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大仁田山周辺 季節の植物
アカメガシワ
大仁田山周辺の奥武蔵で見られた季節を彩る植物を紹介しています。
4月中旬頃から5月上旬頃にかけて、アカメガシワ(赤芽槲・赤芽柏)の赤い新芽と新葉が目をひきます。
アカメガシワの名前の由来は赤い芽の炊葉(カシキハ)からで、葉は食用にもなる安全で大きめの葉であったので、食べ物を蒸す(炊く)炊葉として利用されていたそうです。
アカメガシワはその他にも、五菜葉(ゴサイバ)、菜盛葉(サイモリバ)の名前を持ち、いずれも食に利用されていたことが伺われます。
アカメガシワの樹皮や葉や茎は薬用にもなるそうですから、安心して食材包んだり、盛り付けたりすることができたのでしょう。
大きめの葉は、葉身15cm、幅8cm、葉柄の長さが10cmほどの大きさです。
柏餅に使われるブナ科のカシワも同様に炊葉が名前の由来ですが、アカメガシワはトウダイグサ科なので科が異なり、葉の形も異なります。
アカメガシワは日当たりの良い河原や山野の林縁や崩壊地、伐採跡地など、荒地に先駆けて育つパイオニア植物で環境が適していれば、高さ15m、直径50cmに達することもある成長の速いトウダイグサ科の落葉高木です。
トウダイグサ科 アカメガシワ属
学名:Mallotus japonicus
英名:Japanese Mallotus
参照:大仁田山周辺 季節の植物 ▶
晩春から初夏にかけて、長い冬眠からゆっくりと目覚めて、アカメガシワの赤い芽吹きが始まります。
赤い色はアントシアニンと言う色素で新葉を強烈な紫外線から護る役割だと考えられています。
葉の裏は越冬用の防寒・防乾の役割を担って装備されていた星状毛に覆われていますが、葉が大きくなるにつれて密度が希薄になります。
参照:アカメガシワの冬芽と葉痕 ▶
生育環境によって芽吹きは多彩な表情を見せます。
羽つきの羽根のようにも見える鮮やかで愛らしい芽吹き。
若葉は香りにクセが無く、若干苦味があるものの、赤い葉は天ぷらにすると意外にもほのかな甘みがあって美味しく食べられました。
奥武蔵では渓流沿いで見かけることの多いアカメガシワの芽吹き。
せせらぎの中に響き渡るカジカガエルのステキな歌声と一緒に楽しめる光景は季節の風物詩です。
アカメガシワの若葉はフカフカとした赤い星状毛に覆われています。
葉の表面を擦ると、スクラッチカードみたいに普通の緑色の葉が現れます。
見事なクリスマスカラー。
1枚の葉を覆っていた星状毛。
思いの外たくさんあります。
葉が大きくなるにつれ、赤い星状毛の密度は希薄になり、次第に落ちて緑色の若葉が現れます。
葉の裏もびっしりと星状毛に覆われ、太い葉脈が目立ちます。
星状毛は葉の他にも若枝、冬芽、花序の軸などにも密生します。
アカメガシワは雌雄異株で、6月から7月、長さ7〜20cmの円錐花序に雌花と雄花をそれぞれの枝先につけ、花弁の無い小さな花を多数咲かせます。
大きな葉が茂り出し、アカメガシワの円錐花序が一斉に目立ち始めます。
アカメガシワの雌花序はモコモコとしていて花らしくありません。
目立つ柱頭はモールのようです。花序は全体的にフェルトのような星状毛で覆われて温かそうな雰囲気です。
アカメガシワの雌花の先端で目立つ反り返った3つのモコモコは花柱か柱頭なのかは不明ですが、花粉を受け取る器官と考え、とりあえず、柱頭としておきます。
咲き始めの頃。
淡黄色の星状毛に覆われた蕾が開き、柱頭が姿を現します。
柱頭の外側も星状毛に覆われ、鮮やかな赤い色をしています。内側は乳頭状の突起が密生しています。
開きたての雌花。
柱頭は花粉をしっかりキャッチしそうな構造です。
アカメガシワの柱頭の数は種子のできる心皮の部屋数と一致するので3つが多いです。
子房が膨らんだアカメガシワの雌花。
柱頭や子房は個体差があって、鮮やかな赤色になるものとあまり赤くならないものがあり、印象が異なります。
花の量も木によって異なります。
その後の様子は、
参照:アカメガシワの実 ▶
雄花は白〜淡黄色でたくさんの雄しべがあり、球状に開き、雌花と比べて華やかな感じがします。
雌花同様、花序は全体的にフェルトのような星状毛で覆われて温かそうな雰囲気です。
球状の蕾が割れて開花する雄花は線香花火やぽんぽんのよう。
円錐花序が円錐果序になります。結実率はとても良いようです。
子房が膨らむにつれ、ツンツンとした棘状の突起が出て奇妙な姿に。子房には刺状の突起が目立ちます
柱頭の色の変化も個体差があります。
色は個体差がありますが、赤い柱頭の実は華やかで綺麗です。
刺状突起がツンツン突き出た実は海洋生物を思わせます。 実の表面を覆う白っぽいものは腺点のようです。
その後の様子は、
参照:アカメガシワの種子 ▶
9月から10月に蒴果が裂けて黒紫色で光沢のある種子が姿を現し、鳥により散布されることが多いようです。
この種子はキジバトやムクドリなどの好物だそうです。
種子は発芽のチャンスが訪れるまで、長期間休眠して待機できるそうです。
そして、山林火災や伐採、水害で表土が流れた後の陽当たりの良い場所で、地表が温められると発芽します。
そのため、アカメガシワは、典型的なパイオニア植物と呼ばれています。
そんな光を遮るもののない環境で育つことができるように、アカメガシワは紫外線対策バッチリの名前の由来ともなった赤い新芽が出るのでしょうね。
参照:アカメガシワの芽吹き ▶
初夏にはすっかり赤い星状毛が落ちて美しい新緑の葉となります。
爽やかな新緑の葉が茂り、灰白色の幹肌とのコントラストがきれいです。
アカメガシワ葉身の基部には蜜を出す腺体(花外密腺)が2つあります。
蜜を求めてアリが訪問する姿を見かけることもあります。
アリの来訪を誘ってガの幼虫などからの食害を防ぐ作戦だそうです。
アリの護衛と遅めの芽吹きと赤い厚めの星状毛、先駆植物のアカメガシワの戦略はかなり慎重葉スタイルをとっているようです。
冷え込みが厳しいと葉は鮮やかに黄葉します。
大柄な黄色の葉と長くて赤い葉柄とのコントラストが綺麗です。
秋は鮮やかな黄葉と赤くて長い葉柄との色合いが綺麗です。
アカメガシワの冬芽は裸芽でふかふかとした星状毛に覆われています。個体差が大きく、いろいろな表情を見せてくれるのも魅力のひとつです。
アカメガシワは芽鱗という冬芽を保護するコートを持たない裸芽ですが、自前の星状毛でしっかりと防寒・防乾・防虫をして越冬します。
中には葉にココアパウダー入りの小麦粉をまぶしたような雰囲気のものまであって楽しい。
珍しく白っぽい星状毛に覆われた冬芽も見かけました。生育環境が比較的暖かい場所だったからでしょうか?
肉厚に見える裸芽はアザラシのヒレのように見えるものもあります。
縦に浅い割れ目が細かく入り、灰褐色のアカメガシワの樹皮は美しいです。
若い樹皮は白っぽく、樹齢を重ねるとマスクメロンと雰囲気が似た特徴的な網目模様になり、裂け目が深くなっていきます。
この樹皮は健胃薬や整腸などに効果のある生薬となるそうです。