

そんなムクロジの人との関わりや魅力を探りながら、ムクロジ文化歴史等、不思議で楽しい植物の世界を盛りだくさんに紹介します 。発芽成長樹木等については番外編のページに移転しました。

▶ ムクロジの発芽・栽培・成長・花
  果実や種子の成長過程 等

▶ ムクロジの木・ムクロジの四季
  ムクロジの輝く季節 

  • ムクロジ科 ムクロジ属
  • 学名:Sapindus mukorossi Gaertn.
    英名:soap nut tree
       Chinese soapberry
  • ムクロジ属 (Sapindus) は熱帯地域から温帯地域までに約15種が分布
    子房の各室には1個の胚珠があり、
    果実は1〜3個の分果からなり
    種子に仮種皮が無い
    のが特徴
    参考文献:園芸植物大事典 (小学館)
  • 日本では関東以西~沖縄地方に分布する
  • 高さ15m以上になる落葉高木
  • 葉は羽状複葉 秋には黄葉する
  • 雌雄同株
  • 果実は径が約2cmの球形核果
    基部には成熟しなかった心皮がつく
  • 11月頃に実が黄色く熟す
    果皮は熟すとかたく半透明な飴色になる
    果皮はサポニンをを含み、
    薬用・石けんとしても用いられた
  • 一般的に種子と呼ばれている
    黒い核は極めて堅牢

    羽根つきの羽根のおもりや数珠に使用
    本当の種子 () の中に入っている
  • 寺院・神社・広い公園に植栽されている
    ことが多い
ムクロジの木は秋に美しく黄葉する
秋に美しく黄葉するムクロジの木

まるで魔法瓶!? ムクロジの実

魔法瓶のような不思議な形のムクロジの実

昭和レトロの魔法瓶のようなユニークな形をしているムクロジの実

形もさることながら、半透明な質感はアールヌーボーのエミール ガレドーム兄弟によるガラス工芸作品を彷彿とさせます。とっても魅力的。

おままごとのポットのようでもあり、かわいいです。ムクロジポットとでも呼んでみましょうか。(笑)


ムクロジの実の中の黒い種子
ムクロジの実の内部

乾燥しきっていないムクロジポットを割ってみるとペタペタした水飴のような粘液が出てきます。

このペタペタしたものはサポニンで、何と!石鹸シャボン玉にも使われていたという優れものです。

ムクロジの実の断面の側面画像
割ってみると飴細工のような質感の実

参照:石鹸として使われていた ▶


鳴っても楽しいムクロジの音

乾燥が進むと、黒い種子は外の皮から外れ、のような状態になり、振るとコロコロと音がして楽しいです。

黒い種子に見えるものは厳密には種子の入ったの事ですが一般的にわかりやすくするため、以降 黒い種子と表現させていただきます。

時間と共に色が濃くなるムクロジの実
時間と共に乾燥して堅くなり
色が濃くなるムクロジポット

6年経過したムクロジポット

6年経過したムクロジポットは暗褐色のシブいポットになっていました。

6年経過したムクロジの実

ドライフルーツといった雰囲気。

6年経過して黒褐色になったムクロジの実

使い込まれた魔法瓶のようです。

6年経過して黒褐色になって独特のテクスチャを醸し出すムクロジの実

オレンジ色のドット模様とテクスチャも魅力的。

6年経過したムクロジの果皮のドット模様

果皮はハサミで切ることができる堅さで、溶けかかったのようにねっとりとしていて香りはマイルドです。

6年経過して黒褐色になったムクロジの実の果皮

切断面からペタペタとしたがにじみ出てきました。濃い琥珀色の果皮は光に透かすとステンドグラスのよう。

6年経過して黒褐色になったムクロジの果皮から出る粘液

中の種子カビに覆われたようなものもありましたが、水に浸してから軽く洗うと簡単に綺麗になりました。

せかっくなのでこの果皮を刻んで泡立てた洗浄液を使って丁寧に洗い、さらに磨くと輝きが出てきました。

参照:6年前の果皮で泡立ち実験 ▶

5年経過して黒褐色になったムクロジの実の中の種子を洗って磨いたもの

魔法瓶タイムカプセルでした。


抽選器ガラガラ風のおもちゃ

複数の黒い種子のこすれ合う音は福引きの抽選器をガラガラ回す音のようで、これまた楽しくていいカンジ。

制作した抽選器ガラガラ風の楽器
制作した抽選器ガラガラ風の楽器

ムクロジ黒い種子を詰めた抽選器のガラガラを作ってみたくなりました。


メルヘンチックなムクロジポット

ムクロジポットメルヘンチックな形をしているので、試しにデジタル絵本アラジプーの魔法のランプーに登場するへび茶の容器をムクロジポットに差し替えてみました↓下図。これはこれで異様な雰囲気がいいですね。(笑)

お話の最後の方で、魔法にかけられたムクロジの種子が大量に出てきて

へび茶の入ったムクロジポット
ムクロジポットの中のへび茶を飲む
みなしごうさぎ カジン
大量のムクロジの種子が転がって兵士たちの行く手を拒む

みなしごうさぎカジンが冒険活躍するおとぎ話です。見てネ!


ムクロジの実の形について詳しくは、

▶楽しい形のムクロジの実

▶ムクロジポットのフタの謎

▶ムクロジの果皮は発芽用のゆりかご!?


ムクロジの木について詳しくは、

▶ムクロジの木

縁起の良い木の実 羽根つきの羽根

オレンジ色の飴細工のような優雅な器に収納されたムクロジ黒い種子羽根つきの羽根の黒い玉として使われていたんだそうです。


ムクロジは羽根つきに打ってつけ!?

それもそのはず、ムクロジの種子堅牢さ種子の中でもトップクラスの優れもの。少々叩いたくらいではビクともしません。

羽根つきの羽根

大きさは14mmぐらいで、硬い所に落とすと小気味良くはね返ります。

羽根つきだけに、打ってつけの素材だったんですね。(笑)


ムクロジは縁起が良い!?

ムクロジは漢字で無患子と書くことから、子が患わ無いという願いが込められ、羽子板厄をはね返す、はねのけるという事から縁起物として扱われていたようです。

また、ムクロジの黒い種子に見立てて、魔滅 (まめ)魔除けになるとか、マメに暮らせるという縁起かつぎも上乗せされていました。


羽根つきの歴史

羽根つきは室町時代から宮中の正月遊びとしてあったそうですが、一般にも盛んに遊ばれるようになったのは江戸時代以降のようです。

参照:室町時代の羽根つき ▶


羽根つき羽根は当初、ムクロジの種子に鳥のをつけたものをを食べるトンボの姿に見立て、空につきあげて蚊除けのまじないとしていたものだそうです。

参照:なぜお正月に羽根つきをするの? ▶


当時の疫病はを媒介として広まることが多かったといいます。昨今、よく耳にするデング熱マラリア等の感染症蚊が媒介することが知られているので納得です。


しかし、羽根つき羽根を見た限りでは「どうしてトンボに見えるのだろう?」と疑問に感じたのですが、黒い種子を2つ並べるとトンボのように見えなくもない。

ムクロジの黒い種子はちょうど大型トンボの目の大きさぐらいです。

羽根が飛び交う様子をトンボが素速く飛ぶ姿に見立てたんですね。

ムクロジの種子を目に見立てて2つ並べて作ったトンボイメージの羽根

室町時代に始まり、現代に至るまで羽根つき羽子板は時代と共にいろいろな縁起かつぎが加えられ厄除け無病息災の願いが盛りだくさんにこめられるようになりました。


また、景気を跳ね (羽根) 上げると言う意味で、江戸時代には商売繁盛のお札代わりにも贈られていたという縁起物だったようです。

羽子板と羽根つきの羽根イメージ

と、いうことでお正月には羽根つきをすると縁起が良いようですね。

ムクロジの種子の羽根を使った羽根つきで災厄や困難を跳ね返せるように祈願するのも良いかも!?

ムクロジのような形で飛翔するのにがありそうな樹木。特に黄葉期黄金色の羽葉は見事です。

参照:ムクロジの輝く季節 ▶


羽根と羽子

因みに羽子板羽子とは (広辞苑より)

ムクロジに孔をうがち、彩色した鳥の小羽を数枚さしこんだもので、羽子板でこれをついて遊ぶ。

つまり羽子とは羽根のことですね。なので、羽子つきというのもなるほどです。

とは一般的に黒い種子とされている羽根のおもりの部分。硬い () の中に本当の種子が保護されて入っています。

羽根つき羽根の始まりについては

参照:羽根の元祖 !? ツクバネ ▶

ちょっと寄り道:縁起の良い実
ムクロジ破邪伝説のルーツ

中国最初の植物図鑑 植物名実図考 長編には昔ムクロジの木で作った棒で巫女が鬼を殺したとの言い伝えから鬼を追い払い邪気無くす、つまり患い無くすと伝えられた、という 話が載せられているそうです。


また、妖怪、神々の記述も多く含まれる中国最古の地理書・地誌とされる山海経(せんがいきょう)にもの原名で果実を酒に漬けて飲むと邪気を防ぐと記述があるそうです。

無患子という名の破邪伝説のルーツはこのあたりかもしれません。

という名から無患子という名前になる変遷については

▶ムクロジの名前のルーツ

ムクロジを使って羽根を作ってみた

ムクロジと白鳥の羽を使って作った羽根

白鳥の羽根を拾う機会に恵まれたので自己流でムクロジの種子羽根をつけたニュータイプの羽根を作ってみました。

名付けてムクロジシャトル。(笑)

白鳥飛来地に来た白鳥たち
白鳥飛来地に来た白鳥
冬のかわいい訪問者
荒川に飛来するコハクチョウ

ムクロジシャトルの作り方1

まず、ムクロジの種子の先端にある一文字ライン中央にをあけ、そこに極小ネジを埋め込んで装着部分を作り、次に糸で羽根を縛りつけたら接着剤をつけて固定します。

接着部に飾り用のテープを巻けば、できあがり。

ムクロジの種子と白鳥の羽等で作った羽根

バドミントン羽根のように滞空時間が長くなるように羽根を均等に広げてつけてみるのがポイント。

白鳥以外の羽根も混ぜてみたらこれもキレイで使い勝手も良いです。


ムクロジシャトルの作り方2

一文字ラインの中央に3mmほどのをあけて、または羽根の根元に木工用ボンドをつけて羽根を差し込み、羽根のバランスを整えてから、完全に接着するまで放置します。

これも落下時にクルクルときれいに回転して使い勝手が良いです。

白鳥の羽根のせいか天使みたいで軽くてフワフワ、優雅な雰囲気です。

藍の生葉染めした白鳥の羽根をムクロジの種子に差し込んで作った羽根
藍の生葉染めで染めた白鳥の羽根

羽根の動きは羽根の付け方でまったく違うものになってしまうので奥が深く面白いです。

藍染めした絹の上においてあるムクロジの種子にあけた穴に白鳥の羽根を差し込んで作った羽根

ムクロジシャトルの置いてある青い布は自宅で育てたを染めたものです。また、羽根そのものも染色することができます。家庭で簡単にできる藍染めを楽しみたい方はコチラへ。

参照:趣味の藍染め ▶


ちょっと寄り道:羽根作りの道草

白鳥の羽はお気に入りの素材となりました。また、みにくいアヒルの子なんてことはなく、白鳥のヒナの姿はとてもかわいいです。例えば、

ラクチン・ラクチン」、そんな声が聞こえてきそうなおちゃめな白鳥のヒナの姿。たまりません!

かわいくって笑っちゃいます。

微笑ましい白鳥の親子
おちゃめな白鳥の雛
微笑ましい白鳥の親子
photo by X posid (下 拡大)

写真クリック オリジナル画像


おまけついでに綿毛のタンポポに埋もれているとても可愛いカヤネズミの写真に出会いました。

タンポポに比べてこの大きさということはとても小さいんですね。絵本から抜け出てきたような夢のようなかわいらしさです。素晴らしい写真を撮って下さったBinsteadさんには大感謝です!(下はトリミング拡大)

綿毛のタンポポの中のかわいいネズミ
綿毛のタンポポの中のかわいいネズミ拡大
タンポポの綿毛とかわいいカヤネズミ

photo by Binstead
Harvest mouse climbs up a dandelion - Mail Online

写真クリック オリジナル画像

※転載はご遠慮ください。


お正月の空に舞う羽根

新春の空にムクロジシャトルと雰囲気が似たフェザーつきの種子がふわふわと舞っていました。正体は種髪を広げ旅立つテイカカズラ種子でした。絹毛がキレイです。

白鳥の羽を使って作った羽根とテイカカズラの種
ムクロジシャトルとテイカカズラの種子
綿毛のテイカカズラ種子
鞘から出たてのテイカカズラの種子

テイカカズラについて興味のある方はこちらへどうぞ。

参照:テイカカズラ(定家葛) ▶


羽根の参考にしたくなる植物の種子

綿毛のある種子
ステキな綿毛のパラシュートタイプの種
カエデのプロペラのような種
楽しいプロペラタイプの種

アザミタンポポ等のキク科冠毛のパラシュートタイプやカエデ等のプロペラタイプの種子は実に精巧にできていて植物の不思議な世界へと誘われ、見とれてしまいます。

モミジのプロペラのような種

その他、羽根に似ている魅力的なをこちらで紹介しています。

参照:羽根に似た形の実 いろいろ ▶

超カンタンに作れる羽根つきの羽根

ムクロジの種を使って羽根を作ってみた第2弾!ムクロジの種のあまりの堅さに羽根作りを断念した方に超カンタンに羽根を作る方法をご紹介します。

お手軽に作る羽根つきの羽根

大変な穴あけ作業も道具も接着剤鳥の羽不要

てるてる坊主を作る要領でムクロジの種を正方形に切ったレジ袋で包んで輪ゴム止めるだけ。


作り方のポイント

を包む時は一文字ライン側を縛る側にします。そうすると丸い側が板で叩かれる方向になり使い勝手が良くなります。一文字ラインに少しだけ両面テープを貼っておけば、すべらずに固定しやすくなります。

薄手の布など軽くてしなやかな素材を使えば、使い心地が良いです。

お手軽に作る羽根つきの羽根の材料
必要なもの:輪ゴム・ムクロジの種
正方形に切ったレジ袋や軽い布

アレンジ いろいろ

オシャレな柄カラフルレジ袋を使ったり、折りたたみ具合を工夫したりすれば、キャンディーみたいなカワイイ羽根のできあがり。


ムクロジ黒い種子を見せたい時はが見えるように外側の布またはカラフルなレジ袋の中央をくり抜いて透明ビニール袋をその中央に被せ、セロテープで固定して同様に包みます。ラッピングタイなどで縛るのも簡単で良いです。

お手軽に作るカワイイ羽根つきの羽根

骨が折れたりして不要になった傘の布なんかも良いです。ゴムもカラーゴムやキレイな紐を使えばカワイイ小物にもなります。

簡単に作れる羽根つきの羽根

耐久性はありませんがそもそも羽根つきはそれほど頻繁にやるものでもないし、この方法なら、すぐに作り直しができるのでご安心を。


ムクロジの実を拾う機会があれば、試してみてはいかがでしょう?

ただし、鳥の羽根と比べると滞空時間が短くスピードが早いので俊敏な動きが要求されます。

縁起の良さがもりだくさんの羽子板

羽子板には厄や病気を跳ね返す、という縁起かつぎの他にも羽子板の形にも縁起の良さが盛り込まれています。末広がりで逆さにすると富士山にも見立てられてきたんだとか。

葛飾北斎富士山なんかの図柄もおめでたくてカッコ良さそう!

羽子板を作ってみた

羽根ができたら、当然羽子板も作りたくなるものです。

そこで、使い勝手重視で柄の部分が長めの羽子板を作ってみました。

端材を利用して作った羽子板で試し打ちをしてみると、カツンカツンと小気味の良い音がします。ふんわりとして優雅そうな羽根の動きが複雑で、思っていたよりずっと運動量があってなかなか楽しいです。

制作した羽子板
自作した羽子板と羽根つき用の羽根

は軽いなどが良いようですが、羽根の玉ムクロジの種子がカツンカツン当たって、窪みができてしまうので、絵などの装飾は板の打たない側に施します。でも作ってみましたが、これもイイ感じ。


時短で作る羽子板

今回、絵柄は時短でコピーした絵柄を使いました。インクジェットでは水に弱いのでレーザープリンターで出力し、とりあえずは両面テープで接着して、華やかさを出すために色つきのマスキングテープで縁取ってみました。

ぷう神の描かれた羽子板

このやり方だと、着せ替え人形のように、すぐ絵柄を交換することができます。「もう、これに決めた!」という時には木工用ボンドで紙を貼り、その上に水溶性のアクリル樹脂塗料でコーティングすれば、わりと耐久性のあるものとなります。

絵を描くのに自信のある方はトールペイントがオススメです。お気に入りの印刷物を貼るのも簡単ですね。


今回制作した羽子板の絵柄はにあやかって、頭文字に)のつくぷう神となっております。

画像参照:イラストギャラリー
▶「ぷう太郎雷神之図」

楽しい羽根つき

羽根つきには羽根を打ち合う追羽根と一人で羽根を打ち上げ、その回数を競う揚羽根突き羽根という遊び方があるそうです。試してみたい方は風の無い日にどうぞ!


ムクロジに縁があったので、厄除けも兼ねて揚羽根に奮闘中!

とりあえずの目標はコンスタントに煩悩の数の108回打ち続けること。省スペースで適度な運動ができるので冬の運動不足解消に効果的。

練習の甲斐あってそれなりに上達しました。


そして、お正月の風のあまり無い日に公園で追羽根を友人たちとやってみました。

くるくると綺麗に回転する鳥の羽がとても美しくて感動!軽やかに高速で回転する様はフィギュアスケーターのジャンプや楓の種子のプロペラみたいです。


しかしながら、わずかな風や羽子板の風圧で羽根の軌道が変わり、打つのが意外と難しく翻弄されます。

たかが羽根つきなどと高をくくっていたのですが、予想以上に激しい動きを余儀なくされ、息切れする程。

もし、顔に墨を塗る罰ゲームをしていたら汗と墨で顔はぐちゃぐちゃになっていたことでしょう。(笑)


お正月の陽だまりの中、ムクロジ羽根が小気味良くカツンカツン鳴り響き、心地良い時間を過ごすことができ、大満足の結果となりました。

羽根つきは風情も運動量もあるので友人たちも「ハマりそう!」と満面の笑顔でした。

ちょっと寄り道:羽根
羽根の元祖 !? ツクバネ

ツクバネ (衝羽根) は、ビャクダン科ツクバネ属の雌雄異株の落葉低木で羽根の形によく似ている面白い形のをつけます。

スギ・ヒノキ・モミ・アセビなどの根に半寄生し、乾燥する急斜面や尾根に生育する植物です。

ツクバネの実 果実。落下する時、羽根つきの羽根のようにクルクル回転する。
画像の出典:Wikimedia Commons

語源由来辞典によれば、室町時代、羽根つきの羽根にはこのツクバネの実が使われ、ツクバネの中国語名の胡鬼から羽子板胡鬼板 (こぎいた) と呼ばれていたそうです。

種子を意味するので胡鬼の子ツクバネの実をさします。

さらに、羽子板・破魔弓の由来によれば、胡鬼 (こぎ・こき)とは古代の中国でトンボのことを表す言葉なんだそうです。

羽根はあくまでもトンボに見立てることが必須だったようですね。

参照:縁起の良い木の実 羽根つきの羽根 ▶


晩秋のツクバネの実のなっているようす
画像の出典:Wikimedia Commons

ツクバネの名前の由来は羽根つきの羽根に似ているという説が一般的ですが、そもそもこのを手で衝いて遊んだのが羽根つきの始まりと言われています。


ムクロジの種子をつけた羽根はこのツクバネの実を模して作られたもののようで、こちらこそが羽根の本家、元祖だったと考えると形が似ているのは当然といえるでしょう。


耐久性があって、より楽しく遊べてご利益がありそうな羽子 (=ムクロジの羽つきの羽根) の登場が羽子つき羽根つきを今なお残る文化として定着させたのでしょう。

胡鬼 (コギ)という中国名から衝羽根 (ツクバネ)に名が変ったのはそんな経緯によるものではないかと推測をしているところです。


因みに室町時代の書物の世諺問答によれば、ムクロジつきの羽根が既にこきのこと呼ばれ使われてたことが記されています。その内容は、

参照:なぜお正月に羽根つきをするの? ▶


若いツクバネの実のなっているようす
画像の出典:Wikimedia Commons
若いツクバネの実のなっているようす 拡大
画像の出典:Wikimedia Commons

羽根つきの起源は14世紀頃に硬貨をおもりにした羽根を蹴る中国の遊びが、室町時代に日本に伝わって変化したものと考えられているそうですから、胡鬼 (ツクバネ) の登場はこの頃だったと思われます。

※上記の写真はすべてトリミング使用、一番下の写真は回転させていただいています。

室町時代の羽根つき

羽根つきが日本の文献に初登場するのは、看聞御記 (かんもんぎょき)という後崇光院 (ごすうこういん) の書かれた室町時代の日記です。


その中で永享4年(1432年)正月御所に於いて、公喞や女官が男組と女組に分かれ、紅白に分かれてこぎの子勝負=羽根つき勝負に興せられたという内容の記録があります。

因みに負けた方が酒を振る舞うことになっていたんだとか。


当時は羽根つき羽根胡鬼 (こぎ) ・胡鬼の子と呼んでいたようです。

参照:羽根の元祖 !? ツクバネ ▶


文安元年 (1444年) に成立したとされる室町時代の国語辞典下学集には羽子板(ハゴイタコギイタ)について正月之を用いると記してあるそうです。この頃にはハゴイタという呼び名も羽根つきが正月の行事として定着していたことを伺い知ることができます。


月次風俗図屏風に見る羽根つき

室町時代に描かれた月次風俗図屏風 (つきなみふうぞくずびょうぶ) は今使っているカレンダーのように1年の各月に行われる公家から庶民に至る各層の年中行事が描かれています。

月次風俗図屏風部分
月次風俗図屏風 部分

第1扇に正月の羽根つきをする様子が見てとれます。意外とやる気満々で楽しそうです。この頃はムクロジの羽根を使っていたのでしょうか。

月次風俗図屏風部分 拡大図
羽根つき部分 拡大
月次風俗図屏風部分 女性たち拡大図
女性チーム 拡大
月次風俗図屏風部分 若者たち拡大図
男性チーム 拡大

画像出典:東京国立博物館 コレクション

月次風俗図屏風には
その他、毬打、松囃、花見、田植、賀茂競馬と衣更、犬追物と蹴鞠、富士の巻狩、春日社頭の祭と雪遊びなどが描かれているので、興味のある方は東京国立博物館 コレクションでご覧になってください。


教えて おじいちゃん!羽根
なぜお正月に羽根つきをするの?

天文13年(1544年)に書かれた室町時代の「これってどういう意味?教えて!なぜなぜ」的しきたり解説書世諺問答せげんもんどう) の中で解説されているものを、ざっくりとした現代語意訳で紹介します。


子どもが老人に質問します。

お正月に幼い子どもが こきのこ (=羽根) を突くのはどうしてなの?

それに対し、老人が答えます。

それは幼い子どもがにくわれないためのおまじないなんだよ。

秋の初めにトンボという虫が出てきてを捕らえて食べるんだ。

こきのこ (=羽根) というのは木連子 (=ムクロジの種子) をトンボの頭に見立てて、それに鳥のをつけたものなんだ。

これをで突きあげれば、落ちる時にトンボ返りのように見えるんだ。

それで、を恐ろしがらせるためにこきのこ (=羽根) を突くのだよ。

※蚊は伝染病を媒介する厄と考えられていた。

カトリヤンマ
カトリヤンマ photo by : モジモジサン

物知り老人と子どものQ&A形式で記された現代的な解説スタイルには驚きです。柔軟な発想ですね。

日本に古くからある年中行事の風習やしきたりの由来や起源・意味などを解説できる著者は当時500年以来の才人、日本無双の才人などと評された公卿一条兼良 。(一条兼冬 補完) 古典学・有職故実の研究から和歌・連歌・能楽などに幅広い知識を持つ学者だったそうです。


正月に蚊除けなんて変じゃないかという突っ込みが入りそうですが、年始めの病気予防祈願・厄除けだと考えれば良いのではないでしょうか。


また、羽根の古名の胡鬼 (ごぎ) には異郷の鬼的な解釈もあります。外の世界よりやってくる災いや病や邪気を胡鬼と表現し、それを突き払うことにより災厄を回避する厄除け厄払いの願いが込められた儀礼や遊びであったとする説もあります。


いずれにせよ、一年の始まりに無病息災を願って行われる祭事となり、お正月に羽根つきが行われるようになったと思われます。

胡鬼のここぎのここきのこ)については

参照:羽根の元祖 !? ツクバネ ▶

ちょっと寄り道:羽根
羽根に似た形の実 いろいろ

ツクバネの他にも羽根に似た形のがいろいろあります。


ツクバネガキも名前通りで、大きさも形も羽根に似たかわいいです。

羽根のようなツクバネガキ

仏教三大聖樹の一つ、サラノキの属するフタバガキ科の実羽根みたいでかわいいです。

羽根のようなフタバガキ科のディプテロカルプス・アラータ
フタバガキ科の実

羽根と似たサラノキの実はコチラで紹介されています。

▶ 草津市立 水生植物公園みずの森 公園だより
 サラノキの現在の様子


赤とんぼみたいなアメリカデイゴ羽根トンボに見立てて作ったというせいか羽根と感じが似ています。

アメリカデイゴ
アメリカデイゴの花

サンゴシトウ (珊瑚刺桐)も同じデイゴ属で雰囲気が似ています。

サンゴシトウ
サンゴシトウの花

梅雨時に素晴らしい芳香を漂わせる純白のクチナシも秋には朱色の羽根のようなとなります。このは食品の着色料や漢方薬として広く利用されています。

羽根のようなクチナシの実
クチナシの花の蕾
クチナシの花
清楚なクチナシの花

草木染めで稀少な青色の染料となるクサギの綺麗な青い実。果実が熟すとピンク色の萼が開き、やがて赤と紺色のコントラスト鮮やかな羽根のようになり、美しくカワイイです。

クサギの美しい青い実
宝石のように輝くクサギの実
羽根のようなクサギの実
羽根のような形をした赤と青色の美しいクサギの実
赤と青色のコントラストの美しいクサギの実

クサギだけではなくも綺麗でかわいいです。興味のある方は

参照:大仁田山周辺 季節の植物 クサギ ▶


ホオズキもまた、羽根の形に似せると、愛らしいですね。

羽根のようなホオズキ

ムクロジからどこまでも楽しい世界が広がっておまけがたくさん増えてしまいました。(笑)

縁起の良い木の実 数珠

ムクロジ種子数珠として使われていました。

ムクロジの種子を数珠のようにつなげたもの
数珠のように繋げたムクロジの種子

堅牢な木質のムクロジの種子。その黒い玉品の良い艶があり滑らか触り心地が良く、何やらありがたい感じがします。

なので、この丈夫な天然素材が数珠として用いられたのは、ごく自然な事だったと思われます。

品の良いツヤのある黒いムクロジの実
ちょっと磨いただけでツヤがでる
画面やや中央の光った実

数珠のルーツ

お釈迦様が説かれたという数珠に関する一説を見かけました。

「もし、煩悩・業苦を滅し去ろうと欲するなら、ムクロジの実百八個を貫き通して輪を作り、それを常に持って行住坐臥に渡って一心に佛法僧三宝の名を唱えてムクロジの実を一つ繰り、また唱えて実を一つ繰るということを繰り返しなさい。そのようにするならば、煩悩・業苦が消滅し功徳が得られるであろう。」

出典内容は仏説木槵子経 (もくげんじきょう) より (東晋代:訳者不明)

ということは、ムクロジの種子数珠のルーツだったようです。

注)ムクロジの実黒い種子のように見えるの事を指すのだと思われます。

元は木槵子 百八箇という表現だったよう。

数珠の起源である木槵子については無患子(ムクロジ)とする説・木欒子(モクゲンジ)とする説があります。

参照:仏説木槵子経の木槵子とは? ▶


寺社に植えられていたムクロジ

ムクロジは日当りがよく、湿り気の多い山中に生える落葉高木ですが、寺社に植えられている事が多いとの事です。仏教とは数珠に使用していたという事で関係があるので当然として、神社にも植えられていたというのは子が患わ無いという無患子の持つ縁起の良い名前にあやかっての事だったと思われます。

子の健やかな成長を願う心と信仰が結びついた事が伺われます。

※大きな公園や植物園などにも植栽されています。

仏説木槵子経の木槵子とは?

仏説木槵子経(ぶっせつもくげんじきょう)という中国の東晋の時代に訳されたお経によれば、木槵子数珠の起源となったようです。簡単な説明は、

参照:数珠のルーツ ▶


しかし探ってみると、この木槵子経の指す木槵子無患子 (ムクロジ)か木欒子 (モクゲンジ) のどちらを意味していたのかはっきりしません。

というのも、かつて日本では無患子木欒子を同一視していたり、名前を相互に取り違えてしまった経緯があるからです。

参照:ムクロジの名前のルーツ ▶

木欒子モクゲンジ)と仏説木槵子経についてはコチラも参考にどうぞ

▶ 参照:数珠の迷宮
  モクゲンジとムクロジ


室町時代の書物 世諺問答には木連子という表記でムクロジの種子を使い羽根つきの羽根を作ることが記されています。


ムクロジとモクゲンジ
どちらが数珠の起源の木槵子?

広辞苑・広辞林には
木欒子もくげんじ:球形の種子数珠玉に用い と記載されています。

広辞林によれば、木槵子ムクロジの漢名で本来は誤用、とも。

そして、無患子には数珠玉に関する記載がありません。ということで、木欒子種子こそが数珠の起源ということになっているようです。


しかし、お釈迦様が108個もの木の実を拾って、数珠を作るように諭されたのだとしたら中国原産の異国の木欒子より、インドの石鹸と呼ばれた地元の無患子の方が馴染みがあったのでは?そもそも、ありがたい話をでっちあげただけかも。などと思考錯誤?の憶測状態。この2種の樹木は分類上も近いので、昔の方も混乱してややこしい関係になってしまった模様です。

中国では唐代から数珠に用いられていた、とも言われています。


ムクロジモクゲンジ、どちらも堅くて黒い種子でありがたい雰囲気なので、無理に白黒つけず、どちらも黒々ということで良しということにしようとしたのですが、すっきりとしません。そこで調べてみると興味深い記事が目に留りました。

ある学者の文献には「モクゲンジの実で数珠を作ると色々の書物には書いてあるが未だ実物を見た事が無い」 とありました

「数珠」を作るより引用。自宅でモクゲンジを栽培し、自らモクゲンジの種子で数珠作りに挑戦されて見事に成功させた経過が克明に記録されています。


検証するためにモクゲンジ種子の実物を手に入れてみました。

まだら模様のあるモクゲンジの種子
モクゲンジの種子

綺麗なものが少なく、デコボコ色ムラが気になります。大きなもので5〜6mmぐらい。ムクロジ種子と比べるとかなり小さめ。

モクゲンジの種子とムクロジの種子 比較写真
モクゲンジ (左)とムクロジの種子 (右)

堅いけれどが薄くて割れやすい上に滑りやすくて扱いづらいです。

堅牢性も耐久性も疑問が残ります。

前述にある学者の方が文献の中で述べている通り「モクゲンジの種子で数珠を作る」のは定説になっている割には普及してなかったのでは?と思えてきました。


ムクロジの種子の場合、108個連ねると長過ぎる感もありますが、平安時代の物と思われる法隆寺献納宝物の金剛子念珠は約92cmありますのでそれもアリかなと思えるのです。


また、今昔物語集 巻第十九 第十二 於鎭西武蔵寺翁出家せる語の中に「木連子念殊大キ長キヲ押攤 (おしもみ) テ居タルハ」と表現があります。

今昔物語19巻-47p

参照文献:実践女子大学学術機関リポジトリ
     今昔物語集 巻19 pdf 47p

大きいという事は木連子ムクロジの事で、モクゲンジではないと判断できます。そして、念珠は長いものであっても不自然でないと解釈しても良さそうです。


ムクロジの種子の大きさや堅牢さ・重さ・質感・見た目や品位、そして何より触り心地モクゲンジ種子のそれには無いものです。

磨かれて黒光するムクロジの種子

繰り返し手で触れば触るほど磨かれて美しく黒光りし、宝石のようになるムクロジの種子数珠として使うのにはちょうど良い素材であったように思えてなりません。


以上の推測(憶測?)により、仏説木槵子経木槵子ムクロジの種子を指しており、数珠の起源であったと解釈したいと思います。


追記

その後、縁あって比較的状態の良いモクゲンジ種子を入手することができたので、ムクロジ種子と一緒に数珠のように繋げてみると、想像以上に良い仕上がりとなりました。このコラボこそ木槵子ですね。(笑)

ムクロジの種子1つとモクゲンジの種子を54個繋げた数珠風のもの

ムクロジ種子36個を繋げたものと比較すると、女性にはこのくらいの大きさの方が扱いやすくて好まれるのかもしれません。

ムクロジの種子1つとモクゲンジの種子を54個繋げた数珠風のものとムクロジの種子36個を繋げたもの

ちょっと寄り道:数珠
源氏物語に登場する数珠 金剛子

源氏物語若紫に登場する金剛子の数珠玉の材質はモクゲンジの木の実だとする説を見かけました。丸くて六つの角があり、色は黒いとも。

モクゲンジの種子のように見えるには角が無いので気になって調べてみました。

参照:仏説木槵子経の木槵子とは? ▶


原文を読んでみると、この箇所は妙に歯切れが悪くて解りにくいです。

ここで登場する数珠聖徳太子が百済から入手した宝玉の飾りがついた金剛子の数珠という設定になっています。調べてみると、法隆寺献納宝物の中に水晶木の実ガラス玉で作られた名前もそれらしき雰囲気の数珠がありました。


金剛子念珠
重要文化財 金剛子念珠

画像出典:東京国立博物館 法隆寺献納宝物 金剛子念珠

写真クリック オリジナル画像


木の実のように見える金剛子と呼ばれる金剛子木(コンゴウシノキ)金剛樹木の実の核菩提樹の数珠として使われているものだと思われます。

この木はホルトノキ科の高木で、
数珠菩提樹(ジュズボダイジュ)
印度数珠の木(インドジュズノキ)
という名前の方が一般的です。

学名 :Elaeocarpus angustifolius

英名:blue marble tree

の中央に紐が通せるような細い穴が貫通していることから数珠の名前がつけられたのでしょう。

本当の菩提樹と言われる印度菩提樹(インドボダイジュ) 種子は小さすぎて数珠には適さないようです。


この木の実の種子のようなに通常5本の溝が刻まれています。

この溝の数は変異があり、6本あるものもあるそうで、特に稀少本数は珍重されているのだそうです。

これが金剛子に「六つの角がある」と表現され、数珠の起源とされていたモクゲンジと誤解されたのでは?

または六角柱状の結晶形を持つ水晶とも混同されたのかもしれません。

金剛子=ルドラクシャの実
数珠菩提樹 (ルドラクシャ) の数珠

昔、ブッダガヤで入手した菩提樹の数珠。
紐と一緒に朱の染料で染められています。

ルドラクシャの青い実
数珠菩提樹の青い実 photo by sandid

数珠菩提樹はサンスクリット語でルドラクシャ (ルドラシヴァ神という意味) と呼ばれ、元々ヒンドゥー教徒の修行者の数珠として使われてきましたが、パワーストーン的な扱いをされて人気があります。


その理由として、
念珠の功徳は材質によって異なり、功徳経には
真珠・珊瑚は百倍
ムクロジは千倍
蓮の実は万倍
金剛子は百億倍
水晶は千億倍
菩提子は福無量
と記されていて多くの経典において菩提樹の実が最上とされているからではないでしょうか。


そんなご利益のありそうな金剛子念珠の情報を得て紫式部は光源氏の快気祝いの献上品として数珠を登場させたのかもしれません。が、その情報が玉石金剛と言いたくなる玉石混淆状態で、しっくりとこない表現になってしまったのかも?(笑)

石鹸として使われていた

学名はインド産の石鹸 ムクロジ
Sapindus mukorossi Gaertn.

英名はsoap nut tree (ソープナッツ)Chinese soapberry (中国の石鹸の果実) という名が示すように石鹸の代用と使用されていました。

これは果皮にサポニンが多く含まれるためです。

※ラテン語のsapo indicus (インドの石鹸) に日本名のムクロジよりmukorossiの名がつけられています。

参照:ムクロジとムコロッシ 学名を探る ▶


ムクロジの果皮はアジアとアメリカの両方の熱帯地域で石鹸代わりに使われていた歴史があり、ソープナッツの他、ソープベリーウォッシュナッツという名前でも呼ばれます。

※アメリカ大陸産の西洋ムクロジSapindus saponariaと名付けられていてサポナリアという石鹸関連の学名がつけられています。


ムクロジの実の部分を大きめに刻んで空のペットボトルに入れて、水を入れてキャップをして振ると、ペットボトルの中に見事にきめ細かい白い泡が立ちました。

ムクロジの皮を水に入ったペットボトルで振ったところ、よく泡立っている様子

かつては石鹸の代用とされたために井戸端などによく植えられた、というのも納得です。独特の甘酸っぱい匂いがあり、苦手と感じる方も多いかもしれませんがインドではリタと呼ばれ、日常的に洗濯や食器洗いに使っていたとか。

試しに使ってみたところ、普通に洗えて油汚れも落ち、匂いもさほど気になりませんでした。

使用時は布袋に入れて使うと取り扱いが簡単。但し、防腐剤などは入れていないので作り置きはしない方が無難です。


青い未熟果でも試してみたところ、既にサポニンがあるらしく、同様に泡立ちました。匂いは穏やかです。

ムクロジの未熟な皮を水に入ったペットボトルで振ったところ、よく泡立っている様子

本来の使用方法は乾燥させた果皮を煮立てて、サポニンを抽出するのだそうです。

水にふやかしたムクロジの果皮
水にふやかしたムクロジの果皮

秋に収穫した半生状態の果皮には鼻につくようなクセのある甘酸っぱい香りがありましたが、カチカチに乾燥したものは香りがマイルドになり扱いやすくなっていました。乾燥させると保存と同時に使い勝手がよくなるようです。


日本でムクロジ果皮を洗濯や洗髪に用いたのは古くは平安時代の頃からだそうで公家屋敷にはムクロジの木が多く植えられていたそうです。

当時は灯明の煤(すす)汚れを洗い落とすのにも利用していたという事なので洗浄剤として既にポピュラーな存在だったのかもしれません。


江戸時代後期の博物誌本草綱目啓蒙(1803~1905年)にはムクロジの実について、果実の外皮を俗にシャボンと呼び、油汚れの衣を洗うに用ゆと書かれているそうです。

江戸時代にはムクの皮と呼ばれ、石鹸として使われていたことを落語の世界で知る事ができます。

参照:落語に登場していたムクロジ ▶


現在 人気急上昇中の無患子石鹸

なーんと!台湾では現在進行形で、無患子(ムクロジ)コスメが愛用されているんだとか。昔からムクロジの実で洗えば、風邪予防シミに効果があると言われているそうです。


台湾では身体にも、環境にも優しい無添加天然物オーガニック製品の人気が高いらしく、無患子石鹸以外にもシャンプーやコンディショナー、ボディーソープ、食器洗い洗剤等も販売されているようです。

どうやら、温故知新で環境にやさしいムクロジの洗浄効果が見直されてきた、といった感じでしょうか。


泡立ちも香りも良くさっぱり洗えて、洗い上がりはしっとりとしていてリピーターも多いとのこと。

嬉しいことに、値段もリーズナブルスーパードラッグストアなどで気軽に買うことができるのでお土産として評判も良く、人気急上昇中。

興味のある方は
無患子石鹸 台湾みやげ」で検索してみてください。


無患子のポテンシャル侮りがたし!(笑) 情報を得ても、日常に使うのをためらっていたあのムクロジ企業努力ってすごいですね。機会があれば、試してみたいです。それとも石鹸作りにチャレンジか!? (笑)

6年前の果皮で泡立ち実験

試しに6年前に保存しておいた果実果皮を使って実験してみました。

カチコチに乾燥したムクロジの果皮

見た目は堅そうですが果皮ハサミで簡単に刻むことができます。

ざっくりと刻んだムクロジ11個分の乾燥した果皮

果皮11個分をざっくりと刻んだものを洗面器に入れて常温の水を加えてナイロンネットを使って泡だてると意外にも簡単に濃厚で、きめ細かいが大量にできあがりました。

ざっくりと刻んだムクロジ11個分の乾燥した果皮を洗面器に入れて水を加えてあわだてたもの

はしっかりとしていて持ち上げても垂れ下がりません。

ムクロジの果皮で作った濃密な泡

ストローで吹くと大きなシャボン玉ができました。

ムクロジの果皮で作った濃密泡を吹いたら大きなシャボン玉ができた

の下に溶け出した溶液はムクロジ果皮色

ムクロジの果皮で作った濃密泡の下には赤褐色の溶液

この泡水果皮を刻んでベタついたハサミと取り出した種子を洗うと、とてもキレイになりました。匂いも気にならない程度でした。

ムクロジの果皮で作った泡水で洗ったムクロジの種子

参照:6年経過したムクロジポット ▶

薬用として使われていた

秋に果実の皮を集め、日干しにして乾燥させたものを延命皮(えんめいひ)と呼び、この生薬強壮去痰薬として用いていたとか。

何やら縁起担ぎご利益が盛られたような名前ですね。


サポニンには界面活性剤の働き以外にも抗菌殺菌去痰抗炎症作用などがあって、湿疹、乾癬の治療、そばかすの除去や頭皮からシラミを除去するために伝統的に使われてきたそうです。

 参照:Pharmaceutical Sciences And Research

が、果皮にあるムクロジサポニン有毒成分胃腸障害下痢を引き起こすそうなので誤飲・誤食はしないように!

参照:落語に登場していたムクロジ ▶

サポニンから食べられないようを守っているそうですが、時折の入った実も見かけます。

ムクロジの実の成長過程を観察してみると、サポニンも少なく軟らかい未熟な時期に侵入されているようです。

参照:ムクロジの種子を食べる虫 ▶


ムクロジの果皮 その他の利用

かつては貴金属をピカピカにする時にも使っていたとも言われます。

中国から伝来した薬学書の本草綱目 (1596年) には真珠の汚れを落とすのに用いるとの記述があるそうです。

それならとムクロジの果皮を切ったハサミをついでに洗ってみたところピカピカになりました。

次に眼鏡を洗ってみたらスッキリとキレイになりました。なるほど!


また、ムクロジサポニンの泡は消えにくいため、かつては化学泡消火器に使われていたこともあったとか。


参考までに ムクロジ果皮の構成物質
サポニン、ビタミンC、チロシン、グリシン、フルクトース、グルコース、アラニン、ペントース、メチルペントース、ペクチン糖 等

Tips for Growing a Soap Berry Treeより

ムクロジとシャボン玉

ムクロジの果皮に含まれるサポニン洗浄作用以外にも遊びにも使われていたようです。ムクロジを使用した文化は現代と比べ、身近に浸透していたことが分かります。


シャボン玉にも使われたムクロジ

江戸時代末期の風俗百科 守貞謾稿 (もりさだまんこう) にはシャボン玉を吹くサボンウリ(シャボン売り)の説明と姿が描かれています。

さぼん粉を水に浸し、細管をもつてこれを吹く時丸泡を生ずと記されています。
原文は下画像をクリック ▼

江戸時代のシャボン粉売り

写真クリック オリジナル画像


さぼん粉の原料はムクロジの果皮芋がらを焼いて粉にしたもので細い竹の管葦の茎等をストロー代わりに使ったんだとか。ふわふわと虹色に光る玉は今も昔も人気があったんですね。

シャボン玉

ムクロジでシャボン玉作り

そこで、乾燥したムクロジの果皮を使ってシャボン玉作りに挑戦してみました。気温28℃ぐらいの時に常温の水60ccに果皮1個分を入れて撹拌。泡はよくたちますがすぐ割れてしまい少しは飛ぶものの痛快に飛ばすのは難しいです。50℃位のぬるま湯でも試しましたが同様の結果に。しかも虹色ではありません。

ムクロジの果皮でつくったシャボン玉

今度はシャボン液を濃くして試してみることにしました。

細かく切った乾燥したムクロジの果皮

昨年のムクロジの乾燥した果皮2個を使用。サポニンが溶け出しやすいようにハサミで細かくカット。

切り口がペタペタしますが、クセのある甘酸っぱい香りはマイルドになっていて扱いやすくなっています。

香辛料のビンに細かく砕いたムクロジの果皮2個分を入れたところ

小ビンにカットした果皮を入れ、水を入れます。

香辛料のビンに入った水に浸した細かく砕いたムクロジの果皮に水を入れてビンのフタをしたところ

蓋をして軽く振り、半日〜1日ほど放置します。

ムクロジ水溶液

果皮がふやけて不透明になり、液も白濁しています。

少し振るだけで泡のたつムクロジ水溶液

ビンを少々振るだけで泡立ちます。

ストローで作ったシャボン玉を吹く道具

ストローの先端に切れ込みを入れてから広げ、シャボン玉を吹く道具も作ってみました。

ムクロジの果皮で作った水溶液で作ったシャボン玉

今度はちゃんと膨らみました。

ムクロジの果皮で作ったシャボン液を吹いてできたシャボン玉

そこそこ大きなシャボン玉にもなります。濃度によっては、シャボン玉らしく飛ぶものもできました。


その後、ムクロジ果皮ナイロンネットを使って泡だてて作った濃密泡を吹いたら、大きなシャボン玉が簡単にできました。

参照:6年前の果皮で泡立ち実験 ▶


江戸時代のシャボン液には松脂を加えて粘着力を増していたそうです。松脂油分虹色の素のようです。

最近では大きくて割れにくいシャボン玉を作るのに砂糖を加えるそうです。シャボン液の粘度が高くなって膜が強くなる上に、シャボン玉の表面の薄い石鹸膜の水が蒸発しにくくなるということです。

身近なものでより良いものを作る工夫も昔から引き継がれているんですね。


ちょっと寄り道:芋がらストロー

芋がら

さぼん粉に使われていた芋がらとはズイキとも呼ばれる里芋の茎のことで、断面を見るとスポンジのようなたくさんのがあいています。

蓮芋の芋がら断面
蓮芋の茎の断面

実はこのは管の集合体となっていて、レンコンのようにつながっています。特に蓮芋の茎には大きめの管の集合体になっているので、これをストロー代わりに使えるのでは?と思いつき、試してみました。

芋がらで作ったシャボン玉用ストロー
芋がらで作ったシャボン玉用ストロー

台用洗剤を適当に薄めたシャボン液芋がらの先を浸し吹いてみると、ちゃんと膨らんでを作ることができました。が多いのでが同時に複数できますが表面積が広くて勢いがないのかうまく飛ばすことはできませんでした。が、持久力の長い泡なので見ていると楽しかったです。

芋がらストローで作ったシャボン玉
芋がらストローで作ったシャボン玉は一度にたくさんの泡ができる
同時にたくさんの泡ができる
芋がらストロー

芋がらは生でも食べることのできるクセのない食品なので口にくわえるのになんの問題もありませんので、ご安心を。茹でて焼きナス風にしてみるとおいしいです。(笑)

食べることができて、シャボン玉の原料にもなり、吹く道具のストロー代わりにもなる芋がらもまた面白い植物の世界を教えてくれました。

落語に登場していたムクロジ

茶の湯イメージ

落語茶の湯では、茶の湯の事を何も知らないご隠居さんが、小僧さんに知ったかぶって青黄な粉抹茶だとでまかせを言ってをたて、泡がたたないからとムクの皮の粉を入れて泡立てるという場面があります。

このムクというのはムクロジのことで、当時は石鹸代わりに使われていた事を伺い知る事ができます。

参照:石鹸として使われていた ▶


それで、どうなったかって?殺人的不味さなのにもかかわらず、見栄をはって「風流だ。」などと言って、なんちゃって茶道を続けたご隠居さんと小僧さんはムクロジの皮入りのデタラメなお茶を飲み続けた結果、トイレの住人となるほどに酷い下痢をして、げっそりしてしまいます。が、懲りません。

せっかく究めた泡裏千家?だから、人を招いて飲ませたくなります。

そこで、長屋の住人をターゲットにしぼり、招待状を送りつけ

洗剤入の泡立つお茶のまずさに驚くうさぎ

本題から話はそれますが、

お噺の後半で、ご隠居さんが茶菓子の羊羹代をケチるためにサツマイモ黒蜜羊羹もどきを自作します。

その折に、離型剤として灯明の油を用いてしまったものだから、とても食べられた代物ではありません。

後始末もぐっちゃぐちゃの油ギットギトでうんざりです。

が、油汚れに強いムクロジ入りのお茶をもどきを使えば、さぞキレイに器を洗う事ができた事でしょう。

お後がよろしいようで。(笑)


知らない。」と言えないプライドのせいで、登場人物みんなが知ったかぶりを続け、奇妙きてれつな茶道の世界の泥沼にはまっていきます。

つまらない見栄のせいで引っ込みがつかなくなった人間の姿を扱った、とてもおもしろいお噺 (はなし) なので興味のある方は聴いてみてください。ムクムクロジの事だと知っていれば、尚おもしろい!

ちょっと寄り道:石鹸
シャボンから名がついたサボテン

ウチワサボテン
ウチワサボテン
photo by Petr Kratochvil

サボンシャボン(sabão)とはポルトガル語で石鹸のことですが、これがサボテンの名の由来だと言われていています。石鹸のようなものということで石鹸体(さぼんてい)と呼ばれるようになったのが転じてサボテンになったとか。諸説ありますが、これが有力説です。

サボテンは何やら外国語っぽい名前ですが何と日本でネーミングされていたんですね。


サボテンが初めて日本に持ち込まれたのは16世紀後半。オランダかポルトガルの風帆船が日本にくる途中、アフリカ西北岸の沖合にあるポルトガル領マディラ島へ寄港した折に同島に自生していたウチワサボテンを持って来て、長崎へ運んだと思われる、という内容の記述が伊藤芳夫著「サボテン記」の中にあります。


実はサボテンは江戸時代に畳や衣服についた油の汚れをとるのに使われていたそうです。

当時利用されていたのはウチワサボテンで、江戸時代の貝原益軒著「大和本草」(1709年) にサボテンについて「誠に草中の異物なり。油の汚れをよくとる。」とあります。

また、小野蘭山著「本草網目啓蒙」(1803年) 石鹸の項には

「畳に油のついた時にウチワサボテンを横に切ってこすれば、油を吸い取る。よってシャボテンといい、これが転じてサボテンという。」という内容が記述されています。


ムクロジと同様にウチワサボテンサポニンを含み、油落としに使われていていたのでシャボンから名付けられていたのですね。

もうちょっと寄り道:石鹸
シャボンの名をもつ花サボンソウ

シャボンソウの花

全草にサポニンを含むナデシコ科のサボンソウ (シャボンソウ) もまた、ヨーロッパで古くから石鹸の代用品として利用されてきました。英名はソープワート

シャボンソウの花 拡大

明治の初期に園芸植物として入ってきました。比較的寒さに強いので、日本でも各地で野生化しています。

葉を水に浸して揉めば泡立ちます。

もうちょっと寄り道:石鹸
サイカチの洗浄力は?

初夏の頃のサイカチの葉

マメ科の落葉高木で幹や枝に鋭い棘を多数持つサイカチ

鋭い棘の多いサイカチの木

サイカチ豆果にはサポニンが含まれるため、古くから洗剤として使われていたというので試してみました。

完熟しているサイカチの実

振ると、カラカラと種子が揺れる音がします。

30cm近くあるねじれたサイカチの豆果

薄べったくて曲がりくねった豆果は20〜30cmとかなり大きいので長いを粗くちぎります。

ちぎってサイカチの豆果の莢

洗ってから、ちぎったを常温の水に 1 日浸漬させると水が赤褐色に。

ちぎってぬるま湯に浸したサイカチの豆果

にはムクロジに通じる独特の香りがあります。

ちぎったサイカチの豆果をぬるま湯に浸しているところ

もみ出したを濾してみると濁った赤褐色になりましたが、あまり泡だちません。このを使用してみたところ、洗浄力はあまり感じられません。むしろ着色されて汚れてしまいそうです。

サイカチの莢をぬるま湯に浸して濾したあとの少々泡立っている赤褐色の液

サイカチサポニン含有量は採取場所や収穫年により異なるそうです。

残念ながらこの豆果をむいた時にカサカサラでペタペタするような感触は一切無かったので洗浄能力の結果が悪かったのかもしれません。


サイカチ種子ムクロジと同様に種皮がかなり堅いです。

サイカチ種子発芽の様子は

▶ サイカチ

種子を割ってみる

何と言っても羽根つきの羽根の玉おもりの部分というひっぱ叩かれるところに使われているだけあって、とても堅牢です。ちょっとやそっとでは中の種子がとり出せません。

※なんと、割るのに80~160kgの力が必要!?

参照:のん木草・みどり見て歩き

はっきり言ってクルミよりも堅い!

ハンマーを使ってもなかなか

そこで万力を使って割ってみることにしました。


種子のへそと思われる一文字ライン() が 唯一の割り口です。

フカフカの毛がついている側の上部5〜6mmのラインが目印。

ムクロジの黒い種子
黒い種子の産毛で覆われている側に
一文字の線がある

一文字ライン種子が発達する時、胚珠が心皮の胎座と呼ばれる部分にくっついてた跡のようです。

種子形成に必要な栄養分をここを通じてもらっていたため、若干スキがあるように思われます。


ここに力が加わるように万力をセットしますが、万力を使ってもなかなか手ごわいムクロジの種子。こんなに過剰に堅くて発芽できるんだろうかと疑問がわくほどです。

発芽の様子を知りたい方はコチラへ


ようやく割れ、中から栗の実のような色の中身が姿を見せました。

ムクロジです。

ムクロジ種子とも表現されます。

:果実の中心部にあると中に入ったものを指し、種子を意味する。

果実種子の別称。
子葉となるためのと、の栄養分である胚乳とからなる。

黒い堅い殻内果皮なのかもしれません。が、専門家ではないのでご了承ください。

ムクロジの実を割って種子がでてきたところ
ムクロジの渋皮のついた仁

は蓋つきの瓶というか、のヘタがついたみたいな形で、渋皮のような種皮に覆われています。

ムクロジの種をきれいに割ったところ
種子を傷つけずに堅い殻だけ割ってみた
ノコギリのみ使用

剪定バサミでポイントを攻めてみたところ、ごとキレイにまっ二つに切断する事ができましたが切断する時は種子がすべりやすいので集中力が必要です。

ムクロジの種子断面
ムクロジの種子断面

試してみたい方は危険ですのでケガのないようにご注意ください。

剥くのに苦労する剥苦労事(ムクロジ)なんてネ。

追記:

ムクロジの種子の成長を追って種子を割り続けたところ、わりと簡単に種子を割ることができるようになりました。種子の割り方はコチラ

剪定バサミを使って
ムクロジの種子の中身を取り出す


太枝切りバサミを使えば中身も割れますが、超カンタン。


12月下旬に拾った種子も剪定バサミで同様に切って中身を取り出すことができました。

剪定バサミで殻を切ったムクロジの種子
剪定バサミで殻だけを
切ったムクロジの種子
剪定バサミで殻を切ったムクロジの種子の渋皮を取り除く
ムクロジの種子の渋皮を取り除く

ひしゃぐ事なく中身を取り出す事ができました。

ムクロジの種子の中身と抜け殻
ムクロジの種子の中身と抜け殻抜

ムクロジの仁

このは乾燥によってシワがより、ハクサイの葉餃子ような形に見えておもしろかったので紹介します。

ムクロジの種子の中身
シワのよったムクロジの種子の中身
シワのよったムクロジの種子の中身上面

幼根部にもシワがよっています。

茹でてみたところ、茹でピーナッツと似ていておいしいです。

幼根にもシワがよったムクロジの種子の中身

カモノハシにも似て愛らしい。

カモノハシと飼育員
カモノハシ

画像の出典:Wikimedia Commons トリミング使用

種子を食べてみた

ムクロジの種子は食べられるという事なので、完熟ムクロジの種子を選び、殻を割っての部分を食べてみることにしました。


調理方法は素材の味がわかるように、シンプルにホイルの蒸し焼き塩茹でで試してみました。

ムクロジの仁

塩のみの素焼きにした場合は、大豆の間の味と食感で、ほんのりとした焼きエノキタケ風味です。

塩茹で茹でピーナッツのよう。
食べやすく美味しいです。主観的感想ですがクセもなく普通のナッツとして食べられます

ちょっと冒険して生の実をかじってみたところ少し粉っぽく、生のとよく似ていて問題なく食べられました。

が、労力の割に中の実はとても小さいので空腹を満たすのには難ありです。

ムクロジの仁
殻から取り出したムクロジの中身

このナッツの油脂は止血、解熱、咳止め等の薬として用いられていたそうです。

意外にも青い未熟果の時の種子の中身が取り出しやく、枝豆のように美味しかったです。興味のある方はコチラ

参照:ムクロジの食べごろ ▶


ムクロジのスプラウトを食べてみる

堅い種子の中にあったナッツが美味しかったので発芽後のもやし、名付けてホワイト・ムクロジ スプラウトを食べてみました。

ムクロジのもやし
塩茹でしたムクロジ スプラウト

食感はとても良いのですが、とても苦かったので食不適です。(笑)

苦さムクロジにとって一番無防備な時期にあたる発芽後身を守るための対策かもしれません。


この苦い思い出に懲りずに、1年後に実生の苗の新芽を食べてみたところ、意外にも山菜指定しても良いほど美味しかったです。 (以下参照 ▼)


ムクロジの新芽を食べてみた

発芽後ムクロジスプラウト苦い思い出とは対照的に、発芽後1年たった実生ムクロジの新芽サヤエンドウに似た味と食感でおいしかったです。食後の体調も問題ありませんでした。

参照:ムクロジのスプラウトを食べてみる ▶

おいしそうなムクロジの芽
おいしそうなムクロジの芽

カロテンが多そうな、ツヤツヤとした美しい緑色で、いかにもおいしそう。

山菜としてムクロジの芽があっても良さそうに思えたほどでした。 (笑)

ムクロジの食べごろ

意外にも ムクロジは枝豆のように
未熟な時に 美味しく食べられる!?

9月下旬、相次ぐ台風が過ぎ去ったせいでたくさんの未熟果が落ちていました。8月下旬に落ちていたと見た目はあまり変わりありませんが少し堅くなってが張っているものが多いようです。

果皮をむいたムクロジの未熟果
果皮をむいたムクロジの未熟果
胚の色がクリーム色になってきたムクロジの種子の中
ムクロジの未熟果 種子の内部

落下していた未熟果を採取して中を見てみたら、殆どが液体が無くて、緑色のバターロール状態です。

ま〜るくてツヤツヤコロコロしてとてもかわいいです。

参照:▶ムクロジの種子 成長過程
できたてのムクロジバターロール

ムクロジ バターロール
ムクロジ バターロール
ムクロジ バターロール断面
ムクロジ バターロール断面

8月下旬の未熟ナッツを試しに食べてみたら、思いがけず美味。なので今回はコンソメ味にして茹でて食べてみました。やはり美味しいです。シャクシャクとした歯ごたえで若い枝豆といった感じです。

ナッツ状態のムクロジはそれなりに美味しいのですが、が堅くて取り出すのに難があります。

参照:種子を食べてみた ▶

しかし、緑色のバターロール状態の時は取り出すのが簡単な上、味や食感が良いので、大豆枝豆との関係同様、青い時も食べごろだと考えて良いような結果でした。

この頃はバターロールの色も新緑色から緑色が抜けて白っぽくなっているものもありましたが、味に大差は感じられませんでした。

ムクロジの胚の成長過程
ムクロジの胚の成長過程

次第に緑色が抜けて淡いピンク色になっています。なんとなくイルカのようでかわいいです。

ムクロジの胚の成長過程
胚の色が淡いピンク色になってきたムクロジの種子の中
淡いピンク色になってきたムクロジの種子の中の胚を取り出したところ拡大

が少々堅くなって取り出しにくくなりますが10月中旬以降の完熟する前の白っぽくなったムクロジナッツも香ばしくてオススメです。


種子の観察こぼれ話

種子の皮を切る時にカッターナイフの歯が少々黒ずみましたが、これはタンニンによるものでしょうか。


また、果皮をむくと接着剤のようにペタペタします。ちょっと水をつけて拭き取ろうとしたら泡がたちました。これはムクロジサポニンによるものなんでしょうね。

ムクロジの種につく泡
ムクロジの種子にシャボン玉

参照:熟す前のムクロジの実 ▶

ムクロジの名前のルーツ

ムクロジ破邪伝説のルーツに登場するムクロジの原名のはどのようにして無患子という字になったのか推測してみました。

まず、ムクロジ種子が特徴的な樹木です。なので、木の名前をつける時に種子を意味するという字を入れたと思われます。


そこから、木桓子木患子・木槵子無患子という変遷をたどったのでは?因みに中国語での発音は(mù)、無=无(wú)で、桓・槵・患は共に(huàn)と同じ発音で、は(zǐ)となるようです。


ムクロジの名前の変遷(説)

桓→
木桓子→木患子・木槵子 (モクカンシ) 間違えて→モクゲンジ→訂正→無患子 (ムクロジ)

ムクロジの呼び名については、

▶ムクロジの名前について


ちょっと寄り道:名前
モクゲンジとムクロジ

また、ムクロジと同様に高木で羽状複葉のをつけ、堅くて黒い種子がなる似た雰囲気のモクゲンジ。この両者は昔から混同されてしまった経緯があり、ややこしい関係となってしまいました。(以下 参照)


モクゲンジの名前の変遷(説)

木欒子 (モクランシ) →モクロシ→間違え→ムクロジ→訂正→木患子 (モクカンシ) →モクゲンジ→木欒子 (モクゲンジ)

モクゲンジの実と種
モクゲンジの実と黒い種子
photo by: BETTY

モクゲンジについては以下のページで詳しく解説しています。

参照:モクゲンジ ▶


昔から混同されていた例

例えば、今昔物語に登場する木連子モクゲンジの事ではなくムクロジの事と思われます。

さかのぼってみると、数珠の起源が記されている木槵子モクゲンジモクゲンジあたりから名前の識別に混沌が生じて、今日に至っているように見受けられます。

これらについての考察はコチラ

▶ 仏説木槵子経の木槵子とは?

ムクロジの名前について

ムクロジには方言も含め、いろいろな呼び名があります。

ムク ムクロ ムクロジュ ムクロンジ ムクロウジ ムクデ ムイコロ ムクユ

これらのムクつながりは仏教と共に中国経由でムクロジ文化がやってきたために中国名の呼び名のムクロジからついたものと思われます。

それにしても、無患子難読漢字に指定されているだけあって、これをムクロジと読むのは困難ですね。

また、木患子無患樹という漢字もムクロジと読むそうです。

参照:ムクロジの名前のルーツ ▶


ツブ ツブナリ ツブノキ(粒木)

木に粒なりについている様子から名前がついたと思われるツブつながりは分かりやすいです。

冬に枝先につぶなりに残るムクロジの実

の落ちた後のにぎっしりとの残る様子はまさにツブナリです。

冬に枝先につぶなりに残るムクロジの実

江戸時代の本草書 重修本草綱目啓蒙には下記のように記述されていて、歴史や文化の違いが感じられます。

ムクロウジ  筑前 備前

ムクロンジ  越後 江戸

ムク     江戸

モクゲジ   佐渡

クロモジ   同上

ツヾ(ツヅ) 奥州 藝州

ツブ     京

▶ 参照:国立国会図書館デジタルコレクション
重修本草綱目啓蒙 35巻. [24] コマ番号33-34


ムクリュウという呼び方もあるそうでムクツブ(粒)を合わせたような名前に思えます


種子が黒いので実黒地 (みくろじ) と呼ばれ、ムクロジとなった、という説はシンプルで好きです。


石鹸の木というのはムクロジの果皮が石鹸代わりとして使われていたので、効能そのものの名前です。西洋でもソープナッツとかソープベリーとか呼ばれているのと同じですね。

ムクロジとムコロッシ 学名を探る

ムクロジの学名は
Sapindus mukorossi Gaertn.

sapo indicus (インドの石鹸)を意味する属名 Sapindus の後につく

mukorossiムコロッシ)は何やらムクロジと似ています。

それもそのはず、

mukorossi種小名ムクロジという日本名をラテン語化したことでムコロッシとなったようです。

種小名はその種の特徴をラテン語化して表す語で形容詞または名詞の形容形を用います。

二名法という名字と名前のように属名と組み合わせることで世界共通の学名となります。

Gaertn.ヨーゼフ・ゲルトナーJoseph Gärtnerという学名命名者を示しています。


でも何故インド原産無患子中国名をもつムクロジ日本名が使われたのでしょうか? それには、

カール・ペーテル・ツンベルク
Carl Peter Thunbergという鎖国期の日本にやってきたスウェーデン人医師・植物学者が関与しています。

かの分類学の父と称されたカール・フォン・リンネCarl von Linnéの弟子にあたる人物で、日本の医学・植物学の発達に貢献した出島の三学者の一人です。


ツンベルクは安永4年(1775年)に出島商館付医師として来日、日本に1年数ヶ月滞在し、多数の標本を持ち帰り、それを基にFlora Japonica日本植物誌 を1784年に出版しました。そして、これが日本の植物研究の出発点となったそうです。


その標本の中にムクロジも含まれていました。そんな経緯があって日本のムクロジが西洋に周知されるようになったわけです。

ツンベルクのムクロジ標本
ツンベルクのムクロジ標本
ツンベルクのムクロジ標本 葉痕部拡大
ムクロジ標本 葉痕部拡大
まさしくムクロジの葉痕です

参照:ムクロジの葉痕 ▶

ツンベルクのムクロジ標本 注記拡大
ムクロジ標本 注記拡大

標本 下部分 ↑ には
Mukoroffi. / Sapindus? No. 37
という注記が書かれている?
(ちょっと判別しにくいですが )

画像出典:Thunberg's Japanese Plants


Flora Japonica(1784年発刊)にはこのように記載されています。

Flora Iaponica 448pよりムクロジについての掲載部分 37. Sapindus, foliis alternis. ;Japonice: Mukoroffi.

画像出典:Flora Japonica (356p)

※ムクロジ属 互生 落葉 日本 ムクロジ という内容か?


ということで、Mukoroffi というこのラテン語名で西洋に紹介され、後にmukorossiという名前になったと思われます。


それにしても、江戸時代に作成された標本をこんなにもしっかり見ることができるなんて驚きです!!

そしてこの膨大な資料を後世に残すためにご尽力された方々に感謝!

参考・参照文献:

植物の学名を読み解く
 ―リンネの「二名法」

Thunberg's Japanese Plants

無患子に関することわざについて

無患子(ムクロジ)は三年磨いても黒い

無患子の種子をいくら一生懸命磨いても黒いままで白くはならないことから、生まれ持った気質というものは、直せないものという意味合い。

また、労して功なきことや色の黒い者が化粧するのをからかったりする意にも用いられたそうです。


ことわざになっていたことにより、無患子(ムクロジ)が昔は現在と違って身近にあったことがわかります。


同じような意味合いのことわざ

(カラス)は百度洗っても鷺(サギ)にはならぬ とか、英語の

A crow is never whiter for washing herself often.

カラスがまめに体を洗っても白くはならない。

というものがありますが、

無患子は三年磨けば輝きを増す

愚直に磨けば、生まれ持った気質は宝石のようになる、みたいなプラス思考のことわざがあっても良いのに、と思っています。(笑)

ムクロジのつぶらな瞳輝くベンチ

ムクロジの種子を目にした動物に見えるクリで作った椅子が設置されている草原

朽ちてしまったクリの木を利用してベンチを作ることになりました。

動物みたいなおもしろい形のベンチにムクロジの種子として入れてみると画竜点睛!なかなかの目力でイケてます!(笑)

ムクロジの種子を目にした動物に見えるクリで作った椅子
ムクロジの種子を目にした動物に見えるクリで作った椅子拡大

偶然、遠足で訪れた小学生達は設置したてのベンチに大喜び!

ベンチの設置場所は埼玉県飯能市の細田地区大仁田山登山道沿い

参照:大仁田山へのアクセス ▶


現在、ムクロジは幸福の王子の目のように何処へか消え去り、メンテを行っていない朽木ベンチは当時の輝きを失って風化して残念な状態です。


ちょっと寄り道:クラフト
奥武蔵のシャングリラ !?

ベンチの設置されている草原は

超ローカル名奥武蔵のシャングリラとか奥武蔵のマチュピチュと呼ばれる高度感のある開けたエリアです。

興味のある方は、ハイキングに来てベンチでくつろいでみてください。

空気の澄んだ日には東京スカイツリーも見ることができます。

個人の私有地ですが持ち主様の厚意により休憩できるスペースとなっております。

大仁田山登山道で一番眺望の開けた草原
大仁田山コースで一番眺望の開けた草原

夏にタマムシルリボシカミキリオオセンチコガネなどの昆虫にも出会うことができました。カモシカシカも一年中出没している自然豊かな環境です。

草原に設置された有機的な形の椅子

このエリアの詳しい情報は、

参照:天空の畑 奥武蔵のシャングリラ▶

ムクロジを使ったクリスマスリース

赤く着色したムクロジの種子を使いクリスマスリース用の飾りを作ってみました。

ムクロジを飾りつけたクリスマスリース

材料:
アケビの蔓 ヒイラギ ムクロジの種子
シダーローズ(ヒマラヤスギの実)
ゴンズイの実 パンパスグラス

生の赤い木の実は長期間飾るのには不向きですが丈夫で耐久性があってナチュラルなムクロジの種子は大きさも手頃なのでクリスマスリース飾りにピッタリ!束ねても素敵。

天然の木の実を飾り付けたクリスマスリース

松ぼっくりドングリ等いろいろな木の実と組み合わせるとゴージャスです。モミの葉など緑色と組み合わせたクリスマスカラーが魅力的。


ムクロジオーナメントの作り方

ムクロジの種子の加工は堅く滑りやすいのがネックです。

そこで滑り止めとして粘着面が外側になるように布タイプのガムテープで種子を巻いて固定。そうしてから一文字の切れ込みにおしゃれな金色の真鍮を打ち込みます。

ムクロジの飾り

その後、乾燥時にぶら下げれられるよう、に紐をつけてからアクリル樹脂系の塗料やマニュキアなどで着色をします。

洗濯バサミ等で紐をぶら下げて乾燥させます。塗りムラがあったり、色が薄い場合は重ね塗りをします。

ムクロジの種子を赤く塗った飾り
かわいい赤い木の実に大変身

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