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うさぎのぷうちゃんわーるど
癒しのかわいいフカフカ植物
ネコヤナギ(猫柳)
銀白色のふっくら・ふっかふか
かわいらしいネコヤナギ
寒さの残る早春の河原などで、陽光に白く輝くネコヤナギの温かそうな姿を見るとほっこりさせられます。
そんな魅力的なネコヤナギの花の構造や変化を追ってみました。
白いふかふかの絹毛に覆われているのはネコヤナギの花穂です。
葉の展開より先に上部の枝に花を咲かせます。
ネコヤナギという呼称は明治以降につけられたそうですが、この愛くるしい姿を見れば納得のネーミングです。以前はカワヤナギと呼ばれていたそうです。
ネコヤナギとカワヤナギはしばしば混同されるようですが、カワヤナギの葉は両面とも毛はなく、葉と一緒に花が咲き、花穂の色も緑色が強いということです。
ふっくらとしてなめらかな質感からネコの名やエノコロ(イヌコロ)等に関連した呼称を多数持ちます。
触れてみると、絹のような滑らかな手触りで、ほんのりと温かい。
優しい感触で癒やされます。
ネコヤナギの膨らんだ花穂はリスの尻尾にも似て見えます。
ネコヤナギは雌雄異株で、それぞれに雌花と雄花を咲かせます。
どちらの花も赤褐色の帽子のような芽鱗を脱ぎ捨て、白銀色の絹毛が姿を現す頃の姿はよく似てます。
ネコヤナギは樹高1~4m。
樹皮は暗灰色で皮目が散在。
一年枝は褐色や緑褐色で灰色の軟毛が未密生していますが、後に無毛となります。長い小枝は折れにくいという特徴があります。
地域によっては2月頃から見られ、春の訪れを告げる植物として昔から親しまれている落葉低木です。
蕾芽のついた存在感ある独特の枝は魅力的なため、華道の花材や切り花として人気があります。
春が近づき、暖かくなってくると、ネコヤナギは帽子を脱ぐように冬芽の芽鱗を外し、白く輝く長楕円形の尾状花穂を次々と枝に登場させて、ネコヤナギ劇場を開幕させます。
ネコヤナギの花は花弁も萼も無く、雌雄異株で、雌花、雄花、それぞれの花を白い毛の間に咲かせます。
白銀色に輝くフカフカ状態の見頃は開花前となります。
花穂には螺旋状に鱗のような苞葉が密生していて、この苞葉を白い絹毛が覆っています。
開花が近づくと、苞葉が開き始め、花穂は大きく膨らんで太い円筒状になり、伸びて長くなっていきます。
花穂が膨らんでくると黒色や赤色に見えるのはこの苞葉の色が見えるようになるからです。
開花するに連れて花穂は伸び、雄花は赤やオレンジ色や黄色、雌花は淡い黄色のポツポツで覆われ、猫や犬やリス等、動物の尻尾のような雰囲気になります。
この花穂の形が猫の尻尾に似ていることからネコヤナギ(猫柳)という名がついたといわれています。
白銀色に輝く頃が最も魅力的に思えますが、雄しべや雌しべが出た頃もふっくらとして素敵です。
尾状花序とはよく言ったものです。
参照:ネコヤナギ雄花 ▶
参照:ネコヤナギ雌花 ▶
ネコヤナギの花芽の芽鱗の中には白銀色に輝く絹毛が整然とまとまって格納されています。
厳しい冬の寒さや乾燥等から護ってくれていた芽鱗が外れると、白銀色の絹毛をまとった花穂はふかふかとした温もりのある姿となります。
雄しべの花糸が伸び始めると絹毛は更にふっくらとしてきます。
雄花序は白い毛の間に苞葉の色が透けて赤っぽく見えます。
花糸:雄しべの葯を支える糸状の柄の部分
葯:雄しべ先端の花粉を入れる袋状の部分
成熟すると裂開して花粉を出す
雄花の白い絹毛の間から赤や朱色、オレンジ色の色鮮やかな葯が姿を覗かせます。
白い花糸が伸びて、その先端にある赤い葯が裂開すると、黄色い花粉が出てきて華やかになります。
雄花序は長さ3〜5cm。
ネコヤナギは放出した黄色い花粉を風を利用して飛ばす風媒花です。
また、花の付け根にある腺体から蜜を出し、虫を誘引して受粉を手助けしてもらう虫媒花でもあります。
そのため、白い毛はベタついているのか花粉がたくさんまとわりついていたりします。
花粉を出した後の葯は黒色になり、花糸はよれて花の役目を終えます。
3月中旬頃、花期が終わる頃に花穂が伸びて曲がりくねると、猫の尻尾やエゾリスの尻尾に見えてきます。
花期が終わる頃に小さな冬芽の葉芽から芽吹きが始まります。
芽吹き後、葉はスピーディーに展開し始めます。
雌花は雌しべが伸び始めると白銀色に輝いていた絹毛が空気をまとってふっくらとしてきます。
雌しべは全体的に黄緑色なので花穂が膨らんできた時には緑色を帯びて見えます。
雌花序は長さ2.5〜4cm。
雄花序よりやや小さめです。
淡い黄色をしている柱頭がポツポツと姿を現し始めます。
子房:被子植物の雌しべの下部の膨らん
でいる部分
種子となる胚珠が入っている
花柱:雌しべの柱頭と子房の間の部分
柱頭:雌しべの先端
雄花同様、白い絹毛の中から花柱が伸びて黄色い雌しべの柱頭が出てきて開花となります。
雌花は雄花に比べると、鮮やかさに欠けて地味です。
子房は卵形でほぼ無柄。全体が白い軟毛で覆われています。
花柱は長さ2.5〜3mmで、子房より長く、日本のヤナギ属では最も長いのだそうです。
この細長い花柱がネコヤナギの学名の由来となったようです。
ネコヤナギの学名:Salix gracilistyla
属名 Salix はラテン語の古名でケルト語の
sal=近いと lis=水 に由来するといわれる
種小名 gracilistyla は
gracile=細長い +stylus=花柱 が語源とされる
つまり、水辺に生育する細長い花柱の植物 というのが ネコヤナギ の学名のようです
成熟期の雌しべの柱頭は淡い黄色で2裂しています。
柱頭に花粉が付着しています。
粘性を持った雌しべの柱頭が風や虫達によって運ばれた雄しべの放出した花粉をキャッチして受粉します。
雌しべの花柱や柱頭は基本的に黄緑色ですが、赤みを帯びてピンク色になったものも見かけました。
これは日当たりの良い場所で赤みを帯びることで強烈な紫外線から大切な器官を護る役割をしているのだと思われます。
雨上がりに見た雌花の白い毛は水を弾いて大切な子房を護っているようでした。厳しい自然条件に対応しているのですね。
赤と黄色の花柱や柱頭が斑になって混在しています。
色に違いはあっても花粉はしっかりとキャッチしています。
苞は披針形で上部は黒色、下部は淡緑色。両面に長い白毛があります。
その後の様子は
参照:ネコヤナギの種子・柳絮 ▶
ふかふかしたネコヤナギの花穂の中には3~5㎜の小さな花がたくさん集まっています。
そしてその小さな花のひとつひとつが苞葉によって寒さや乾燥から護られています。
苞葉(苞)は花の器官を守る役割をする葉が変化したものです。
ネコヤナギの白銀色の絹毛は黒から赤紫色をした苞葉を覆うようにして密生しています。
苞葉の基部は淡黄緑色です。
雄株の雄花と雌株の雌花、それぞれどちらの花にも絹毛をまとった苞葉と蜜を出す腺体がついています。
開花とともに各苞葉の間隔は開き、花穂は長く伸びていきます。
雄花は雄しべを形成する葯と花糸、白い毛に覆われた苞葉と腺体で構成されています。
葯は始め、赤系の朱色です。
花糸の付け根にある黄緑色の部分が蜜を出す腺体です。
葯が裂開して黄色い花粉が出ます。
苞葉は上から黒〜赤紫〜黄緑色で、表も裏も軟毛が密に生えています。
ネコヤナギの雄しべは2個で、上部まで融合し合着しているため、花糸は1本に見えるのだそうです。
雄しべの基部には腺体が1つ。
花粉を出した後の葯は暗褐色になります。
花糸が伸びる前の雄花序の横断面。
花糸の付け根に腺体があります。
雄花序の縦断面。鮮度の落ちた花で葯の色が悪くなっています。
花穂から取り出した2つの花。
雌花は雌しべを形成する子房と花柱と柱頭、雄花と同様、白い毛に覆われた苞葉と腺体で構成されます。
子房は白い軟毛に覆われています。
子房の基部に腺体が1つあります。
開花し始めた頃の雌花序。
花柱が伸びて、柱頭が見えます。
雌花序の縦断面です。
雌花序の縦断面。子房がびっしりと詰まっています。
子房の中に胚珠が数個入っているのが見えます。
雌花序の横断面です。
厳しい冬の寒さを難なく乗り越えるネコヤナギの冬芽は雨や雪、乾燥や風除けの機能を持つ芽鱗と呼ばれるアウターシェルをまとい、その中にフカフカとした優れた断熱効果を持つ極上のインナーダウンを着ているような装備を持ち合わせています。
ネコヤナギが自生している冬の河原でふっくらとしたキセキレイを見かけました。冬芽の中にはこんな感じで温かそうな毛が大切な花を護っているのでしょう。
早春の風物詩であるネコヤナギの白く輝く花穂の毛は実は透明で、中が空洞で光が乱反射しているため、毛の色が白く見えています。
これはシロクマが白く見えるのと同じ原理です。
photo by Schliebe Scott, USFWS
空気は熱伝導性が低いため毛が中空構造になっていることで断熱効果が高まると考えられています。
やや小さめの葉芽は用心深く、防護用の白い毛をまとって開花後の暖かくなった頃にゆっくりと芽吹き始める作戦です。
参照:ネコヤナギの葉 ▶
また、このふかふかとした白い毛をまとった花穂は水に浮きます。
雨の降った後、ネコヤナギの花穂は大粒の水滴を宿していました。
この白いインナーダウンには簡易的かもしれませんが、撥水・防水機能もありそうです。
雨上がりのネコヤナギの雄花の花穂
雨上がりのネコヤナギの雌花の花穂
11月上旬、育てていたネコヤナギのかわいい花芽が目立ってきました。
12月下旬、ネコヤナギの赤く膨らんだ花芽を見て、中の状態を知りたくなって毛皮のコートを脱いでもらいました。越冬用なのかフカフカして何ともかわいいです。
中は既に銀色に輝く絹毛が待機していて、上質の筆のようです。
そこで、簡易的な筆を作ってみることにしました。根元の4分の1程の所でカッターで切れ目を入れて芽鱗をはがして根元に楊枝を突き刺すだけなので超簡単。
出来の良し悪しは別としてちゃんと筆として使うことができました。
ミニチュアサイズで一寸法師が使う筆みたいで面白いです。
乾燥するとふっくらして、あの早春に見られる白く輝くフカフカのネコヤナギそのものの姿となりました。
※ピンク色をしていますが、ネコヤナギです。
昨年の春に採取した蕾を乾燥保存していたので、今回採取した真冬の蕾と大きさを比較してみるとずいぶんと小ぶりです。この質感のまま成長して大きくなるのでしょう。
冬の外套を外した中身の絹毛は触り心地もよく、とても愛らしいです。
しかし、実験用に栽培しながらも早々に蕾をとるのはかわいそうなので、観察はこのあたりまで。
春になって、自然にフカフカの姿がはじけ出すのを楽しみに待っているつもりだったのです…が、まだ1月上旬だというのに、帽子を脱ぎ始めた小さなフカフカのネコヤナギが出てきました。
庭で育てている菜の花も咲き始め、フリージアも例年より早く蕾をつけています。これから冬本番の寒さが来るというのに、植物も異常気象に翻弄されて大変ですね。
3月中旬の芽吹き。葉は開花した後に展開し始めます。
裏面は全面絹毛で覆われています。
長さは10cmくらいで先端は尖っています。
4月上旬、新緑が出揃った頃の葉の様子です。
5月上旬には葉が展開して一面緑色に生い茂りました。
雌株には綿毛をまとった種子、柳絮が姿を現しています。
こちらは5月上旬の雄株の様子。
茂った葉の先端の新葉が赤みを帯びて白っぽく光っていました。
よく見ると絹毛に覆われています。
芽吹きの頃のコナラのような輝きがあります。
葉の裏や茎、托葉も絹毛に覆われています。
葉の表面の毛は徐々に脱落します。
5月中旬に見かけた若葉の白い産毛はワタボコリのようにまとまって、剥がれかかっていました。
葉の裏面はフェルトのようで、白い軟毛に覆われたままでした。
ヤナギルリハムシの食害に遭う葉も見かけました。
9月上旬の葉の様子です。
葉の縁には基部を除いて細かい鋸歯があり、皮質です。
11月中旬、葉は残っているものの、くたびれています。茎に赤い冬芽が目立っています。
4月中旬から6月頃にかけて雌花は受粉を終えると、白いふわふわの毛をまとった種子となり、風で飛んで拡散していきます。
ヤナギは成熟すると裂開して、一般に柳絮(りゅうじょ)呼ばれる綿毛に包まれた種子を出す蒴果です。
弾けた実からは綿毛が広がってどんな構造になっているのか分かりづらいです。
綿毛は早春の頃のするっとした花穂の絹毛とは違った魅力があります。ふっくらとしているためか、温もりを感じさせるやさしい触り心地で、触れると繊維がほどけ、ふわふわと風で飛んでいきます。
中には綿菓子のようにふっくらとしたものもあります。
どことなくモリアオガエルの卵塊を連想させます。
小さな緑色の種子が点在する綿毛はふっくらと雲のように膨らんで中の様子はまったく見えません。
この綿毛をまとった緑色の種子たちを水に浸したところ、3日で双葉が開きました。
参照:ネコヤナギの発芽 ▶
ネコヤナギは葉痕もまた楽しい表情を見せてくれます。
9月下旬に葉が落ちて葉痕が姿を現しました。
赤いとんがり帽を被ったネコヤナギの冬芽もおしゃれです。肥大した葉柄に包まれている芽鱗は1つで枝側で合着しています。長さ1.1〜1.7cmくらいで軟毛が多いです。
12月上旬にはクリスマスカラーのように緑色の葉が残っていましが、1月中旬には枯れ色になったものの落葉はしていません。
ふっくらとした赤い冬芽は、順調に帽子を脱ぐ準備をしているようで、楽しみです。葉芽は花芽より小さいです。
冬芽は夏の終わりには既に作られ、翌春に向けて準備を始めています。
9月下旬になると ふかふかとした冬芽が目立つようになってきます。
ヤナギ科の植物は種類が非常に多くて自然交配種も多く生じている上に園芸種もあるのでややこしく、同定を気にし出すとネコの迷い道に入りこんでしまいそうです。(笑)
個人的には、雑種のネコもかわいいようにフカフカとしてかわいい花穂をネコヤナギみたいな植物として、純粋に楽しみたいと思っています。
ネコヤナギと似た花穂がピンク色のタイプはおそらくネコヤナギの園芸種といわれているピンクネコヤナギだと思われます。
ふかふかの白い毛をまとったピンク色の花穂がかわいらしくて魅力的。
ピンクネコヤナギの苞葉はピンク色がエレガント。
バッコヤナギは山地や原野や林道沿い等のやや乾いた崖地などに生え、別名、ヤマネコヤナギ(山猫柳)とも呼ばれ、樹高は10m以上にもなる落葉高木です。
雌花序です。
苞葉は狭長楕円形。上半分は黒く、両面に長い軟毛が密生します。
子房は白い短毛が密生します。
花柱は短く、柱頭は淡黄緑色で2裂します。
雄花序です。葯も花粉も黄色。
画像の出典:Wikimedia Commons
バッコヤナギの雄花の花糸は根元から2本に分かれてボリュームがあるため、ふわふわとした感じです。
初夏には新緑の葉が爽やかな緑陰を形成し、雌花は白いふかふかの柳絮となっていました。
バッコヤナギの柳絮。
実が裂開して、綿毛のついた種子が飛び出していました。
バッコヤナギの成木の樹皮はやや緑味を帯びた灰褐色で、菱形の皮目が散在します。
また、ネコヤナギは葉裏の毛が直毛でバッコヤナギは縮れ毛。
花材として人気のフリソデヤナギはネコヤナギとバッコヤナギとの雑種と推定され、ネコヤナギと良く似た美しい蕾芽を赤い枝につけます。
フリソデヤナギの雄花の葯が赤いのはネコヤナギ譲りで華やかです。
冬芽(花芽)は大きく美しく紅色を帯びているのでアカメヤナギの別名もあります。
フリソデヤナギと同じアカメヤナギの別名を持つマルバヤナギは葉の展開後に花をつけ、花期はヤナギ属の中で一番遅いということです。
雄しべの花糸は、基部から途中まで合着して花粉が出る頃に花糸の先端が2つに分かれるそうです。花糸が2本に見えるのはバッコヤナギと似ています。
また、葉裏の縮れ毛はバッコヤナギ譲りのようです。
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